4月11日の記事等では、フレッドペリー並行輸入事件を、大阪地裁、大阪高裁の各判決から見ていきました。BLMとしては、判決本文を読まず、短い解説文だけさらっと読むと、まるで、中国で製造した商品=粗悪品、と勘違いしそうな感じもしなくはないうーんはてなマークにやり汗……けど、中国産でも良い製品は沢山ある、というか、今、中国で製造した製品でないものを探すのが難しいおーっ!ビックリマークという世の中になっていると思います。

 

 本件の場合は、4月15日の記事で見たように、被控訴人(原告)が主張しているだところによれば(あっ、どちらかの主張が正しいか、このブログではっきりと言えません。証拠が全てなので、証拠が出せなければ、本当のことでも信じてもらえない…)、で、ただ、その主張の中で、「FPSUK社は,平成4年に,フェイス社との間で,香港,中国,マカオ,台湾,シンガポール,マレーシア,インドネシア等を領域として,ソーシング契約(発注者の指示に従って生産請負及び その製造管理・監督を行うという契約)及びディストリビューション契約(商品供 給を受けて再販売を行うという契約)を締結したが,フェイス社が粗悪な中国製製品を製造する等のトラブルを起こしたため,平成5年12月にこれらの契約を解除したところ,オシア社は,当時,フェイス社のサブディストリビュー ターでもあったところから,本件ライセンス契約においても,契約地域を上記4か国に限定することになった」という経緯は、粗悪かどうか主観的かもしれませんが、この経緯があったことは、少々、なぜ中国を製造地域から除外したのかの、この事案の特有の理由として、頭に入れておいても良いかもしれません。

 

最高裁判所第一小法廷平成15年2月27日判決・平成14(受)1100

(「」内引用。改行、太字、下線、着色はBLMが任意最高裁ホームページから引用。

以下注は、引用した場合、少々わかりづらいので、BLMが、地裁、高裁判決より参考に書きしました。下矢印

D社:フレッド・ペリイ・スポーツウ エア・リミテッド(以下「FPS社」という。)

F:フレッドペリー

B1:被上告人ヒットユニオン株式会杜

E社:一審原告が、フレッドペリーの国際事業を買い取り設立した英国法人フレッドペリー(ホールディングス)リミテッド(以下「FPH社」という。)

G社:シンガポールの法人であるオシア・インターナショナル・ピーティーイー・リミテッド(以下「オシア社」という。)

 

主文

本件上告を棄却する。以下省略。

 

理由

「1 原審が適法に確定した事実関係の概要等は,次のとおりである。 

(1) 英国法人D(以下「D社」という。)は,第1審判決別紙商標目録一記載の構成から成る商標につき,指定商品を「被服,布製身回品,寝具類」とする登録第650248号(昭和39年8月17日設定登録)の商標権を有し,同目録二記載の構成から成る商標につき,指定商品を「被服(運動用特殊被服を除く),布製身回品(他の類に属するものを除く),寝具類(寝台を除く)」とする登録第1404275号(昭和55年1月31日設定登録)の商標権を有していた(以下,両商標を併せて「本件登録商標」といい,両商標権を併せて「本件商標権」という。)。」第1審判決別紙商標目録一記載の構成から成る商標(標章):こちらの記事ご参照。

(第1審判決別紙商標目録一記載の構成から成る商標(標章):こちらの記事ご参照。)

 

本件登録商標は,世界的に著名なブランドである「F」の商標であり,D社は,シンガポール共和国,マレイシア,ブルネイ・ダルサラーム国,インドネシア共和国及び中華人民共和国を含む世界110か国において,本件登録商標と実質的に同一の商標を含む一連のF商標について商標権を有していた。 被上告人B1株式会社(以下「被上告人B1」という。)の100%子会社である英国法人E(以下「E社」という。),平成7年11月29日,D社が有する我が国以外のすべてのF商標についての商標権を承継した我が国においては,被上告人B1が,専用使用権を有していたところ,平成8年1月25日,D社から本件商標権の譲渡を受け,同年5月27日,その登録を了して商標権者となった。 」

(BLMとしては、ここで一言。B1の使用権は、専用使用権だったんですねキラキラビックリマーク 商標法25条但書で、専用使用権者は、商標権と同様な独占排他権を有する旨規定されています。専用使用権者には差止請求権が認められる等、通常使用権者や独占的使用権者とは全く異なると言ってもいい、効力が認められていますぶーひらめき電球なるほど、譲渡前からそういう権利を有していたんですね。)

 

「(2) 上告人は,平成8年3月ころから7月ころまで,本件登録商標と同一の第1審判決別紙標章目録一及び二記載の標章(以下,併せて「本件標章」という。)が付された中国製ポロシャツ(品番M1200。以下「本件商品」という。)を輸入し,同年6月以降我が国内で販売した。」

(本件登録商標と同一の第1審判決別紙標章目録一及び二記載の標章:こちらの記事ご参照。)

「本件商品は,シンガポール法人G(以下「G社」という。)が,中華人民共和国にある工場に発注して下請製造させ,シンガポール法人Hを経て,上告人が輸入したものである。 

(3) G社は,D社から,平成6年4月1日から3年間,本件登録商標と同一の商標の使用につき許諾を受けていた(以下,D社とG社間の使用許諾契約を「本件契約」という。)。なお,本件契約上の許諾者の地位は,平成7年11月29日,E社に移転した。 本件契約には,次の条項(以下「本件許諾条項」という。)がある。 

ア D社は,G社に対し,契約地域であるシンガポール共和国,マレイシア,ブルネイ・ダルサラーム国及びインドネシア共和国において,契約品を製造,販売及び頒布し,契約地域内で契約品につき本件登録商標と同一の商標を使用すること等を許諾する。なお,契約品とは,上記商標が付され,D社の仕様に従い製造されたスポーツウェア及びレジャーウェア製品をいう(1条,2条)。 

イ G社は,D社の書面による事前同意なく,契約品の製造,仕上げ又は梱包の下請につき,いかなる取決めも行わないことを約する。G社がD社に対して下請業者に関するすべての関連事実又は事項に関し完全な情報を与えるとともに,下請業者が,本件契約の下で規定される仕様及び品質基準を遵守,履行し,それらに関連するすべての情報を秘密に保持することについて,D社の代理人がチェックするために,D社に対して同じ便宜を与えることを承諾することの約束を下請業者から取り付ける限り,D社の同意が不合理に留保されることはない(4条)。 

(4) 本件商品は,G社が,D社の同意なく,契約地域外である中華人民共和国にある工場に下請製造させたものであり,G社の行為は,本件許諾条項に違反する。 

 

(5) 被上告人B1は,被上告人株式会社B2新聞社発行のB2新聞に,本件商品等が偽造であるなどという広告を掲載し,本件商品等に関し関税定率法所定の輸入禁制品の認定手続の申立てをし,さらに本件商品の販売につき商標権侵害を理由とする告訴を行った。 

 

2 本件は,上告人が被上告人らに対し,前記1(5)記載の被上告人らの行為が営業を妨害し又は信用を害するものであると主張して,民法709条に基づき,損害賠償等を請求したのに対し,被上告人B1が上告人に対し,前記1(2)記載の上告人の行為が本件商標権の侵害に当たると主張して,同条に基づき,損害賠償等を請求する事案である。上告人は,本件商品の輸入がいわゆる真正商品の並行輸入として違法性を欠くなどと主張した。 

 

3 商標権者以外の者が,我が国における商標権の指定商品と同一の商品につき,その登録商標と同一の商標を付したものを輸入する行為は,許諾を受けない限り,商標権を侵害する(商標法2条3項,25条)。

しかし,

【要旨1】そのような商品の輸入であっても,

(1) 当該商標が外国における商標権者又は当該商標権者から使用許諾を受けた者により適法に付されたものであり,

(2) 当該外国における商標権者我が国の商標権者とが同一人であるか又は法律的若しくは経済的に同一人と同視し得るような関係があることにより,当該商標が我が国の登録商標と同一の出所を表示するものであって,

(3) 我が国の商標権者直接的に又は間接的に当該商品の品質管理を行い得る立場にあることから,当該商品と我が国の商標権者が登録商標を付した商品とが当該登録商標の保証する品質において実質的に差異がないと評価される場合には,

いわゆる真正商品の並行輸入として,商標権侵害としての実質的違法性を欠くものと解するのが相当である。

けだし,商標法は,「商標を保護することにより,商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り,もつて産業の発達に寄与し,あわせて需要者の利益を保護することを目的とする」ものであるところ(同法1条)上記各要件を満たすいわゆる真正商品の並行輸入は,商標の機能である出所表示機能及び品質保証機能を害することがなく商標の使用をする者の業務上の信用及び需要者の利益を損なわず,実質的に違法性がないということができるからである。  

 

4 これを本件について見るに,前記事実によれば,本件商品は,シンガポール共和国外3か国において本件登録商標と同一の商標の使用許諾を受けたG社が,商標権者の同意なく,契約地域外である中華人民共和国にある工場に下請製造させたものであり,本件契約の本件許諾条項に定められた許諾の範囲を逸脱して製造され本件標章が付されたものであって商標の出所表示機能を害するものである。 

うーんはてなマークBLMの理解としては、上記判断基準ですと、「当該商標権者から使用許諾を受けた者により適法に付されたもの」という要件に適合しないと、出所表示機能を害する、という関係にあるということでしょうかにやりひらめき電球 (2)の第二要件である内外の商標権者が同一人等であるかどうかは、日本の商標権者が親会社で、海外商標権者は子会社の関係にあるので、満たしており、同一の出所を表示する、ということですかねBLMとしては第一要件と第二要件の違いがわかりません。いずれも出所表示機能の部分を言っているのでしょうか…。本件は、第一要件の使用許諾を受けた者によるものであるが、適法に付されたものではないというところで出所表示機能を害されたと読むのでしょうね…。ここは学説や評釈等で勉強してみたいところです。)

 

「また,本件許諾条項中の製造国の制限及び下請の制限は,商標権者が商品に対する品質を管理して品質保証機能を十全ならしめる上で極めて重要であるこれらの制限に違反して製造され本件標章が付された本件商品は,商標権者による品質管理が及ばず本件商品と被上告人B1が本件登録商標を付して流通に置いた商品とが,本件登録商標が保証する品質において実質的に差異を生ずる可能性があり,商標の品質保証機能が害されるおそれがある。 

うーんはてなマークBLMの理解として、上記第三要件のうち、「当該登録商標の保証する品質において」とあるので、そもそも、保証する品質がどのようなものか、商標権者等の下で決められており、管理されていなければ成り立たない要件だと思います。その上で、「我が国の商標権者が登録商標を付した商品」が流通しており、そこに、並行輸入品が入ってきた場合に、「実質的に差異がない」ということが言えるかが問われるのでしょう。ニコひらめき電球

 

「したがって,このような商品の輸入を認めると,本件登録商標を使用するD社及び被上告人B1が築き上げた,「F」のブランドに対する業務上の信用が損なわれかねない。また,需要者は,いわゆる並行輸入品に対し,商標権者が登録商標を付して流通に置いた商品と出所及び品質において同一の商品を購入することができる旨信頼しているところ,上記各制限に違反した本件商品の輸入を認めると需要者の信頼に反する結果となるおそれがある。 

 

【要旨2】以上によれば,本件商品の輸入は,いわゆる真正商品の並行輸入と認められないから,実質的違法性を欠くということはできない。

また,輸入業者は,輸入申告の際に輸入商品の製造地を明らかにする必要があるから(関税法67条,関税法施行令59条1項2号),外国における商標権者自身ではなく,同人から使用許諾を受けた者が我が国における登録商標と同一の商標を付した商品を輸入する場合においては,少なくとも,使用許諾契約上,被許諾者が製造国において当該商品を製造し当該商標を付することができる権原を有することを確認した上で当該商品を輸入すべきである。上記義務を尽くした上で本件商品を輸入したことの立証のない上告人につき,過失の推定(商標法39条において準用する特許法103条)を覆すことはできない。 

 

5 以上によれば,上告人の本件商品の輸入販売行為が本件商標権を侵害するとして,上告人の請求を棄却し,被上告人B1の請求を一部認容すべきものとした原審の判断は,正当として是認することができる。論旨は採用することができない。 」

 

BLMの感想

 なるほど、BLMの感想、理解、疑問は以上の水色文字部分の通りですが、本件最高裁判決、これまで読んだつもりでいましたが…よく理解していませんでした。今回読んでみて、我国商標権者が、登録商標を付した商品の品質をどのように設定して、どのように管理していくかを決め、その品質の管理を具体的に実行する、ということがなされていないと、本件最高裁の判断の射程には無いかな、とも思いますね。そもそも、そういう品質管理がないと、国内外で周知・著名なグローバルブランドは育たないのでしょうキラキラビックリマーク

 

さて、お疲れ様でした。南青山で有名な和菓子屋「菊家」さんの和菓子をどうぞ。秋のお菓子で、緑の葉が秋色もみじに色づき始める感じを表現していると思うのですが、ここ数日の寒さ、一気に冬ですねぼけーくもり台風雨 あったかいお茶でもお飲みになり🍵、ご自愛くださいニコビックリマーク

 

 

By BLM

 

 

 

 

 

 

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