半導体に微量の不純物を添加することをドーピングと言います。KOIPは昔、発光ダイオードの研究開発に携わっていたこともあり、馴染みのある技術です。

 無機ナノシート関連特許その30は、そのドーピングに無機ナノシートを用いる技術に関する特許です。

◆どんな特許か?
 発明の名称を『法光触媒の製造方』とする特許出願(特開2020-157283、出願人:公立大学法人山陽小野田市立山口東京理科大学、戸田工業株式会社)が取り上げる特許です(ブログ執筆時点で出願中のものです)。

 光触媒活性を示す酸化チタン等の酸化物系半導体は、そのままだと可視光に対する応答性がないため、太陽光を利用するためには、可視光下でも応答するように工夫する必要があります。

 そのため、ドーピング技術を用いるのですが、従来法では800℃以上の高温処理が必要であったり、毒性のあるガスを用いることが必要であり、よりマイルドな条件でのドーピング技術が求められていました。

 そこで、今回の特許出願に係る発明がなされています。

 請求項1を引用します。
【請求項1】
 窒化炭素ナノシートと酸化物系半導体粒子とを混合する工程、及び前記工程で混合した混合物を焼成する工程を含む光触媒の製造方法。


 窒素や炭素を半導体にドープするために、『窒化炭素ナノシート』という無機ナノシートを用いています。

 上記公開公報の段落[0006]によれば、『窒化炭素(C3N4)ナノシートをドープ材料として用いると、温和な条件下でチタン酸ストロンチウム(SrTiO3)等の酸化物系半導体に窒素及び/又は炭素をドープすることができ、その結果、光触媒活性を向上させることや可視光による光触媒作用を発現できることを見いだした』とされ、更に『ナノシートは、内部よりも表面の割合が高いことから表面エネルギーが高いため、他の物質との強い吸着相互作用を示すと考えられ、そのため、ナノシートを酸化物系半導体粒子と混合することにより、窒化炭素(C3N4)ナノシートが酸化物系半導体粒子の表面に吸着されて複合体が形成され、この複合体を焼成することにより比較的低温で窒化炭素(C3N4)の窒素や炭素が酸化物系半導体にドープされるためと考えられる。』と説明されています。

 これまで何度もブログで取り上げてきたように、無機ナノシートは高いアスペクト比を有し、表面積も大きいので、様々な反応の反応場として利用できます。今回の特許は、「場」として利用するだけでなく、その「場」をドーピング材料にしてしまうという、いわば、一石二鳥の効果を狙った技術と言えそうです。

 なお、「焼成」温度は500℃から700℃ということなので(請求項4)、従来に比べたら比較的低温での処理で光触媒を作ることができます。

◆光と無機ナノシート
 今回の特許では無機ナノシートをドーピング材料として使っていますが、無機ナノシートは、光化学の土台として用いることができます。

 例えば、発光材料、人工光捕集系、人工光合成型物質変換反応の場、環境応答性の光機能材料等々のおおもととして無機ナノシートは用いることができ、研究が進められています(「二次元物質の科学」(日本化学会編)、化学同人、p124)。

 KOIPは大学・大学院では無機化学を専攻し、企業にいたころはLEDという「光」と関りのある研究開発をし、更に門前払いレベルで却下されましたが人工光合成の研究が将来有望であるからやるべきと企画に話したこともあり、無機ナノシートと「光」関係には何やらやたらと縁があります。

 しかもこれまでの経験をある程度はいまの仕事に活かすことができているので、人生、どう転ぶか分かりませんねキョロキョロ

by KOIP

 

 

 

 

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