1月31日の記事で、加湿器を探し中でキョロキョロ、どこでどう探せばいいのかさえ手がかりなしぶー で、WEB上であれこれ検索していたら、加湿器の形態に関する裁判例を見つけ、不正競争防止法2条1項3号の不正競争(形態模倣)に当たるとして同法3条1項及び2項に基づいて差止請求等した事例を取り上げました。

 

 今日は、同じ、いわゆる形態模倣に関する差止請求事例・ヌーブラ事件を見ていきます。新しい構造、形態を有するブラジャー・ヌーブラに関するものです。普通はブラジャーってレースや模様、刺繍等がついていたりするのですがキラキラビキニ、問題となった本件商品の形態等はシンプルで、TシャツTシャツとか着てもスッキリ見える感じウインクビックリマーク、と言ったらいいでしょうか? 

 で、そういう形態について、意匠権や特許権の取得に基づき、これらの権利で他人を排除することが考えられますが、それ以外だと、不正競争防止法による請求が考えられます。

 

 でも、不正競争防止法2条1項1号と2号は、いわゆる標識法と位置付けられるもので、まず周知性又は著名性や、混同のおそれ等の主張に加え、用途・機能を有する商品の形態を保護対象(商品等表示)と主張する場合、識別力を発揮する標識として認められるには、ハードルが高い。一方、お隣の3号は、標識法分野ではなく、「意匠法と重複する点もあり」、「意匠法による保護の前段階としての機能も指摘される」(茶園成樹「不正競争防止法第2版」有斐閣)ところでもあり、用途・機能を有する商品の形態も容易に保護されて、周知性やら混同やらの主張も不要。但しデッド・コピーであることや請求期間等、別途制限がありますが。

 まあ、本件ヌーブラのような、「機能で勝負!」「シンプルイズベスト!」のような商品の形態は、3号で行ければ、こっちの方が主張しやすそうです。ただそうすると、請求主体が大丈夫?ってなことにぶーはてなマーク

 

 すなわち、3号の請求主体について、「商標・意匠・不正競争判例百選-別冊ジュリスト No.188」(2007,有斐閣)に掲載された「92 請求主体性(2) ー独占販売権者[ヌーブラ 事件]」(横山久芳先生ご担当部分、186-187頁)を参考にしますと、『本判決以前の裁判例は一様に3号の請求主体を先行者に限定するという解釈を示し』ていたとされ、その理由は『3号は先行者の開発利益を保護し、商品開発へのインセンティブを付与することを目的としたものであるから』というのが第一の理由としてあげられます。

 しかし、『3号は他人の商品の形態を模倣した商品を譲渡等する行為を不正競争行為と規定し、それによって「営業上の利益」が害された者に差止めや損害賠償の請求を認めている。本判決は、この3号の請求主体に、自ら形態を開発しその商品化を行った者(以下、「先行者」)のみならず、先行者から当該商品の独占的販売権を付与された者』『が含まれるとした初めての裁判例として先例的な意義を持つものである。』等と解説されています。

 

 BLMも、先行者のみと解していたので、ちょっと勉強していないと、あれ、そんな判決出てたのね、と慌てますね。日々勉強ですほっこりあせる ちょっと前置きが長くなってしまったので、裁判例からの引用は軽めににやりひらめき電球 

 

ヌーブラ事件 大阪地裁平成15(ワ)8501の2 平成16年9月13日判決

(判決文は、最高裁HPより引用。「」内は引用、それ以外はBLM任意に抽出しまとめています。太字・着色・改行・アンダーラインはBLM。)

 

原告 ゴールドフラッグ株式会社

被告 株式会社セラヴィ

 

事案の概要

 原告の商品は、「商品名を「ヌーブラ(NuBra)」といい、米国カリフォルニア州法人であるブラジェル社」「が考案し、平 成14年10月から米国及び台湾において販売され、大好評を博した」もので、「原告商品は」、「 …2個のカップよりなり」「肩ひも(ショルダーストラップ)、横ベルト等身体に装着する部材がなく」「各カップの内側には粘着層を備えている 」といったものでした。

 原告は「ブラジェル社との間で、原告に原告商品の日本国内における独占的販売権を与える旨の契約を締結し、同年2月1日から、日本における原告商品の輸入及び販売を開始し」しました。

 被告の商品は、「日本国内で、「パス ブラ(Pas Bra)」、「ア ン ブラ(Un Bra)」、「シリコンブラジャー」という商品名で販売してい」ました。

最高裁HP

 原告商品目録」より引用   被告の「ロ号製品目録」より引用


        

当裁判所の判断(理由)

 「請求原因(2)(独占的販売権)について」見ていきますニコ

裁判所は、「原告が、平成15年1月30日、ブラジェル社との間で、原告に原告商品の日本国内における独占的販売権を与える旨の契約を締結したこと、原告が同年2月1日から、日本における原告商品の輸入及び販売を開始したことが認められる」とし、

 

「原告は、原告商品の日本国内における独占的販売権を与えられた独占的販売権者であるところ、独占的販売権者が、不正競争防止法2条1項3号」「による保護の主体となり得るかについて」は、「3号の趣旨をみると、他人が市場において商品化するために資金、労力を投下した成果の模倣が行われるならば、模倣者は商品化のためのコストやリスクを大幅に軽減することができる一方で、先行者の市場先行のメリットは著しく減少し、模倣者と先行者の間に競争上著しい不公正が生じ、個性的な商品開発、市場開拓への意欲が阻害され、このような状況を放置すると、公正な競業秩序を崩壊させることになりかねない。

そこで、3号は、他人が商品化のために資金、労力を投下した成果を、他に選択肢があるにもかかわらず殊更完全に模倣して何らの改変を加えることなく自らの商品として市場に提供し、その他人と競争する行為をもって、不正競争としたものである。」と言った趣旨を確認した上、

 

これを前提として、

3号による保護の主体の範囲を考えると、自ら資金、労力を投下して商品化した先行者は保護の主体となり得るが、そのような者のみならず、先行者から独占的な販売権を与えられている者(独占的販売権者)のように、自己の利益を守るために、模倣による不正競争を阻止して先行者の商品形態の独占を維持することが必要であり、商品形態の独占について強い利害関係を有する者も、3号による保護の主体となり得ると解するのが相当である。このような解釈は、公正な競争秩序の維持を目的とする前記の3号の趣旨にもかなうものである。

他方、先行者が商品化した形態の商品を単に販売する者のように、商品の販売数が増加することについて利害関係を有するとしても、先行者の商品形態の独占について必ずしも強い利害関係を有するとはいえない者は、保護の主体となり得ないと解すべきである。」としました。

 

そして、

「不正競争防止法は、2条1項において「不正競争」を定義し、同項3号では、他人の商品の形態を模倣した商品を譲渡等する行為を不正競争とし、差止請求の主体について、3条1項において、「不正競争によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者」としており、損害賠償請求の主体については、4条において、不正競争により「営業上の利益を侵害」された者を損害賠償請求の主体として予定しているものと解され、例えば特許法100条1項が差止請求の主体を「特許権者又は専用実施権者」としているのとは異なった規定の仕方をしている。」とし、「独占的販売権者は、3号所定の不正競争によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者に該当するから、独占的販売権者を3号の保護主体と解し、その差止請求及び損害賠償請求を認めることは、不正競争防止法上の文言にも合致するというべきである。」としました。

 

さらに、

「3号は、その主要な要件が、「形態の模倣」という比較的簡易な要件であり、安易に適用を拡大すると、かえって自由な市場活動が妨げられるおそれがあるとも考えられる」が、「商品化を行った先行者のほかに、独占的販売権者のように商品形態の独占について強い利害関係を有する者に限定した範囲で3号の保護の主体を考えるならば、そのような弊害を生ずることはないというべきである。また、独占的販売権者も3号の保護主体となると解したとしても、独占的販売権者が訴訟上3号に基づく権利を行使するためには、先行者が商品化したこと、及びそのような先行者から独占的販売権を与えられたことを主張立証しなければならず、先行者が訴訟上3号に基づく権利を行使する場合に比べて、商品化の点について主張立証責任が軽減されるわけではないから、この点からも、3号の適用範囲が安易に拡大されることはないといえる。」としました。

 

さらに、さらに、

「実際上、独占的販売権者が商品の製造販売を専ら担当しており、商品化した先行者が3号に基づく権利行使をする状況にない場合も考え得るところであるから、上記の解釈は、そのような場合においても、模倣を阻止し、公正な競争秩序の維持を図るという点からしても、妥当なものということができる。

  他方、独占的販売権者は、独占権を得るために、商品化した先行者に相応の対価を支払っているのが常であり、先行者は商品化のための資金、労力を、商品の独占の対価の形で回収していることになるから、独占的販売権者を保護の主体として、これに独占を維持させることは、商品化するための資金、労力を投下した成果を保護するという点でも、3号の立法趣旨に適合するものである。」としました。

 

 以上を述べた上、「独占的販売権者は、3号による保護の主体となり得るというべきである。」と判示し、「原告は、原告商品の日本国内における独占的販売権者 であるから、不正競争防止法2条1項3号による保護の主体となるものと認められ る」と判断しました。

 

 さて、最終的に、請求は一部認容され、控訴されていますが、今日は請求主体部分のみ取り上げてみました。長くなったので、今日はここまでですが、3号は、創作法分野なのか、標識法分野なのか(そもそもこういう分け方が古いのかもしれませんが…)、なかなか謎な規定ですので、今後もちょこちょこ勉強していきたいと思いますニコ音譜

 

by BLM

 

 

 

 

 

 

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