このところ、新型コロナウイルス対策のために、イベント等の中止が発表されている。BLMが所属する業界団体でも、義務化されている各研修会が中止されている。
それでも、2月10日に開催された知的財産高等裁判所所長の講演「知的財産権訴訟の諸問題 ―商標関係訴訟を中心に―」は開催されてよかった。特許の主な実務者から商標の主な実務者までが、基本をしっかり押さえることができるものだったと思う。
基本的な内容だけに、書籍を読めばよいような気もするだろうが、法律家、特に裁判所(知財高裁)側の考え方を感じることができる貴重な機会だった。
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話がいきなり変わるが本ブログでは、知的財産法について考えようというものではあるが、デザインオリエンテッド、技術オリエンテッド・・・というテーマを設定しているのは、なるべく“法律ありき”で現実を考えるのはよそう、と思ったから。
でも、制度オリエンテッド、というのも設定したのは、制度に合わせて現実がつくられるという側面もあるなぁと思ったから。
正直、目に見えない「知的財産」というものは、制度によってつくられる側面も強いように思う。その点からも、裁判所(知財高裁)側の考え方を知るのは意味がある。
さらに、話が新型コロナウイルスに飛ぶ(戻る?)が、横浜港に停泊中のクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の対応策に関する神戸大の岩田医師の見解は興味深い。同医師が実際に見て投稿されたとされるYouTubeは、すでに削除してしまって、リンクを貼れないが、BBCの記事を引用すると、「ウイルスがまったくない安全区域(グリーンゾーン)とウイルスがいるかもしれない区域(レッドゾーン)を、船内で明確に区別していないと指摘」している点と、これに対する「厚労省関係者から、船内のゾーン区分はできており、多様な組織が重層的に活動する極めて複雑な状況で現場の関係者はがんばっている…」との反論が興味深い。
まったくの門外漢で発言をするのは恐縮だが、どちらも正しいのではないかと思う。つまり、厚労省関係者の発言のように、文言上区分はできていたのだろうが、それ以上に決まり事がなければ後は自分で考えて動くしかない。一方、グリーンゾーンとレッドゾーンを行き来きできる人間がいるということは、実質的に区分できているとは言えない、という医療の専門家の見解だったのではないか。 ・・・と、法律というものを考えていた私に、このニュースは、そういう感想を抱かせた。極めて想像なので、間違っていたら本当に申し訳ないし、このブログは削除する。
つまり、法律は必ずしも現実に即して規定されている訳ではないが、予測可能性が立たないので、法律に沿って動くしかない。法律も、問題が起きていない状況で、リスクを回避するためには、先例に従うしかない。しかし先例は、先例なので予期しない出来事は絶対にあり得る。そうすると、予期しない出来事は何ら規定がないので、現場の自己決定で動くか、又は、動かない、という決断をするしかない。で、今回は法律の問題ではないが、ゾーンの境界又は安全と言えるゾーン内において、どう行き来するかといった細かい規定がなかったため、良心に従い動いた結果、厚労省の職員にも感染者が出てしまったということではないか…。
目の前に問題があれば、最善と思う方向に動くのが、日本人の良いところで、今回「極めて複雑な状況で現場の関係者はがんばっている…」というのは本当にそうだったのだろうと思う。専門家の発言も統制されず、しっかりした知見で発言でき、現場に生かされるのが望ましいように思う。今後が重要なんだろう。‘先例’というのを作る側の人間の問題だ。今回のことは今後発生する問題の先例になる。先例が、起きた問題をきちんと分析して決まりや法律に文言化されたなら、後の問題の解決に役立つだろう。きちんと現場と繋がり、専門家を分け隔てず、決まりや法律ができるといい。
金出武雄さんの本「独創はひらめかない」の表紙に、「素人発想、玄人実行」という言葉が書かれている。つまり「素人のように考え、玄人として実行する」(同書ⅱ頁)というのが重要なのかなぁと思う。普通に考えればおかしいと思うことは、おかしいと認識した上で先例を作り、今後に備える決まりや法律ができるといい。
・・・あぁ、知財高裁所長の話を書きそびれた。先例としての裁判例、判例をきちんと勉強しなければ、、。とりあえず今度に回そう。
追伸:この記事をアップしてから何度か記事を修正した。というのも、クルーズ船の件、単に現場の問題として片付けられたくない、との思いから。その後さらに、厚労省職員ら“検査受けず”職場復帰、というニュースがあちこちから飛び込んでくる。ああ、厚労省は、日本の将来を担う本当に重要な省なのに、日本の国家デザインとして、今回の話はどなんだろう、と思わずにはいられない。そして今日の書き込みは、デザインオリエンテッドにしてみた。
厚労省職員の方の早い快復を願う。
By BLM
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