バーチャルリアリティ(VR)空間を使った様々なサービスが既に提供されていますが、「バーチャルマーケット」という、VR空間での『さまざまな3Dアイテムやリアル商品(洋服、PCなど)を売り買いできるイベント』が行われたそうです(→記事はこちら)。
記事には、『ファッション業界から出展した三越伊勢丹ホールディングスは、販売員が自宅からバーチャルで接客を行った。』と記載されており、単純にVR空間に商品を置くだけではなく、販売員がVR空間で接客したことが分かります。
リアル店舗とVR空間での店舗という2軸で考えると、リアル店舗では当然のことながら販売員自身が接客することになります。一方、VR空間では訪れたユーザ自身に自由に商品を見てもらうか、アバターという仮想人物が自動的に、かつ、定型的な接客をするということが考えられます。
しかし、上記三越伊勢丹の例ではVR空間ではあっても、「販売員」という生身の人間がリモートで接客するという要素を入れています。将来、人工知能(AI)が発達すればVR空間内で100%AI接客も可能になるかもしれませんが、現状はそうではないので、生身の人間が接客する要素を加えた点は、VR空間のショップに訪れたユーザの満足度を上げるためにはよい取り組みだと思います。
このように、VR空間ではあってもあえて「生身の人間」の要素を加えるという発想はバーチャルとリアルという2つの軸に、「第三の軸」を加えた例であると考えられます。
◆「第三の軸」を考えるとは?
例えば、「街づくり」を考えてみます。
その際、対象となる街には様々な要素があり、その一つに「時間軸」があります。つまり、その街が古いのか、新しいのかといった点です
例えば「古い」街だとすると、埼玉県の川越や岡山県の倉敷等が挙げられます。これらの街には歴史があり、かつ、伝統がある街並みが売りになっています。また、一見古い、時代遅れだ、と思ったとしても「伝統的である」というように捉え直せば「古い」も売りになったりします。
一方、「新しい」街といえば、例えば、六本木ヒルズ、表参道ヒルズ、そして今後開発が進む品川エリア等々が思い浮かびます。こちらはビジネスやファッション等の最先端の情報が発信されるイメージがあり、実際、そういった情報発信が売りになっています。
ここで新たに「街づくり」をして地域を活性化させたい場合、どうしたらよいでしょう?「古い」を売るにしても、例えば、川越や倉敷、あるいは京都、奈良、鎌倉のように既に歴史があればともかく、そうでないならば勝ち目はありません。また、「新しい」を売りにしたいと思っても、次々に新しい街が出てくるので忘れ去られるのが早かったり、他の街に埋もれてしまいます。
そこで、新たな軸を考え、その軸でトップになれないか?を考えることが有効な場合があります。それが「第三の軸」を考える、ということです。
例えば、「昭和のノスタルジー」という軸を考えた街があります。
それが、大分県の豊後高田です。豊後高田市公式観光サイトには、『商店街が元気だった最後の時代、あの昭和30年代の元気、活気を蘇らせようと平成13年に立ち上げたのが「昭和の町」です。当初7店舗からスタートした昭和の町認定店は現在40店舗ほどになっています。いまでは全国的に脚光を浴び、年間約40万人もの来訪者を迎える商店街になっています。』と記載され、新たな軸、つまり「昭和」という軸で勝負していることが分かります。
このように、「バーチャル:リアル」「古い:新しい」というような2つの軸だけを考えるのではなく、そこに新たな軸を作れないか?を考えることが、新商品・新サービスを創り出す際に突破口になることがあります。意味のある軸を見出したり、創り出すことができれば、他の軸に埋没することはありません。もっとも、一番初めに気が付く必要はあります。
◆特許での例
特許でも第三の軸を考えることが有効である場合があります。例えば、バルーンアートを取り上げてみます。バルーンアートは、風船を用いて所定形状の造形物を創るアートです。一見簡単そうに見えますが、やはり、日頃から練習をしていないと思ったような形のバルーンアートを作ることは難しいのではないでしょうか
。
そうすると、バルーンアートを素早く作ることができる人は、バルーンアートの技術を習得した人に限られてしまいます。
では、そこに「第三の軸」を考えてみることはできないでしょうか?
プロでなくても、一生懸命練習した人でなくても、手軽にバルーンアートを創る事ができないか?を考えてみると、ある軸が浮かび上がってきます。
例えば、発明の名称を「バルーンアート作成ネット」とする特許(特許6042952号)があります。この特許の請求項1,2を見てみます。
『【請求項1】
バルーンの空気注入口を通すための環状部と、
該環状部に略等間隔で固定される少なくとも3本の規制糸と、を備え、
各規制糸の先端同士が接続されることによって、前記環状部下にバルーン本体を収納する収納部が形成されている
ことを特徴とするバルーンアート作成ネット。
【請求項2】
請求項1に記載のバルーンアート作成ネットと、バルーンと、当該バルーンの表面に貼付しバルーンアート作成物の表面を装飾するシール部材と、を含んでなるバルーンアート作成キット。』
下記は、この特許の特許公報から引用した図面です。
(特許6042952の特許公報の図1~図3を用いてKOIP作成)
つまり、複数の規制糸によってある形を作り、複数の規制糸の一端をくっつけ、他端に風船を入れる環状部を作っておき、環状部から風船を入れて膨らませます。そうすると、規制糸に接触した風船が規制糸の形に沿う部分と規制糸間から外に膨らむ部分とが生じ、それらによって所定形状のバルーンアートが形成されます。この「バルーンアート作成ネット」であれば、風船をネット内に入れて膨らませるだけでバルーンアートができるので、バルーンアート作成技術を習得しなくても済みます。
ここでの「第三の軸」は、バルーンアート作成用の「型」を提供する、ということになるのではないでしょうか。このような「型」を提供するという軸を考えれば、プロでなくてもバルーンアートを作ることができます。
この例のように、新商品・新サービスのアイデアを出す際に新たな軸(第三の軸)を考え出すことができないか?について検討することが、他社にはマネができない若しくは簡単には思いつかない商品・サービスが生み出されるきっかけになることがあると思います。
by KOIP
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