無機ナノシート関連特許その18です。今回はコーティング剤に無機ナノシートを応用した特許の例です。
◆どんな特許か?
発明の名称を『光触媒塗膜形成用コーティング剤、及び光触媒塗膜形成方法』とする特許(特許第5148901号、特許権者:東海旅客鉄道株式会社)が取り上げる特許です(ただし、現在、権利は年金不納により抹消されています。)。
従来の光触媒は可視光や弱い紫外線では光触媒活性を示さず、また、膜状にした場合に車両用の窓ガラス等には適さない程度の密着強度や硬度しか得られない状態でしたが(上記特許の特許公報の段落[0002]等)、この特許では無機ナノシートを用いることでそれらを克服しています。
それでは、請求項1を引用します。
『鱗片状の酸化チタン微粒子と、
含硫黄化合物と、
を混合して成るコーティング剤。』
非常に簡潔な請求項になっています。発明特定事項の一つである「鱗片状の酸化チタン微粒子」が無機ナノシートです。
上記特許の特許公報の段落[0007]に『塗膜1の中で、鱗片状(シート状)の酸化チタン粒子5が一定の配向性をもって積層した微細構造を有し、平滑性が高い。そのため、高い平滑性と密着性を持つ塗膜を形成できる。そして、塗膜の平滑性が高いことにより、塗膜の表面積が小さくなり、塗膜への汚染物質の付着量が少なくなる。そして、たとえ汚れが塗膜の表面に付着しても酸化チタンの光触媒活性および超親水性により汚れの分解・除去が可能である。更に、塗膜硬度も高い。』と記載され、上記課題を克服できることが示されています。
特許公報の図1を引用します。
(上記特許の特許公報の図1を引用)
ナノレベルの無機ナノ―シート(シート状酸化チタン)が基板表面に平行に多数、配向しています。これであれば、表面の硬度も高くなり、表面に汚れがついても容易に除去できます。
◆どこに応用されていそうか?
上記特許はどこに応用可能でしょうか?
特許権者は、JR東海です。とすると、電車の窓、例えば、東海道新幹線の窓ガラスに応用されているのかもしれません。
電車の窓を見ると、鱗状の痕が付いているのを見ることがあります。また、浴室の鏡等にも同様の痕が付いていることが多いと思います。この痕は、水に含まれているケイ酸塩等が析出してこびりついたものです。濡れたガラスや鏡表面をすぐに乾拭きすれば析出しませんが、放っておくと析出し、それが繰り返されることで頑固な汚れになっていきます。
浴室等であれば、まぁ、爪でカリカリすればいいかで済みますが(というか結局、掃除しなければなりませんが)、電車の窓、それも車窓からの風景を楽しむことが意図されている車両の窓で鱗状痕があったりするのはよろしくありません。
そこで、JR東海などでは定期的に車両を清掃しているはずですが、それでも一編成の車両には非常に多くの窓ガラスがあるので、清掃が楽になるのに越したことはありません。
そういった窓ガラス等に上記特許は応用可能だと思います。つまり、上記コーティング剤で窓ガラス表面をコーティングすれば、汚れが付きにくく、汚れが付いたとしても光触媒機能により汚れを分解・除去しやすくなります。どの程度のコストか分かりませんが、安価であれば一般家庭用に販売しても需要はあるのではないかと思います。
by KOIP
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