1月13日の記事で、ミツカンの納豆容器の意匠権、とくに、株式会社ミツカンの「金のつぶ あらっ便利!」事例に係るものを、経済産業省・特許庁発行の「なるほど、日本の素敵な製品」(2011年12月発行)を参考にちょっと見てみました。

 従来の納豆容器の不都合(食卓に出す際又はお皿に移す際等の納豆の取り出し方が少々ベタベタになる不便性は想像に難くないですねにやり)、そういったことを解消するため、「タレの小袋を無くそうと考え」たことが発端となり、ゼリー状のタレにたどり着いたようです(同書141-142頁引用、参考。)。

 13日、つまり昨日は、3件の意匠権を取り上げましたが、小袋がなく、タレと納豆が直接並んで収納されている!というのは実は画期的な形状であったのではないかと思います。コンセプトが画期的だった! しかし、容器としては、小さな三角形部分と大きな三角形部分も両方又はどちらかを変えれば、他社が迂回して真似できそうです。あくまで、容器だけに着目した場合ですが。ですので、このコンセプトを本気になって保護するのなら、3件の本&関連意匠権では足りないような気がします。考えられる形状に係る意匠権で決め打ちして類似範囲を広げ、意匠権の効力を大きな範囲にする、というのも一案です。

 

 しかし、ミツカンさんは、BLM私見ですが、意匠権だけで保護するのではなく、コーポレートブランドの信用性やその他特許権や宣伝広告やら、色々な要素で、納豆業界のオンリーワンを目指したのだろうと思います。まあ、お酢で培った「信用」という財産が一番大きそうです。

 ある意味、意匠権を複数取得する戦略は大企業だからできるものでしょうが、複数の要素で希少性を作出するというのは、中小・中堅企業でもチャレンジできそうです。

 

 で、ミツカンさんのホームページの「研究開発トピックス」の項目(こちら)には、「パキッ!とたれ」の容器(納豆商品)の開発経緯等が掲載されています。この記事は面白いですニコビックリマーク 

 同トピックスの記事ではまず『「たれ小袋が開けづらく、食卓や服を汚すことがある」というお客様の不満を解消するために、2008年にたれをゼリー化して、たれ小袋とフィルムをなくした『金のつぶ あらっ便利!』を発売しました』とあります。昨日見た容器の内容ですね。

しかし、これについては以下の状況があったようです。(以下、太字はBLM)

 すなわち『当初、この容器改革はお客様の注目を集め好評をいただきましたが、一方で「ゼリー状のたれが溶けづらい」、「納豆が入っているスペースが(従来品に比べ)狭いので、混ぜにくい」という声も寄せられました。この新たな問題点を解消するために開発されたのが、『金のつぶ パキッ!とたれ』です。』とのことです。『商品開発までの道のりには様々な課題がありました。』とのことですが、見事商品化に漕ぎ着けたのですね。

 

 BLMとしては最初の容器やゼリー状のタレに固執しなかった、ということが重要かと思うのです。「「たれ小袋が開けづらく、食卓や服を汚すことがある」というお客様の不満を解消する」というのが目標であって、ゼリー状のタレをせっかく開発したから、なんとか販売したい、という観点ではないということだったのだと、BLMは思います。

 

 さて、では、せっかく開発したゼリー状のタレを採用せず、どんな解決策を用いたのでしょうかうーんはてなマーク。「パキッ!とたれ とろっ豆」を今日は見ていきましょうほっこりひらめき電球ニコビックリマーク

 

 一応、BLMは、商標法、意匠法実務を主にやっているので興味の中心は意匠権、商標権に行きつきます。本商品の成功要因は色々あると思うのですが、これらに集中させていただきますほっこりあせる 

 J-PlatPatで「ミツカン」と出願人・権利者の項目に入れてみたところ、関係がありそうな意匠権として以下がありました。ただ、「研究開発トピックス」の項目(こちら)に照らすと完成品とズバリ一緒のようではないような…。まあ、意匠権は、商標権と違って類似範囲にも専用権が及ぶので、実施品が下記意匠権の類似の範囲に入っていればいいのでしょう。

 J-PlatPatに掲載の登録情報から直接引用してみます(詳細は、左から順に「こちら」と「こちら」と「こちら」をご参照ください。)。これら3つの意匠は、本意匠(基礎意匠)と関連意匠の関係にあるので、類似と判断されています。意匠が類似である場合、意匠出願人が同じであれば、一定要件の下で利用できる制度です。(関連意匠制度って何?については、昨日の記事に書いたのでご参照。要は、これら三つは類似関係にあるということです。)

 

《容器の使用状態や機能をどこまで明らかにする?》

 ただ、BLMとして謎なのは、上述したミツカンさんのホームページの「研究開発トピックス」の項目(こちら)に掲載されているような構造(例えば、「容器を上から写した写真」のような平面の形態や、「容器断面図」)が、この意匠権からははっきりと把握しづらいところです。 

 三つの権利とも、【意匠に係る物品の説明】には、「本物品は、容器本体とその容器本体を覆って閉塞する上蓋とからなる包装用容器であって、主に納豆容器として使用されるものである。容器本体には納豆等の食品が収納可能な食品収納凹部が形成される一方、上蓋の中央部には納豆用調味料等の調味料が蓋上面側から収納可能な一対の調味料収納凹部と、一対の調味料収納凹部を連結する溝部とが形成されている。」と記載がありますので、一応、蓋部にタレが収納できる点はこの文字の説明で分かります。

 登録意匠の範囲は、「願書の記載及び願書に添附した図面に記載され又は願書に添附した写真、ひな形若しくは見本により現わされた意匠に基づいて定めなければならない。」とされているので、上記説明も権利範囲に入ります。

 

 しかし、蓋の上にフィルムを貼付された状態や、パキッと蓋を割ってタレを外に出すという状態については説明されていません。意匠出願に際し、どの程度使用状態を説明するのか、権利範囲に含める工夫をするか等は悩ましいです。権利化後「被疑侵害意匠と自分の意匠権に係る意匠とが類似する」と主張する際に、何を記載しておくと有利に働くか、何を記載しないでおくと有利に働くか、を考えて意匠出願書類を整える必要があると思います。

 

 BLMの勝手な推測だと、最終消費者に販売される目的で流通する製品自体をおさえるというよりは、工場等で生産されている段階の発泡スチロールが成型された状態をおさえる意図があるのだろうか、と思ったりうーんはてなマークえー?はてなマークおーっ!ひらめき電球

 もう一つ考えてしまうのは、昨日冒頭で触れた“カラメルソースの容器の「dispen pak」(アメリカで発明された「ディスペンパック (現ブランド名:パキッテ))(「こちら」のホームページ等ご参照。)」との関係で創作容易であるとして拒絶されることを危惧したのだろうか?という点です。

 

 まあ、色々考えて意匠出願書類を整える訳です。意匠の創作的部分を最大限主張する必要があるのだけど、それ以外にも、当然費用対効果、権利行使のしやすさ、先行意匠の存在等。

 上記意匠権の図面の現し方の意図はBLMには本当のところ、(批判的に言っているのではなくよく、純粋に)分かりません。

 

 

《特許出願という手ももちろんある!》

 まあ、でも、この開発の成果を知的財産権で抑えようとした場合、上記3件の意匠権では足りないでしょう。複数の要素を駆使して、オンリーワンを目指せばいいんだと思います。その一つが特許なんでしょうね。パキッ!とたれ とろっ豆」の容器に関係がありそうな特許出願として、以下のようなものがありました。(特許権は取得されているか調べていませんし、以下2件の特許出願情報を、J-PlatPatから抜粋して掲載してみます。他にも関連特許(出願)があるのではないかと思いますが軽く触れるだけにやりあせる

 

特許公開公報:2013-107687とか:

 

特許公開公報:2013-103728とか:

 しかし、

追記:KOIPさんが15日の記事で、特許について書いてます。

 

《商標出願という手ももちろんある!》

 「パキッ!とたれ とろっ豆」の容器の実際の販売時の包装を見ると、平面の右上に商標が確認できますが以下のように商標権を取得していました。同ホームページには納豆の商品が色々掲載されていますが、この容器を採用している商品には、この商標が付されているようです。容器の機能を説明するのには最も効果がある方法とも言えるかもしれません。でも「パッ!とたれ」の文字部分のみが他人に真似された場合、排除できるか微妙なところがありますが(つまり記述的な文字として識別力なしとの理由で、図形と一体となって識別力を発揮していると認定され得る商標だと言えるかもうーんはてなマーク)、まあ、でも、この文字のみ真似されたところで、オンリーワンを作出する複数の要素で相乗効果を持たせていれば、それほど痛手にはならないと推測します。

 

(J-PlatPat掲載の商標公報より引用。)

 

 

BLM感想 

 意匠権で製品のコンセプト自体の保護まで考えましょう、と言われるところかと思うのですが、複数の要素でオンリーワンを作出する方が、中小・中堅企業だとやりやすいかもしれません。ケースバイケースですが。

 最後に、昨日冒頭に挙げた「dispen pak」との関係ですが、その知的財産権との関係が気になります。ミツカンさんの容器が一般化すれば、「dispen pak」の事業者さんとしては、どう対応すれば良いのでしょうか? どんな権利が取られているか分かりませんが、パキッと割って中のソース等を出す基本的な形態について仮に特許権が取られ、かつ権利が切れた暁には、「dispen pak」等自社の商標を、被服におけるYKKのファスナーブランドのように(普段は見えない部分ですが、ファッションブランドにも選ばれる部品といった趣旨です。)、周知させるのが一案として考えられるのではないか、と思ったりしましたキラキララブラブ 

 

by BLM

 

 

 

 

 

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