アート関連特許のその5です。アート作品作りには様々な技術を応用できますが、中小企業が有する技術をアートに応用することもできそうです。
そのような特許を見つけました。
◆どんな特許か?
パンチングアートというものがあります。金属板に穴をあけて創るアートです。そのパンチングアートに関する特許(特許3009656号)があります(なお、本特許は年金不納により権利が消えています。ただし、そもそも出願が1998年なので、仮に年金を納めていたとしても、出願から既に20年を経過している現時点では権利はなくなっています。)。
その請求項1を見てみます。
『平面的表現のパンチングアートを施した金属製板材をレーザー加工機によって輪郭に沿って或いは所望の形に切り抜いたものを部材とし、これら複数の部材を立体的に結合固定し、パンチング加工による表現とレーザー加工機による切り抜き加工を融合させることによって、パンチングアートを立体的造形物として表現したことを特徴とするパンチングアートによる立体的造形物。』
つまり、まず、パンチングアートが施された金属板から所定形状の部材をレーザ加工機により切り出します。そして、複数の部材を組み合わせて所定の立体形状のパンチングアート作品を創る、という発明です。
上記特許の特許公報の段落[0018]に『レーザー加工機によりパンチングアートの表現を正確に切り抜いて立体的造形物の部材とすることができ、きわめて興趣の高い立体的なパンチングアート造形物を作成できる』と記載されているように、1998年当時において、精密加工ができるレーザー加工技術を用いて輪郭が切り抜かれた部材(パンチングアートが施された部材)を用いると共に、その後、複数の部材を組み合わせて立体化するという点において、特許性が認められたのでしょう。
例えば、以下のようなもの(オベリスク(尖塔)の形状を有する立体的オブジェ)ができ上ります。
(上記特許の特許公報の図1を引用)
推測ですが、パンチングアート自体を自社製品にするというよりも、優れた加工技術が自社に存在することを一般の人々にもわかりやすくするために、パンチングアートのカタチとして世の中に出したのではないでしょうか?(わかりませんけれども。)ちなみに、株式会社榮光工業さんのHPには、『「鉄板×アート」の新技術で特許取得 パンチング加工のアートオブジェで『ぢばさん大賞産業賞』を受賞』と記載されています。もしかしたら、初めからアート思考だったのかも
?!
なお、株式会社榮光工業さんのHPを拝見すると、レーザー加工や板金・プレス加工、溶接、機械加工等、様々な加工技術を得意としているようです。そして、面白いのはそのHP!社員さんがダンスをしています!同社のHPにアクセスすると、初めは荷物を運んでいる動画かなぁ~と思ってみていると、いきなりダンスを始めます!その後も仕事をしていると思っていたら、様々な社員さんがダンスを始めます。様々な中小企業さんのHPを見てきましたが、このように面白い中小企業さんもあるのですね
。
◆特許の「年金」とは?
さて、上記で「年金不納」と記載しましたが、「年金」とは何かというと、特許権を維持するために特許庁に納めるお金のことです。基本的に、毎年納める必要があります(数年分まとめて納めることも可能)。特許において「年金」は、自分がもらえるものではなく、特許庁に納める必要があるお金のことを指します。
この特許料を支払わないと、特許権は消滅します。したがって、重要な特許であれば権利の存続期間まで支払いますが、技術が陳腐化し、ビジネスにもあまり貢献しない(若しくは全然貢献しない)ようになった特許の場合は、特許料の支払いをやめることもあります。
ちなみに、平成16年(2004年)4月1日以降に審査請求をした出願の特許料は以下の通りです。
第1年から第3年まで:毎年 2,100円+(請求項の数×200円)
第4年から第6年まで:毎年 6,400円+(請求項の数×500円)
第7年から第9年まで:毎年 19,300円+(請求項の数×1,500円)
第10年から第25年まで:毎年 55,400円+(請求項の数×4,300円)
(ただし、第21年から第25年については、延長登録の出願があった場合のみ)
この様に、年々、特許料は高くなっていきますので、特許権を多数保有している企業では、どの特許がビジネスに貢献し、どの特許が貢献しないかを見極め、特許の棚卸しをしたりします。使わない特許に特許料を支払い続けるのは、費用が無駄になってしまうからですね。
by KOIP
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