『滑り止め工事を請け負うショウエイ(横浜市)は、富士ゼロックスの特許技術を活用し、メンテナンスが容易な「透明滑り止めシート」を開発した』とのニュースがありました(→記事はこちら)。『川崎信用金庫と横浜企業経営支援財団が取り組む「知的財産交流事業」を通じて、特許使用のライセンス契約を結び、商品化した』とのことです。
大企業は多くの特許を有しているものの、事業にはその一部しか使っていない場合があります。特許を維持するためには原則として毎年特許庁に「年金」を支払う必要があるので、事業に使っていない特許は金食い虫になってしまいます。しかし、上記のように中小企業の技術と結びつけることで死蔵していた特許を活用する途が開かれます。
このように自分たちの技術を他社にライセンスしたい場合や、他社と共同で何らかの事業をするような場合、上記のような「特許」という客観的に把握できるものがあるとやり易いのですが、特許がない場合であっても自分たちの技術やノウハウ等をビジネスで使えるようにしておく必要があります。
これを、ここでは知財の「見える化」ということにします。
この知財の「見える化」、外から見れば「あそこには、あんな優れた技術がある」とか、もし特許をとっていれば「あそこはあの特許を持っている」というように見られることになります。
では、社内から見たらどのような影響があるのでしょうか?
◆知財の「見える化」が社内に与える影響
主に以下の4つが考えられます。
(1) 自社の得意技を従業員が明確に認識できる
自社技術やノウハウを見える化すると、自分たちの得意技術がなんであるかを明確に認識できるようになります。どんなに優れた技術があっても、従業員が明確に認識していなければ、例えば顧客から「こんなことできない?」と持ち込まれても、自社で対応できるのか否か判断できません。
(2) ノウハウの属人化を低減できる
ノウハウを他人に承継することは通常は難しいと思います。職人技をAI等を用いて機械化する取り組みも進んでいると思いますが、AI等を用いるか否かに関わらず、ノウハウ承継のためには、ノウハウをできる限り文章や図面、動画等により「見える化」することが必要です。そうすることで、ノウハウを有する職人が退職してしまったとしても、完全コピーは無理でも、ある程度は後進ににノウハウを伝授させやすくできます。
(3) 知的財産の使いまわしができる
知的財産は有体物ではなく、同時多重利用できます。例えば、あるビジネスにおいてある特許を使っていたとしても、他の事業において同一の特許を使うこともできます。したがって、自社の知的財産を「見える化」することで、社員のすべてがその知的財産を別々の事業で利用することが可能になります。それにより、新たなアイデアが生まれてくる場合もあります。
(4) 自社の立ち位置を客観視できる
例えば、特許の場合、特許出願し、特許庁における審査を経た後に特許になるか否かが分かります。多くの場合、特許庁の審査において、出願内容に近い先行技術文献が引用されます。この先行技術文献を参照することで、自分たちの技術の市場における立ち位置を客観的に把握できます。これにより、いい意味で開発陣にはプレッシャーがかかり、「なら、こうしたらいいのでは?」等々の創意工夫の意欲を呼び込むこともできると思います。
◆「見える化」は日頃からコツコツと
「見える化」は日頃からコツコツと行い、蓄積して行く必要があると思います。
なぜならば、社内である程度の時間を過ごしている人ならば、あえて説明しなくても分かったりするものの、知財を意識して「見える化」しておかないと、そもそも知財はカタチがない物なので(例えば、発明は技術的アイデアだったりします)、いざ第三者に説明しようとしても第三者には客観的に理解してもらうのが難かしかったりするからであり、日ごろから意識して「見える化」に取り組んでいない場合、いざ「見える化」してみようと思ってもどうやったらよいか分からなかったりするからです。
これまで阿吽の呼吸でやってきたことをいきなり「見える化」すべきといっても最初の一歩をなかなか踏み出せないかもしれません。しかし、「見える化」した知財がもしかしたら他社へのライセンスの源になったり、融資や出資を受ける際に役に立ったりする(かもしれない)としたら、少しずつでも「見える化」してみてもいいのでは?と思います。
by KOIP
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