2021年2月24日の記事で、「LOVOT(らぼっと)」の特許について少し見てみました。今日は、その意匠権について見てみます。BLMとしては、このロボットを見て、これまでペットや家族のような存在としての位置づけを想定され販売等されていたロボットと少し違うと感じました。これまでのロボットの外観形態は、「高性能」や「カッコよさ」といった印象が強めだったような気がします(あくまで私見です)。一緒にいるうちに、可愛いという感情は沸いてくる、と思うのですが、あくまる外観形態の問題として。
この点、「LOVOT(らぼっと)」は、一目見ただけで、「かわいい」と思えるものでした。この形態には法則があるのではないか?と少々WEB上を検索すると、例えば、入戸野宏著「かわいさと幼さ:ベビースキーマをめぐる批判的考察」日本視覚学会誌「VISION」25巻2号(2013)によれば、以下のような記載(『』内引用)があります。「LOVOT(らぼっと)」は下記に該当するような気がします。
引用:『かわいさ(cuteness)に関する実験心理学研究のほとんどは,ベビースキーマ(Kindchenschema,英語ではbaby schema,babyishness,babyness)という概念に基づいて行われている.オーストリアの動物行動学者KonradLorenz は,非力で助けの必要な幼い動物に出会ったときに生じる体験― “かわいい(愛くるしい,herzig)” と表現される―について,他とは異質の独特な体験であると考え』、『そのような体験を生みだす対象の特徴を内省によって検討し,(1) 身体に比して大きな頭,(2)前に張り出た額をともなう高い上頭部,(3) 顔の中央よりやや下に位置する大きな眼,(4) 短くてふとい四肢,(5) 全体に丸みのある体型,(6) やわらかい体表面,(7) 丸みをもつ豊頬,といった項目を挙げた.これがベビースキーマとよばれるものである。』
他にも、心理学や視覚学等の研究分野で色々研究されていうのでしょうね。BLMは心理学等の専門家ではないので、詳細は解りませんが、そういう魅力的な外観形態をどのように、権利化すれば良いでしょうか。
意匠権の閲覧
では、「LOVOT(らぼっと)」は、どのような意匠登録がなされているのかみていきたいと思います。
以下はいずれも出願日は、平成28年4月22日のものです。
創作者さんは、筆頭が林要氏、次に根津孝太氏で、権利者はGROOVE X株式会社さんですね。
意匠に係る物品の説明は、「本物品は、通信機能やカメラ等のセンサーを備えた双方向コミュニケーションが可能な自律走行型のロボットである。「作動状態を示す参考斜視図」に示すように、本物品は本体下部に格納される車輪により自走が可能である。」といずれにも記載されています。
意匠の説明としては、「各図の表面部全面に表された濃淡は、いずれも立体表面の形状を表すためのものであり、意匠登録によって保護を求める色彩を特定したものではない。「左側面図」は「右側面図」と対称にあらわれるため省略する。「透光性を有する部分を示す参考正面図」及び「透光性を有する部分を示す参考右側面図」において、薄赤色で着色した部分は透光性を有する。」といずれにも記載されています。
意匠登録第1572719号 意匠に係る物品:ロボット
(以上、図面、願書の記載ともに、特許庁の公開情報(J-PlatPat)より抜粋。詳細は「こちら」をご参照。)
意匠登録第1573297号 意匠に係る物品:ロボット
登録日:平成29年3月3日
本意匠の意匠登録番号:意匠登録第1572719号
本意匠に係る他の関連意匠の意匠登録番号:意匠登録第1573298号
(以上、図面、願書の記載ともに、特許庁の公開情報(J-PlatPat)より抜粋。詳細は「こちら」をご参照。)
意匠登録第1573298号 意匠に係る物品:ロボット
登録日:平成29年3月3日
本意匠の意匠登録番号:意匠登録第1572719号
本意匠に係る他の関連意匠の意匠登録番号:意匠登録第1573297号
(以上、図面、願書の記載ともに、特許庁の公開情報(J-PlatPat)より抜粋。詳細は「こちら」をご参照。)
BLMコメント:上記の3つの意匠は類似するものとして登録されています。登録第1573298号は、現在、一般に「LOVOT(らぼっと)」と言えば、このカタチ、というのとは少し違いますね。市場の声を聞きながら、試行錯誤して、開発し、これぞ「LOVOT(らぼっと)」のカタチ!というものに行き着くには、時間がかかる場合があります。そう考えると、近時の意匠法改正で、関連意匠制度が改正されましたが、後から開発の成果を出願するのに利用しやすくなったと思います。
次に、以下はいずれも出願日は、平成30年12月17日のものです。
創作者さんは、筆頭が林要氏、次に根津孝太氏で、権利者はGROOVE X株式会社さんですね。部分意匠制度を利用していますが、ほぼ実線で表されているようです。
意匠に係る物品の説明は、「本物品は、ユーザと双方向コミュニケーションが可能な自律行動型のロボットである。本物品は本体下部に格納される車輪により自走する。本体には通信機能やカメラ等のセンサーが設けられ、ユーザの音声や表情等に応じて、会話を行ったり、表情や腕の態様を変化させたりするなど自律的に行動する。また、ユーザがコントローラを用いて本物品を遠隔操作することも可能である。…BLM省略…特定の産業上の用途に限定することに馴染まないものである。」といずれにも記載されています。
意匠の説明としては、「実線で表された部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。参考正面図において引出線1で示す部分はディスプレイであり、通電時には引出線2で示すような目が表示される。目の態様はユーザとのコミュニケーションに応じて変化し、本物品に様々な表情が現れる。…BLM省略…」といずれにも記載されています。
意匠登録第1660270号 意匠に係る物品:ロボット
登録日:令和2年5月1日
(以上、図面、願書の記載ともに、特許庁の公開情報(J-PlatPat)より抜粋。詳細は「こちら」をご参照。)
意匠登録第1660270号 意匠に係る物品:ロボット
登録日:令和2年5月1日
本意匠の意匠登録番号:意匠登録第1660206号
(以上、図面、願書の記載ともに、特許庁の公開情報(J-PlatPat)より抜粋。詳細は「こちら」をご参照。)
BLM感想
けっこうJ-PlatPatから意匠等を抜粋する作業は面倒ですがこの意匠群に関しては、可愛いので、どれを抜粋するか、迷うのも楽しい作業でした
出願された図面を全部載せていないので、詳細は原本にあたって下さい。
私事で恐縮ですが、BLMは意匠出願の仕事が本当に緊張します。図面が命。特許出願は、いわば膨大な文章で、それはそれで大変なんですが、ある程度補正で、減縮したりできるけど、意匠は、明らかな誤字等の形式的な部分はともかく、基本的には、出願時の表現を変更する補正は認められないので、一発勝負と考えた方がいいですね。
動く形状を一つの図面に入れるべきかとか、複数の意匠出願を出す場合はどの形状との組み合わせで意匠権の網を広げるかとかも色々考えます。昔は同日に出願しないと関連意制度が利用できなかったので、出願も一発勝負でした。近時の意匠法改正で、同一出願人によってその後開発された類似の意匠を出願できる期間が長くなり、適切に、出願対象を特定できる可能性が高まりましたね
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