無機ナノシートは将来身近になるであろう電子デバイスへも応用されています。最近、丸めたり折りたためるようなスマートフォンが話題になることが多くなってきましたが、そういった電子機器にも無機ナノシートは応用されています。
◆どんな特許か?
発明の名称を『導電体、その製造方法、およびこれを含む素子』とする特許(特許6777486、特許権者:三星電子株式会社)が取り上げる特許です。
請求項1,2を引用します。
『【請求項1】
複数のルテニウム酸化物ナノシートを含む第1導電層を有する導電体であって、
前記複数のルテニウム酸化物ナノシートのうちの少なくとも2枚のナノシートが互いに接触して電気的連結を形成し、前記複数のルテニウム酸化物ナノシートのうちの1枚以上のナノシートは、表面に金属クラスターを有する、導電体。
【請求項2】
前記金属クラスターは前記ルテニウム酸化物ナノシートの表面に吸着している、請求項1に記載の導電体。』
2枚のルテニウム酸化物ナノシートが互いに接触した状態で、かつ、ナノシート表面に金属クラスターが存在している構成になっています。
本件特許発明の目的の1つは『良好な透明性を有し、かつ、面抵抗が低減された導電体を提供することにある。また、本発明の他の目的は、柔軟性に優れる導電体を提供する』(上記特許の特許公報の段落[0006])事であり、『柔軟性』に優れるとあるので、フレキシブル(つまり、丸めたり折りたためる)なスマートフォン等に応用できる導電体を得ることにあります。
◆ナノシート表面に金属クラスターを設ける理由
請求項と課題を読むだけで、導電性を向上させる点に金属クラスターが大きな役割を果たしているのだろうと推測できます。
実際、上記公報の段落[0056]に、『ルテニウム酸化物ナノシートは表面に金属クラスターを有し、これにより、これを含む導電体はさらに低い面抵抗を示すことができる。金属クラスターは、前記ルテニウム酸化物の仕事関数より低い仕事関数を有する金属元素を含むことが好ましい。以下のメカニズムに拘束されるものではないが、このようにルテニウム酸化物ナノシート表面に存在する金属クラスターは、ルテニウム酸化物に電子を供与することができるため、すなわち金属クラスターからルテニウム酸化物への電子移動が起こるため、ナノシートの導電性が向上しうる。ゆえに、ルテニウム酸化物ナノシートを含む導電層を有する導電体は、高い導電性(低い面抵抗)を示しうる』と記載されています。
ということは、電子供与ができるものであれば、金属クラスターではない他の材料でも同様の効果が期待できるかもしれません。
それにしても、結構身近なところにも無機ナノシートが応用されてきています。それだけ無機ナノシートのポテンシャルが高い、ということなんだと思います。今後も更に様々な分野に応用されていくことを考えると、興味深いですね。
by KOIP
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