昨日は敬老の日でした。一昨日、本当に久しぶりにBLMの実家に帰り(東京都内の行き来ですが)、夫婦で、夕飯をご馳走になって帰ってきましたほっこりあせる 両親は、けっこう高齢者と言っても差し支えないのですが、二人とも元気なもので、まだ甘えてしまいますねキラキラ汗イヒ汗ウシシ汗“敬老の日”って言うけど、老人から敬われる日となっている人いませんか? ってワタシでしたおーっ!ビックリマーク

 

 ミルクティーと豆大福。頭に糖分を注入して、今日も判決文読みます。

(Photo by BLM)

 

 ただ今、茶園成樹先生の『不正競争防止法第2版」(有斐閣)を読んでいるのですが、このところずっとこだわっている問題に絡み、29頁の「周知性の承継」についてまずは確認。

 まず、「周知な商品等表示を有する企業が会社の組織変更や合併等の形式的な法人格の変更を行った場合、周知性は新会社に承継され、新企業が1号による保護を受ける」としています。学説・判例上争いはないように思いますが、茶園先生が引用している判決を今日はまずみていきます。

 

山形屋事件 東京地裁昭和38(ワ)10281 昭和40年2月2日判決

(判決文は、LEX/DBインターネットデータベースより引用。「」内は引用、それ以外はBLM任意に抽出しまとめています。太字・着色・改行はBLM。)
 

原告 株式会社山形屋海苔店
被告 株式会社山形屋

 

「主文

一、被告は、海苔及びその加工品の販売につき、「株式会社山形屋」の商号若しくは「山形屋」の表示を使用し、又は右商号若しくは表示を使用した商品を販売、拡布若しくは輸出してはならない。

二、被告は、昭和二十九年十月二十七日東京法務局杉並出張所においてした登記のうち、同年六月十九日、商号を「株式会社山形屋」と変更した旨の登記の抹消登記手続をせよ。」


理由

(原告の商号等とその周知性について)

「一、原告が、昭和二十三年十一月二十五日、原告主張の商号、資本金、目的をもって設立されたこと並びに昭和三十三年十一月二十四日,商号を、その後、資本金を、それぞれ原告主張のとおり変更した」。

 「原告会社は、その設立に当り、当時、原告会社の代表者窪田甚之助(三代目)が代表者であった合資会社山形屋窪田商店の営業一切を事実上承継し、ただ、その形体を合資会社組織から株式会社組織に変更したにすぎない」。「その商号とは別に、屋号ないしは営業の表示として、合資会社時代と同様、「山形屋」の標章を用い、従前と同一場所において、同一商品にその標章を表示して販売しているものであること並びに、前記合資会社山形屋窪田商店が、設立当初から使用していた「山形屋」という標章は、その代表者窪田甚之助の先代(二代目窪田甚之助)及び先々代(初代窪田甚之助)が個人経営の海苔店の商号として、明治二十七、八年頃以来使用していたものであり、その営業の発展とともに、個人経営の時代から、海苔の販売については、すでに海苔業者及び一般需要者間に広く認識され、今日に至ったものである」。 

 被告は、この点に関し、被告は、昭和二十二年四月頃から「山形屋」の標章を(ただし、株式会社黒須商店設立までは被告の前身である黒須重吉個人経営の営業の商号として)、善意で、使用したが、当時は、「山形屋」という標章は、原告会社のそれとして周知ではなかったから、不正競争防止法第一条の規定により、その使用等を差止められるいわれはない旨抗争するが、被告主張の昭和二十二年四月当時、「山形屋」という標章は、前記合資会社山形屋窪田商店の標章として、海苔の販売に関し、広く認識されていたこと及び原告は、その設立に当り、右標章を含む営業一切を、事実上承継し」、「このような事実関係のもとにおいては、原告は、他の要件を具備する限り、なお、不正競争防止法第一条の第一、二号の規定に基づく請求」でき、「被告の右主張は、被告の使用が善意であったかどうかを判断するまでもなく、理由がない」。

「また、被告は、原告会社は、窪田甚之助個人及び合資会社山形屋窪田商店とは法律上人格を異にし、しかも、それらの商号、標章等を法律上継承した事実はないのであるから、窪田甚之助個人又は合資会社時代の事実をもって被告に対抗しえない旨主張するが、不正競争防止法の前記法案の趣旨とするところは、実質的取引通念において、一般取引者及び需要者により、商品の出所ないしは営業の主体が事実上、混同されることを防止するにあるものと解されるから、合資会社山形屋窪田商店と原告とが、法律上、人格を異にしているとか(両者が人格を異にすることは、いうまでもない。)、その間に標章等の法律上の承継がなかったとか(法律上の承継という語自体、その意味するところ、必ずしも明確ではないが、)いうようなことは、いささかも前記認定に影響を及ぼしうべきものではない。けだし、海苔及びその加工品の販売について、一般取引者及び需要者が、その商品の出所又は営業主体が個人であるか、会社であるか、会社としてどの種類の会社であるかなどということに特段の注意を示し関心を寄せるとは今日の社会通念では、到底考えられないからである。」

 

「(被告の商号及び標章について)

二、被告が昭和二十二年十一月五日、商号を株式会社黒須商店、目的を茶、海苔の販売として設立されたが、昭和二十九年六月十九日、その商号を現在の「株式会社山形屋」に改め、目的も、茶、海苔の販売その他これに付帯する事業と変更したこと及び被告会社は、その商品に、「株式会社山形屋」の商号、あるいは、「山形屋」の表示を使用している」。

「標章等の類似性」及び「商品又はその営業施設等の混同」について認めています。

 

 (財産上の損害を豪る虞について)

「五、被告が海苔及びその加工品の販売について前記商号及び表示を使用することにより、被告の商品が原告のそれと混同され、その結果、原告の営業上の利益が害される虞のあることは証人辺田鎮信の証言、原告代表者本人尋問の結果及び本件弁論の全趣旨に徴し明らかということができる。」

 

(商号の抹消について)

「六、以上説示のとおり、本件において明らかにされた事実関係のもとにおいては、不正競争防止法第一条第一号の規定に基き、海苔及びその加工品の販売につき被告の前記商号の使用禁止を求める原告の請求は、理由がある」。「その使用禁止の実効あらしめるため、被告は、その使用する前記変更にかかる商号の抹消登記手続をする義務がある」。この商号を抹消するのでなければ、その使用を禁止しても、商号が商品の出所を表示するものとして使用される場合の少くない今日の取引の実情を鑑み(このような使用形体の少くないことは、社会通念上明らかである。)到底、その実際上の効果を期待しうべくもないからである。」

 

 

茶園成樹先生の『不正競争防止法第2版」(有斐閣)29頁の「周知性の承継」

 さて、上記は問題のない事例として紹介されていますが、上記「海苔及びその加工品の販売について、一般取引者及び需要者が、その商品の出所又は営業主体が個人であるか、会社であるか、会社としてどの種類の会社であるかなどということに特段の注意を示し関心を寄せるとは今日の社会通念では、到底考えられない」との理由について、にやりひらめき電球BLMの感想を入れておくと、要するに、需要者の視点で、従前と同一場所において、同一商品にその標章を表示して販売し、需要者においては提供される品質等が変わらなのであれば、周知性の承継は認められるとも解釈しうる。つまり、事業承継でなくとも、同じ状態が担保されればいいよ言うことでもあるように思えるが…。どうだろうぶーはてなマーク

 では、事業の承継(又は営業譲渡)を伴わない場合はどうか?茶園先生によれば「周知な商品等表示を譲り受けた者が周知性を承継するかについては、裁判例は、当該表示に係る事業の承継があった場合を除き、否定的に解しており、学説の多くも同様である」とし、その理由として、「1号が保護するのは周知な商品等表示に化体された譲渡人の事業の信用であり、それと異なる譲受人の事業を保護する必要はなく、また登記や登録制度がないために、周知性の承継を認めると、二重譲渡の場合に混乱が生じる恐れがあること等が挙げられている」と説明されておられます。

 

 なお、事業の承継があった場合については、花ころも事件(東京高判昭和48年10月9日)、公益社事件(大阪地判昭和53年6月20日)等を挙げておられます。花ころも事件は以前に本ブログで検討しました。

 公益社事件については、判決文中「ところで、一般に不正競争防止法一条一項二号所定の営業表示(本件では原告の「株式会社公益社」なる商号等)が自社の創始したものではなく、他からその営業とともに譲渡を受けたものである場合において、当該表示の周知性の存否(「本法施行ノ地域内ニ於テ広ク認識セラルル」ものであるか否か)を検討するさいには、場合により前主すなわち営業表示譲渡人が当該表示を使用していた当時の使用状況(広告等の規模程度)等をもあわせ考慮することもできると解するのが相当である(前法条の適用除外例を定めている同法二条一項四号がいわゆる旧来表示の善意使用者について同旨の使用承継を認める建前をとつている点も参照)。」と判示しています。

 そして本件に当て嵌め、「「旧公益社」は昭和三八年前記のような事情によりその中心的営業である葬祭請負業とともにその営業表示一切を原告公益社にそのまま譲渡したものであることが明らかである(これに対し、さらにさかのぼつて、はたして「旧々公益社」が「旧公益社」の営業表示について前示のような趣旨での前主であつたかどうかは若干の疑念が存する。けだし、戦時の特殊な情況があつたとはいえ、「旧公益社」は当初は「旧々公益社」の商号等をそのまま承継使用せず、「公営社」なる商号をもつて発足しており、事実上「公益社」の商号等を復活させたのは終戦後であつて、右復活のさいの承継関係も必らずしも明らかでなく、またその時点に葬儀請負営業自体がそのまま承継譲渡されたものともいえないからである。)。」とし「本件では原告公益社の商号等の周知性存否については前主「旧公益社」の使用情況等も考慮して検討する」として、本題に入っていきます。

 なるほど、事業の譲渡(営業譲渡)とは、こういうものとの厳格な基準はないようですが、承継関係が明らかなことが必要なようです。ただ、これは営業表示の事例であるようで、商品表示の場合は、どうなってくるのか、疑問は残ります。今日はこの辺で。

 

by BLM

 

 

 

 

 

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