下記の写真は、手元のiPadによれば、撮影日は、2019年10月に撮影。「“あの豆乳パック”だ!」と思ったけど、あの豆乳のパックが販売されている訳ではなさそう・・・。
青山通り(国道246号)に面して、表参道駅から徒歩1分のところに立つ建物。いつもは、下記のような地味目な建物だが、突如、上の写真のように、異空間を作り出す。 “全身看板”みたいな建物。
「あれ?、建物に商標って、商標法で保護されるんだっけ? 建物が意匠法で最近保護されるって話あるよね?」
「“商品又はサービス”に使用されるのが“商標”だよね? これは商品には使用されていないけど、商標なんだろうか?」・・・と、わけが解らなくなった方(自分含む)のために以下整理してみる。
A) まず、「建物のデザインが保護されるようになります」という、最近、小耳にはさむ話(?)は、意匠法の話。意匠法の保護対象たる「意匠」は、「物品(物品の部分を含む。…省略…)の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合であって、視覚を通じて美感を起こさせるものをいう。」(意匠法2条1項)と規定されていたが、令和元年公布の改正法(施行は現時点で未だ)で、
「この法律で「意匠」とは、物品(物品の部分を含む。以下同じ。)の形状、模様若しくは色彩若しくはこれらの結合(以下「形状等という。)、建築物(建築物の部分を含む。以下同じ。)の形状等又は画像(機器の操作の用に供されるもの又は機器がその機能を発揮した結果として表示されるものに限り、画像の部分を含む。・・・省略・・・)であって、視覚を通じて美感を起こさせるものをいう。」 と規定される。
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上記、黄緑色の建物が「新規性」があれば、意匠法でも保護されただろうと思う。しかし、恒常的な店舗でなく、フランチャイズ展開する等で複数店舗を設ける訳ではない場合は、意匠出願する意味は余りないかもしれない、ケースバイケースだが…。
B)商標法だとどうか? 確かに、建物についても商標法の保護対象になる。
例えば、立体商標だと以下の例がある。6面図出して登録されており、指定役務は小売り業関係。詳細は公報を確認して戴きたい。
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もっとも、「ヤクルト容器」について書いたが、あの優れたデザインでさえ、容器自体の形状としては、商標法の保護対象として認められなかったのだから(但し使用による識別力の獲得で保護あり)、上記の建物の外観に権利が与えられるかは不明である。しかし、上記の商標が面白いのは、通常は、「文字」部分に権利がある、ということになるが、「DRUGSTORE MORI」又は「ドラッグストアモリ」という文字列自体も識別力がない(ありふれた氏又は名称等)とされ得るので、紫の横線等も含めて全体として識別力があると認められたのかもしれない。他人が文字だけ変え、それ以外は同じにしても「商標は類似」と言われる可能性がある?(うーん、実際争った場合、どうなるか知りたいが。主に、九州では知られているようだし。)
なお、立体商標以外にも、色彩の商標や、位置の商標として、建物の一部の何らかの要素が保護される可能性は十分にある。
C)行為規制型の保護を行う不正競争防止法2条1項1号ではどうだろう?商標法の場合は、登録された商標と社会的同一の範囲で使用しないと、原則として保護されない。しかし不正競争防止法上の対象である商品等表示は、社会的同一というのが商標法の保護対象より広いように思う。
例えば「コメダ珈琲店」の店舗の内外装等に関する 仮処分命令申立事件(東京地裁平成27(ヨ)22042 平成28年12月19日判決)で、同店舗の商品等表示が認められる際、複数の場所に所在する店舗は、土地の面積や形等によって全く同一という建物が建てられないところ、特徴的部分を共通にする要素が一貫して使用されていたので、“周知な商品等表示”として認められている。本事件については、別途、検討する。
いずれにしても、店舗の内外装自体(商標を除いた機能や用途のある部分)は、周知性を主張しないと認められない。何より、裁判所で争わない限り、答えが見えない。特許庁に事前に登録するだけで、一応の権利を第三者に提示できないと言う点で、不正競争防止法で争うのは最終手段であるように思う。
以上、色々見てきたが、けっきょく、冒頭の写真の場合、建物とはいえ、普通の文字と図形からなる商標で十分保護可能であると考える。遠回りしたが、下記の登録商標等(権利者:キッコーマン株式会社)で十分に保護されると考える。
例えば、以下のような図形商標が登録されている(登録第5705766号)。この指定商品又は役務は、例えば、豆乳等の商品や、豆乳等の小売業等(サービス)。詳細は公報を確認して戴きたい。
なお、商標は「どんな商品又はサービス」に使用しているかを常に考える必要がある。冒頭の写真の場合、「ホッ 豆乳Stand」の文字があるから、豆乳飲料の提供(飲食物の提供)、又は、豆乳の小売りとも言えるかもしれないが、主な目的は、「“あの豆乳パック”だ!」と皆が思うであろう商品について宣伝広告している(商標を使用している)ということなのだろう。
最近、保護方法の選択肢が増えているが、文字と図形等の基本的な商標をしっかりと持つことは重要だと思う。「“あの豆乳パック”だ!」とすぐに思い出してもらえるように。
最近、私が飲んだ、紅茶味↓
by BLM
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