毎週水曜日、一番に開く新聞のページ(岡山県内版)は短歌の
投稿蘭です。そこに、ある一人の投稿者の歌を認めた時、「あ、
まだ健在でいらっしゃる」と、ほっと胸をなでおろします。
その方の歌が特選の席にあると、なんだかうれしくなるのです。
死にたしと 思いて幾度 我来しや 断崖に佇てば 秋の日暑し
この歌は社会と断絶された瀬戸内海の小さな島、長島愛生園で
長い歳月を過ごされた方が作られた、高貴な精神性に貫かれた
絶唱の一首です。
その病ゆえにある日突然社会から隔離され、白眼視され、耐え
難い偏見のなかで、絶望の淵に立たされたとき、言葉には言い
尽くせないショックで、死への誘惑に駆られた人の心の慟哭は
想像にあまりあるものがあります。
この方に思いを馳せる時、うわべだけの励ましの言葉や同情は
優しさにはつながらない。私にできることは善意の御旗を掲げる
ことではなくて、自分の心を直視し、自分の心のなかを厳しく監視
していくことなのです。
長島愛生園に一人渡って、長い間精神科医として治療を続けた
神谷美恵子医師はこのように語っています。
・・・・・なんらかの意味で幸運に恵まれた人、生存競争に勝った人
は、不幸な人、不運な人に対して負い目を持っているのだと思う。
どうしてこちらではなくてあちらが不幸や不運に見舞われている
のか。この疑問がつねに心に生じるのは当然であろう。
(『人間を見つめて』)
いつも衿を正して読む詩です。
「らいの人へ」より。 神谷美恵子
なぜ私たちでなくてあなたが?
あなたは代わってくださったのだ
かわって人としてあらゆるものを奪われ
地獄の責苦を悩みぬいてくださったのだ
ゆるしてください らいの人よ
浅く かろく、生の海の面を浮びただよい
そこはかとなく 神だの霊魂だのと
きこえのよい言葉をあやつるわたしたちを
(『人間を見つめて』)
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