アート関連特許その19です。今回は物理現象を利用したがインスタレーションアートに関する特許を取り上げます。
◆どんな特許か?
『3次元ファセット発光源装置および立体発光源装置』という発明の名称の特許(特許第5124625号、特許権者:財團法人工業技術研究院 ←台湾最大の産業技術研究開発機構です。)が対象です。名称だけからはアートに関係あるかどうか、すぐには分かりません。
まず、請求項1を引用します。
『 第1サイド、第2サイドおよび密閉空間を有する透明容器と;
前記第1サイドに配置されるアノードプレートと;
前記第2サイドに配置されるとともに、前記アノードプレートに対向して前記透明容器中に位置するカソードプレートと;
前記アノードプレートおよび前記カソードプレート間に配置され、それぞれが蛍光層を有する、複数の透明板と;
前記密閉空間に充填されて前記カソードプレートから発射するように電子を誘導し、そのうち前記電子が前記透明板と平行な方向へ飛行するとともに、前記各蛍光層を打撃して発光し、1組の3次元ファセットパターンを形成する、低圧ガス層と
を備える3次元ファセット発光源装置。』
構成は言ってみれば蛍光灯のようなものですが、容器内にガスを充填し、その容器内のアノードとカソードとの間に蛍光層を有する複数の透明板が設けられており、カソードから放出される電子がこの透明板に平行方向に移動するとともに蛍光層に当たってそこが発光するようにしている装置が発明になっています。
ちょっとわかりにくいので上記特許の特許公報の図1を引用します。
(上記特許の特許公報の図1を引用)
図1中、102が「透明中空柱体」、110が「アノードプレート」、120が「透明板」、122が「蛍光層」、130が「カソードプレート」、140が「低圧ガス層」です。
普通の蛍光灯と同じように、透明な筒内に所定のガスが充填されると共にアノードとカソードがあります。そして、蛍光灯では筒内表面に蛍光物質が塗布されていますが、この特許では筒内に複数の透明板を設け、この透明板の表面に蛍光層を設けています。
この特許では、透明板に設けられた蛍光層を構成する蛍光材料に応じ、所定の波長の可視光が放出されます。図1に示すように複数の透明板が間隔をおいて配置されており、各透明板に設ける蛍光層の材料や配置方法をいろいろと調整することで、透明中空柱体102自身が、ある形態を有して発行する、ということになります。
上記特許の特許公報の段落[0016]には、『各蛍光層122のパターンは、ある実際的な必要性に従って設計(例えば、銀河系マップ Milky Way galaxy mapとして設計)され、スクリーン印刷またはスプレー(spraying)を介して透明板120上に直接プリントできる』と記載されているので、立体的であり、輝く銀河系を間近で見ることができそうです。
◆協創の場
今回の特許に係る発明が初めからインスタレーションアートのために創出されたのか、あるいは3Dディスプレイの開発やその他の発光装置に関する開発から派生して創出されたのか分かりません。
しかし、どのような経緯で発明されたとしても、ある物理現象や、ある技術を人間が知覚できるカタチにし、そのカタチがアートにつながっているところを見ると、技術開発若しくはアートにおいて技術者とアーティスト(芸術家)とが協創することができるような「場」を創ることができれば、多数のイノベーションの種が生まれるのではないかと考えてしまいます。
台湾の財團法人工業技術研究院がそういう場なのか分かりませんが、異分野・他分野の人々が協創する「場」が、閉塞感ある空気を打ち破る一つの処方箋かもしれません。
by KOIP
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