パソコン事業を行っているVAIOがドローン市場に参入するそうです(→記事はこちら)。
パソコン事業なのにドローン市場?とも思うのですが、入力されたデータを処理して出力する点や、CPUの排熱処理・省電力処理などはドローンにも応用できます。実際、上記記事においても『ドローンはコンピューティング技術の塊』と指摘しており、『われわれはドローンを、VAIOが持つパソコン技術の発展領域ととらえています』と記載されています。
このように既存技術をこれまで事業を行ってきた分野とは異なる分野に適用することは、特許になるかどうかは別として、新たな発明が生まれてくる土台になります。
◆発明はどうやって生まれてくるか、その一例
現代では、ほとんどの場合、何もないところから生まれてくる発明はまずありません。必ず、何らかの技術を土台にして生まれてきます。
しかも、新たに創出される発明のほとんどは既存技術の組み合わせで創出されます。この組み合わせが「新たな」ものである場合、特許になる確率が高まります。
そういった例を身近なもので見てみましょう。
◆プリザーブドフラワーの特許の例
「プリザーブドフラワー」という、自然の花を特殊な液の中に沈めて水分を抜いたものがあるそうです。そして、「プリザーブドフラワー」関連で、例えば「プリザーブドフラワーの製造方法」という特許(特許第6496073号)があります。
その請求項1を見てみましょう。
『紫外線硬化樹脂によって硬化されたプリザーブドフラワーの製造方法であって、
前記プリザーブドフラワーに、紫外線散乱作用および/ または紫外線吸収作用を有する成分を照射される紫外線に対して退色を防止する有効量で含有する退色防止剤を塗布する工程と、
前記退色防止剤を塗布した部分に紫外線硬化樹脂を塗布する工程と、
前記紫外線硬化樹脂を塗布したプリザーブドフラワーに紫外線を照射して前記紫外線硬化樹脂を硬化する工程と、
を有する、製造方法。』
この特許は、プリザードフラワーに紫外線硬化樹脂を塗布し、紫外線を当ててこの樹脂を硬化させると、紫外線により花の色が落ちてしまうという問題があったので、この問題をどうにかしたいと考えてなされた発明です。
ポイントは、プリザードフラワーに紫外線硬化樹脂を塗る前に、「退色防止剤」、つまり、色落ちを防止する薬品をプリザードフラワーに塗る、という点です。
この特許の出願当時、ブリザードフラワーは既に世の中にありましたし、退色防止剤自体もよくある薬品ですが、それでも特許になっています。なぜでしょうか?
◆新規な課題、そして既存技術の新たな組み合わせ
上記のように、プリザードフラワーの技術分野において、紫外線照射によるプリザードフラワーの色落ちという課題を見出した点がまず重要です。
従来は、プリザードフラワーに紫外線を照射して色落ちしても「しょうがないよね」で済ませていたのかもしれません。しかし、この色落ちを「何とかしてなくしたい!」と明確に認識できるか否かがまず、発明創出への途の第一歩です。
その上で、課題をどう解決するか?を考えることが発明創出につながります。
上記特許の例でいえば、プリザードフラワーと退色防止剤、及び紫外線硬化樹脂の組み合わせは上記特許の出願時には世の中にありませんでした。つまり、発明を構成する要素のそれぞれがたとえ既存技術であったとしても、既存技術同士の組み合わせがこれまでにない新しい組み合わせである場合、特許になり得るのです。
したがって、見出した課題を解決するために画期的な新技術を創り出してやろう!と考えることもよいのですが、それだけではなく、既存技術の新たな組み合わせで何とかできないか?と考えることも重要です。
◆組み合わせはなるべく遠い分野から
なお、特許化の観点からは、既存技術を組み合わせる場合に互いになるべく「遠い」領域の技術を組み合わせると、特許になりやすくなったりします。
いわば、「意表」を突いた既存技術の組み合わせです。
「意表」を突く組み合わせを考える場合、例えば、通常とは逆のことを検討したり、常識を度外視して考えてみること、つまり、「素人のように」発想してみることが突破口になることがあります。
思いついたアイデアが実際に特許になるかどうか、あるいは本当に事業に結び付くかどうかは別の観点からの検討が必要ですが、「発明創出」に限って言えば、異なる技術同士を組み合わせる、しかもなるべく遠い分野の技術を組み合わせることで「飛躍した発明」が創出されやすくなる面があります。
そのため、アイデア創出の「場」では、専門家だけでなく、その道の専門家ではない一般的な人々も交えることがよかったりします。
by KOIP
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