無機ナノシート関連特許その28は、無機ナノシートの具体的な応用に関する特許を取り上げます。具体的には、電子部品に無機ナノシートを応用した特許です。

◆どんな特許か?
 『セラミック電子部品およびその製造方法、ならびに電子装置』という発明の名称の特許出願(特開2019-083315、出願人:三星電子株式会社、国立研究開発法人物質・材料研究機構)が取り上げる特許です。サムスンと物材研の共同出願になっています。まだ出願された状態のままで、ブログ執筆時において審査請求はされていません(出願中の状態です)。

 セラミックを用いた電子部品には圧電素子やコンデンサ等様々なものがありますが、電子機器の高機能化・高性能化、小型化の要求に伴い、そういった電子部品の高性能化、小型化の要求も高まっています。今回の特許は、そういった観点から『高い信頼性を有しながら小型化および高容量化を実現することができるセラミック電子部品を提供すること』を目的としてなされています。

 請求項1、12を引用します。
【請求項1】
  互いに対向する一対の電極と、
  前記一対の電極の間に位置し複数のセラミックナノシートを含む誘電体膜と、
を含み、
  前記複数のセラミックナノシートは、互いに分離された少なくとも2つのピークで表される面方向大きさの多峰性分布を有する、セラミック電子部品。



【請求項12】
  前記セラミックナノシートは、セラミック粉末から剥離された構造体である、請求項1~11のいずれか1項に記載のセラミック電子部品。


 一対の電極の間にセラミックナノシートを含んでおり、このセラミックナノシートの特徴を請求項1では規定しています。また、請求項12を見ると、セラミックナノシート(つまり、無機ナノシート)は、剥離により得られる無機ナノシートであることが分かります。

 実際、上記公開公報の段落[0067]には『インターカラントは、層状プロトン交換セラミック粉末の層の間に挿入されて、セラミックナノシートに容易に分離されるようにする。効果的な剥離のために、遠心分離、超音波またはこれらの組み合わせを行うことができる。』と記載されているので、層状無機化合物の層間にゲスト分子をインターカレーションさせて、層状無機化合物を膨潤させ、無機ナノシートを単層剥離させているということになります。

 そして実施例では実際に無機ナノシートを用いて作られたキャパシタの例が記載されており、従来より静電容量や見かけの誘電率が高くなることが記載されており、無機ナノシートを用いることの優位性が分かります。

◆無機ナノシートはナノ工場の材料??
 無機ナノシートは、層状無機化合物を構成する最小の単位である「1層」のことを言うので、その厚さは0.5nm~3nmと非常に薄い一方で、平面視におけるサイズ(横のサイズ)はμmオーダーにもなるアスペクト比の高い材料です。

 そのため、1層1層のナノシートを用い、『レゴブロックのように積み重ねるだけで層間の相互作用や電子状態を自在に制御できるため、新しい機能材料の設計・構築手法』として注目されています(「二次元物質の科学」(日本化学会編)、化学同人、p43)。

 無機ナノシートの母材料としては様々な特性を有する層状化合物があるので、そういった層状化合物を、いわば、1枚1枚のブロックとして準備し、各ナノシート間の相互作用や電子状態等をどのようにしたいのかを考えて積み重ねることで、ナノの世界で様々な「部品」が作れるということになります。

 ナノオーダーでの「ものづくり」において、無機ナノシートは欠かせない材料になるかもしれません。


 by KOIP

 

 

 

 

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