今日は、10月27日の記事の続きを見ていきます。 今日見ていく部分は、原告マガジンハウスが登場します。
著作権の部分は他のブログ等でたくさん説明されているでしょうから、不正競争防止法に係る部分のみ
ポパイ著作権Ⅰ事件 東京地裁昭和59(ワ)10103 平成2年2月19日判決
(判決文は、最高裁HPより引用。「」内は引用、それ以外はBLM任意に抽出しまとめています。太字・着色・改行・アンダーラインはBLM。)
主 文
「一 被告大阪三恵株式会社及び被告株式会社ポパイは、別紙第一目録(一)ないし (四)表示の図柄を付した腕カバーを販売してはならない。
二 被告大阪三恵株式会社及び被告株式会社松寺は、別紙第一目録(五)表示の図柄を付したマフラー及び別紙第一目録(五)又は(六)表示の図柄を付したネクタイを販売してはならない。
三 被告大阪三恵株式会社及び被告株式会社ポパイは、その所有する腕カバーから 別紙第一目録(一)ないし(四)表示の図柄を抹消せよ。
四 被告大阪三恵株式会社及び被告株式会社松寺は、その所有するマフラーから別紙第一目録(五)表示の図柄を、その所有するネクタイから別紙第一目録(五)又 は(六)表示の図柄を抹消せよ。
五 被告大阪三恵株式会社は、原告キング フィーチャーズ シンジケート イン コーポレーテッドに対し、二八万八六九七円及びこれに対する昭和五九年一〇月二日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。
六 原告キング フィーチャーズ シンジケート インコーポレーテッドのその余の請求及び原告株式会社マガジンハウスの請求を棄却する。
七 訴訟費用は、これを一〇分し、その五を原告キング フィーチャーズ シンジ ケート インコーポレーテッドの負担とし、その四を被告大阪三恵株式会社と被告株式会社松寺の連帯負担とし、その余を原告株式会社マガジンハウスと被告株式会社ポパイの各負担とする。
八…」以下省略。
(裁判所HPより引用(こちら))
以下、裁判所判断からいきなり見ていきます。
理 由
第三 〔不正競争防止法に基づく請求〕について
(前述のように、以下は、10月27日の記事の続きです。)
2 「次に、原告ハースト及び原告アメリカン フィーチャーズは、
本件ロゴタイプ は、遅くとも昭和五六年ころには、原告ハースト及び原告アメリカン フィーチャーズを中核とする、同原告らとライセンシーのグループ商品化事業を示す表示、すなわち、同原告らとライセンシーのグループの商品表示として、
また、原告マガジンハウスの商品表示として、わが国において広く認識されるに至った旨主張するので、審案するに」
「本件ロゴタイプは、POPEYE の文字に白抜きのハイライトを付したものであって、POPEYEの文字に装飾を付したものであることが認められ」また、証拠によれば「原告マガジンハウスは、原告ハーストのライセンシーとして、その雑誌の題号に本件ロゴタイプを使用し、更に、原告ハーストのその余のライセンシーも、ポパイの絵と一緒に本件ロゴタイプをその商品に使用していることが認められる。
右認定の事実によれば、原告ハーストのライセンシーは、本件ロゴタイプを本件漫画の主人公であるポパイを指すものとして使用しているものであって、それ以外の意味を有するものとして使用しているものでないことは明らかであり、かつ、ポパイのキャラクターは、前認定のとおり、原告ハーストらを中核とする、同原告らとライセンシーのグループの商品表示として、遅くとも昭和四五年には、日本国内において広く認識されていたものであるから、本件ロゴタイプは、単に右周知の商品表示の一態様を構成する特定の装飾的な字体の文字として、その後に追加されたものにすぎないものであるから、これをもってポパイのキャラクターとは別個独立の周知の商品表示であると認 めることは困難であるというほかはない。
したがって、本件ロゴタイプは、原告ハーストらを中核とする、同原告らとライセンシーのグループの周知の商品表示の一態様であるとはいえても、それとは別個独立の原告マガジンハウスの商品表示であると認めるのは相当ではない。
(↑BLMコメント:この裁判所の判断は、あくまで、昭和59年のものであり、地裁レベルなので、別途異なる判断もあり得るかと思います。本判決ではこのように判断した、ということになるかと思います。)
二 第一、二に認定したところによれば、被告大阪三恵及び被告ポパイは、被告図 柄(一)ないし(四)を付した腕カバーを、被告大阪三恵及び被告松寺は、被告図 柄(五)を付したマフラー及び被告図柄(五)又は(六)を付したネクタイを販売するおそれがあるものと認められる。
三 被告図柄(一)、(二)、(四)、(六)のポパイの絵及び被告図柄(一)な いし(六)におけるポパイ又はPOPEYEの文字が、前認定の周知の商品表示で あるポパイのキャラクターを意味するものであることは明らかであるから、被告図 柄(一)ないし(六)は、いずれもポパイのキャラクターと同一ないし類似の図柄 であると認められる。
四 前三認定のとおり、被告図柄(一)ないし(六)は、いずれも原告らの周知の 商品表示であるポパイのキャラクターを意味するものであるから、被告らが被告図 柄(一)ないし(六)のいずれかをその商品に付して販売した場合、被告らが販売している商品は、原告ハースト及び原告アメリカンフィーチャーズを中核とする、同原告らとライセンシーのグループの商品であると誤認混同されるおそれがあるものと認められる。
五 前説示のとおり、商品の出所について混同のおそれがある以上、特段の事情がない限り、ポパイのキャラクターのライセンサーである原告ハースト及び日本におけるポパイのキャラクターの管理業務を行っている原告アメリカン フィーチャー ズは、被告らの行為により営業上の利益を害されるおそれがあるものというべきところ、右特段の事情を認めるに足りる証拠は存しない。
(↑BLMコメント:不正競争防止法上の差止請求が認められるためには、同法2条1項1号で規定されている不正競争(1号は出所混同惹起行為)に該当することに加え、同法3条の「不正競争によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者は、その営業上の利益を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。」に該当する必要があります。
但し、判例・学説の多数説は、「商品の出所について混同のおそれがある以上、特段の事情がない限り」「被告らの行為により営業上の利益を害されるおそれがある」と解しているということですね。本判決もその流れにある判決なんだと思います。)
「被告らは、不正競争防止法一条一項一号の規定により保護されるのは、商品の製造販売等の業務に従事する商品主体であることを要するところ、原告アメリカン フィーチャーズは、ポパイの漫画が付された商品の製造販売の業務に従事する者ではなく、また、自己の名において商品化事業を営むものでもないから、同規定により保護される主体とはなりえない旨主張するが、不正競争防止法一条一項一号の規定に基づき差止めを請求しうる者は、営業上の利益を害されるおそれのある者であれば足りるところ、原告アメリカン フィーチャーズは、前認定のとおり、原告ハーストの日本における代理人である【H】の手足となって、日本においてのポパイのキャラクターを管理し、保護育成することをその業務として遂行し、その業務について原告ハーストから対価を受領しているのであるから、同法条にいう営業上の利益を害されるおそれのある者に当たることは明らかである。
(BLMコメント:【H】は、原告ハーストが日本を含む極東地域において本件漫画の使用許諾契約を締結するについての代理権を有している者です。原告アメリカン フィーチャーズについて、「手足」といい、手足となる者にも差止を認める、という言い方は、誤解を招きそうですが、、、実質同一ということなんでしょうかね。)
「また、被告らは、
ポパイのキャラクターの商品化権許諾業務において、ライセンシーの選別、ポパイの キャラクターの使用態様のチェックや品質管理を含めた業者の指導、監督及び広告 活動並びにロイヤルティーの集金等を中心となって行っているのは、原告ハーストの極東代表である【H】個人であって、原告アメリカン フィーチャーズではなく、また、
原告アメリカンフィーチャーズは、【H】が代表を勤める会社として、その指示に従って行動するだけであって、独自の立場からポパイのキャラクターの商品化事業を行うものではなく、不正競争防止法によって保護を受ける周知商標の使用につき固有かつ正当な利益を有するものではないと主張するが、原告アメリカン フィーチャーズがポパイのキャラクターの商品化事業に必要な業務を遂行していることは、前認定のとおりであり、他に被告らの主張事実を認めるに足りる 証拠はなく、また、【H】は、原告アメリカン フィーチャーズの代表者であるか ら、同社が【H】の指示に従って行動するとしても、それは、同社の業務として行動することを意味し、したがって、同社が営業上の利益が害される者に当たらないとすることはできない。
更に、被告らは、
原告アメリカン フィーチャーズの活動は、" 原告ハーストの単なる手足としての活動にすぎず、法的には、原告アメリカン フィーチャーズ固有の活動とみられるべきものではないとして、原告アメリカン フィーチャーズが契約書に署名することはないこと、新聞紙上を通じて謹告等を掲載 するに当たっても、掲載行為の主体は、原告アメリカン フィーチャーズではない ことなどを主張するが、
原告アメリカン フィーチャーズが、ポパイのキャラクターの商品化権許諾業務について、契約書や新聞での謹告等の掲載の名義人となっていないからといって原告アメリカン フィーチャーズのライセンス契約締結に関する媒介行為、ポパイのキャラクターの管理行為等が、法的には、原告アメリカン フィーチャーズ固有の活動とみられるべきものではないとする根拠はないから被告らの右主張事実を理由として、原告アメリカン フィーチャーズが営業上の利益を害される者に当たらないということはできない。
更にまた、被告らは、
原告アメリカン フィーチャーズが、商品化事業に必要な業務について対価を得ているとして も、右は、原告アメリカン フィーチャーズの業務活動に対する原告ハーストから 得られる利益にとどまり、原告アメリカン フィーチャーズが得ている対価は、代理店(媒介代理商)手数料に類似するものであり、その収入の減少は、原告ハース トの営業成績が低下することによって反射的に生じるものであって、自らの営業上 の利益が害された結果によるものではない旨主張するが、前認定のとおり、原告ア メリカン フィーチャーズはポパイのキャラクターの商品化事業の遂行に必要な諸活動をなし、その対価として収入を得ているのであるから、被告らの行為がポパイ の商品化事業に対し悪影響を持つ以上、原告アメリカン フィーチャーズも、原告 ハーストと同様に被告らの行為により営業上の利益を害される者に当たるものとい うことができる。」(…以下省略)
六 抗弁1について判断するに、前一1(四)に説示するとおり、本件商標権は、 その商標登録出願前に生じた本件著作権と抵触するものであって、被告らは、商標 法二九条の規定により、その登録商標の使用をすることができないのであるから、 被告らの本件商標の使用は、不正競争防止法六条にいう「商標法ニ依リ権利ノ行使 ト認メラルル行為」に当たるということはできない。被告らは、商標法二九条は、 昭和三五年四月一日から施行されており、本件商標が昭和三三年六月二六日に商標登録出願された当時、存在していないと主張するが、商標法施行法三条一項本文の 規定に照らし、商標法二九条は、本件商標権について適用あるものと解されるか ら、被告らの右主張は、採用しえない。
七 被告らの抗弁3
権利失効の原則又は権利の濫用の主張は、前第一、五の認定判 断と同一の理由により、採用することができない。
八 以上によれば、原告ハースト及び原告アメリカン フィーチャーズの不正競争防止法一条一項一号の規定に基づく被告大阪三恵及び被告ポパイに対する被告図柄 (一)ないし(四)を付した腕カバーの販売の差止め及び同腕カバーからの右図柄の抹消並びに被告大阪三恵及び被告松寺に対する被告図柄(五)を付したマフラー及び被告図柄(五)又は(六)を付したネクタイの販売の差止め及び右マフラー、 右ネクタイからの右図柄の抹消請求は、理由があり、原告マガジンハウスの損害賠 償請求は、理由がない。
(↑BLMコメント:今日の裏テーマ、原告マガジンハウスの請求なんですが、商品化事業のグループの一員として認識されたものと考えますが、そのグループを
第四 結語
以上のとおりであるから、原告らの本訴請求は、主文掲記のとおり、一部を認容 し、その余は、棄却することとし、」(省略)「主文 のとおり判決する。」
BLM感想
今日の裏テーマ、原告マガジンハウスは?ですが、「原告マガジンハウスの損害賠償請求は、理由がない。」とされてしまいましたね。「本件ロゴタイプは、単に右周知の商品表示の一態様を構成する特定の装飾的な字体の文字として、その後に追加されたものにすぎないものであるから、これをもってポパイのキャラクターとは別個独立の周知の商品表示であると認めることは困難」とされ、「本件ロゴタイプは、原告ハーストらを中核とする、同原告らとライセンシーのグループの周知の商品表示の一態様であるとはいえても、それとは別個独立の原告マガジンハウスの商品表示であると認めるのは相当ではない。」と判断されてます。
何度も言いますが、昭和59年のものであり、地裁レベルなので、別途異なる判断もあり得るかと思いますが、いずれにしても、この地裁判断の立場に従うと、商品化事業のグループの一員としては認識されても、中核たる存在でない場合、2条1項1号(本件では、旧法の1条1項1号)の「他人」と認められなかったということですね。
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