今日は、 令和2年4月1日以降の出願に適用される「意匠登録出願の願書及び図面等の記載の手引き(以下「手引き」という。)」をざっとみていく。この手引きは、特許庁が、願書及び図面等の記載方法を解説したガイドラインを平成3年に公表したのが始まりで、平成20年に、かかる手引きとして公表され、その後幾度か改訂等を経ている。

 なお、他に特許庁が発行しているものとして、登録要件の詳細な内容は「意匠審査基準」があり、手続きに必要とされる所定の様式等については「意匠登録出願等の手続のガイドライン」がある。意匠法の条文は短い。日本の意匠登録前の手続については、これらの3つを参考にしながら進めていくしかない。一方、意匠権の効力については、学説・判例を研究する必要があるだろう。

 

 さて、「手引き」は、今回190頁になっているアセアセビックリマーク 

 今日は、目次に従って、 『第1部 出願意匠の表し方基本』を少し概観する。えー?うーんビックリマークニコひらめき電球 (『』内は「手引き」からの引用。)

 

1.願書の記載の基本

 願書には、出願人や創作者の名前の他、重要な項目として、【意匠に係る物品】【意匠に係る物品の説明】【意匠の説明】の

3つがあり、ここでは、基本的な事項が書かれている。

 

 改正に絡んで、『意匠に係る物品』には、『意匠に係る物品又は意匠に係る建築物若しくは画像の用途』を記載すると書かれている。(着色・太字:BLM) 建築物や画像以外の場合は、これまで通りということになるだろう。なお、「組物の意匠」「内装の意匠」の書き方についても注意が必要だ。

 

 また、 【意匠に係る物品の説明】には、、『その物品、建築物又は画像の使用の目的、使用の状態等、物品、建築物又は画像の理解を助けることのできるような説明を記載』するが、『出願時にすでに一般名称として普通に使われており、使用の目的、使用状態等が明らかであるものについては、それらの記載は不要』とされる。ここでも、今回の改正で入った建築物又は画像に関して注意が必要だ。BLMの見解だと、不要かどうかは不安なときは記載した方がいいように思うが、書きすぎて権利行使段階で不利とならないよう注意が必要である一方、我が国意匠法は物品要件が結局外れていないので、機能や用途を限定的に記載していくことで、創作容易とされるリスクを多少回避できる場合もあるように思う。

 

 さらに、【意匠の説明】には、『物品の材質又は大きさ』((意6条3項)、『形状等が変化する場合に、その変化の前後にわたる形状等』について『その旨及び当該機能の説明』(意6条4項)、『透明である場合は、その旨』(意6条7項、様式2備考43)等、特にこれまでと変わらないだろうが、これは有り得る?!と思う例示を一つ以下に挙げてみる。

『・「ハンドバッグ」の意匠で、「材質は、軟質ビニールまたはステンレス板である。」等のように、材質の列記がその意匠の属する分野の常識から複数の異なる意匠を想起させ、その結果、多意匠と認識されるような記載』は、拒絶の理由になる。

 要するに、図面と整合していなかったり、図面の記載からかけ離れてしまったりするとダメよ、ということだと思うニコひらめき電球

 

 

2.図面の記載の基本

 

A.形状等の特定に必要な図について

 

 BLM私見では、欧州等のように、今回の改正で、図面の記載の簡素化が図られると思ったのだが、基本的には、これまでと変わらないと思う。余りに不必要な断面図(例えば以前は、テレビの断面図を要求したりと)の要求が無くなったと思うし、さらに、省略できる図面も増えたように思うが、原則として、正投影図法で、正面図、背面図、左側面図、右側面図、平面図及び底面図をきちんと出しておいた方が安心。物品要件が強く支配している限り、変わらないのだろうなと思う。

 

 

 上記は、「手引き」15頁『〔図1.2-1〕立体物の各面を正投影図として描いた例』より引用。

 

 上記の図法の他、『等角投影図法』『斜投影図法』等の例があるのが、ここでは省略する。

 

 なお、ハンカチが典型例だが、『意匠が平面的なもの(シート状の形状等)の場合には、各図同一縮尺で作成した表面図及び裏面図』が認められる。 ただし、これは『一枚構造であって厚みが極めて薄いものに限られ』、『一枚構造でないものは、例えば封筒のように厚みのない場合であっても、立体物として表』す。一枚構造とそうでないものの例は以下(いずれも、「手引き」23頁より引用)。

 

 「手引き」24頁以降は、 『2A.5 その他の図の作図』となっているが、正投影図法を基調に6面図を用意した場合(その他の図法も同様)、『各面に凹凸がある等のため、その形状等を十分に表現できない場合があり』、『出願意匠の多様な形状等に合わせて、【展開図】、【断面図】、【切断部端面図】、【拡大図】、【斜視図】等を加えて特定の形状等を十分表現』する必要がある。以下は「手引き」24頁より引用したものだが、このように6面図だけでは、色々なパターンが導かれてしまうというわけだ。BLMとしては、少なくとも斜視図は入れておきたいところだにやり汗

 

 以上の他、『模様』の画き方、『断面図』の描き方、『拡大図』の描き方、『斜視図』の描き方が細かく書かれているので、こちらは、今日は省略するが、出願時に、個別具体的に参照するのが望ましい。

 ちなみに、BLM私見では、一番困るのは、『開閉部を有する場合、分離する場合、形状等が変化する場合等』だ。無視して静的な意匠で表わすか、動的な意匠で表わしておくか、類否判断も考えると前者の方がいい場合もあるし、動的な意匠を表わすことで初めてその意匠の良さを表現できる場合もある。悩ましい。うーんえー?!?おーっ!ビックリマーク

 「手引き」36頁には、『①開閉部を有し開いた状態の形状等を表す場合分離した状態(分離した各部分の形状等)を表す場合は、【扉を開いた状態の斜視図】【雄部正面図】【雌部正面図】等、必要とされる形状等を表す図を加え』る旨、『②形状等が変化する場合において、その変化の前後にわたる形状等を意匠登録出願する際は、【変化の途中の状態の斜視図】【変化をした状態の斜視図】【通電状態の正面図】等の図を加え、変化の態様を明らかに』する旨が説明される。詳細は、別章にあるが、今日はこの程度で。

 

B.意匠の理解を助けるための図及び透明部等を示す図(参考図)について

 

 『6面図等の他に、物品の説明や透明部を示すために補足的に図を用いる必要がある場合は、参考図を加え』る。

 BLM私見では、参考図は必ずといっていいほど入れるような気がする。正直、参考なので、意匠権の効力からは外れてしまうので、権利の範囲の解釈において、どのように機能するか解らない。しかし、立体的な物品の意匠を二次元で、しかも線図等限られた表現で表わす場合は、表現しきれないこともあると思うので、参考図で、説明するのは重要な気がする。特に使用状態を示す参考図等はBLMとしては、よく入れる。

 

 『参考図には、各部の機能等を示す図、物品の使用目的・方法を示す図、透明部又は透光性部を示す図等があり』、「そして、これらの参考図は、意匠登録出願の意匠の形状等そのものを表す図ではないので、図形の中に、中心線、基線、水平線、影を表すための細線又は濃淡、内容を説明するための指示線、符号又は文字その他意匠を構成しない線、符号又は文字を記入することができ』る。

 『参考図として表された図については、意匠に係る物品の材質、大きさ、透明箇所、使用の目的、使用の状態等の理解の点において、出願の意匠の認定の基礎とし』、『一方、六面図及びその他必要な図に表されたものと異なる形状、模様又は色彩が表されている場合には、それら異なる要素そのものを、出願の意匠の形状等に係る認定の基礎とはしません』とされる。

 そうすると、やはり入れた方がいいということだなうーんえー?!?キラキラひらめき電球 例えば以下。

手引き」46頁より引用。

 

 以上の他、『C.図面代用写真』『D.見本、ひな形について』の記載があるが、今日は省略。基本的な考え方は、図面の考え方と変わらないと言えるだろう。

 

 今日はここまで。

 

by BLM

 

 

 

 

 

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