小説 ♪絶唱♪ -6ページ目

小説 ♪絶唱♪

ドキメンタリ-風小説絶唱
epilogue《エピローグ》小説それから
第3部 こころ 75歳になった男が感じる天の役事
第2部 共鳴太鼓 未来を背負う若き世代の物語
第1部 やまぶきの花 戦後まもなく生まれた男が生きた昭和、平成、令和の物語。

  

 12月に入って早々、家族6人が順番にインフルエンザに感染した。まず小学校の孫に症状がでた。やっと回復始めた時、年少の孫娘が感染。この二人の症状が回復し始めた時、今度は孫たちの母親が感染した。そして橘京助の妻がバトンタッチして感染症状が表れ37.8度まで上がった。平熱35度前7分なのに・・・。

 小学校や幼稚園、保育園ではクラス閉鎖の学年が有ると聞いた。橘京助も最近の気温の変化に身体が順応するのに体力を消耗しているのを感じていた。最後に感染したのは自分だった。

 

 家族に風邪が抜けたのは中旬だった。京助は月1度開催している会合のため軽自車で1時間ばかり走って島根県との県境に近い民家に到着した。妻の実家だった。今は誰も住んでいなかった。だが、電気と水道は継続して使用できるようにしてある。
 冬場は降雪があり会合を持つことは困難な事があったが開催日をやり繰りし、会合場所を吟味しながら顔を合わせるように努めていた。


  大川の橋を渡り15メートル坂道を上ると小川に架かる橋の向こうにある小さな木造の民家。庭に軽トラックを停めて裏口から家に入る。

 ドアのすぐ上の集合ブレカーのスイチを入力側から順にON にしてゆく。台所の照明が点灯した。

 再び外に出て水量メータのある水道管の元バルフを開くと近くの散水用のカランから圧縮空気と一緒に水道水が噴出した。

 車に積んであった食料品を冷蔵庫に入れ、掃除機を持ち出して大雑把だがキッチンの掃除をした。

 お盆前に妻と一緒に墓掃除に来て以来の掃除だった。

 

 翌日の昼時。スマホのラインで連絡を取り合った2人が軽自動車で到着した。庭先に橘京助の軽トラックと友人の白い軽のバンが並ぶ。人が動くと周辺の空気まで人間の体温で上昇して対流し始めるのを感じる。

 

 雨は降らなかったがやはり師走だった。

 山影の家屋は寒い

 ダイニングで電気ストーブとエアコンで暖を取りながらの食事会だった。

 今日は京助のもてなしの‟広島風お好み焼き”だった。

 口火を切ったのは大山巌だった。

 「いよいよ家庭連合も2世の時代に入ったね」

 1週間ほど前、家庭連合の会長を務めていたT氏からH氏に会長職が引き継の動画メッセージの話題だった。

 「今度就任したHさんは僕が教会に入教した年の生まれなんだ。プロフィールも出ていたからね」軽バンを運転してきた松江匡が感慨を込めて言葉にした。

「私が教会に入教した時に御家族と一緒に生活した事があるんだ。今から55年も前の物語なんだけでね。日曜日の礼拝の時、皆でお祈りをしているとね。その間を両手両足で這いながら一人一人の顔を覗きこんでいたのを思い出したね。教会員が14、5人くらいだったね。地方の開拓教会だったね。木造二階建ての家屋で女性と教会長夫婦が二階、男性教会は1階で共同生活していた時代なんだ」

 「今回の会長辞任のニュースの第1報がサンケイ新聞のデジタル版だったのは驚きだったね。僕なんかスマホの“X”で知ったんだ。時代は変わったね。教会サイドからの通達前だよ!」橘京助がテーブルの上の電気プレートの中でジュウジュウと音をたてている“広島風お好み焼き”をヘラで上手に裏返しながら口にした。 

「“X”ね。教会サイドでもいろいろと活用し始めてきたね。今年になってからね。まぁ、時代と共にあるという事だね」「俺なんか。やっとラインが判り始めてくらいで“X”何て?入口すら判らないというのが正直なところだね」

 二人の話を聞きながら橘京助は「僕も当初は“X”を興味を持って始めてみたが最近は正直いうと一歩後退したてね。

今回の会長辞任のニュースにしても、時間的経緯を正確に辿ってゆくと不確かな情報が途中から入り込むし、過去の掲載された内容が変形されて再登場してくるっていう箇所も有って注意しないといけないと思い始めてきたんだね」

 

 「それってどういう事?」“X”の入り口も判らないと言った松江が興味深そうな顔つきで聞いてきた。

 「僕が最初に目にしたのは弁護士のM氏がジャーナリストというE氏の『T会長の辞任のニュースは『高裁への書面提出では区切りは表向きの理由、実際には12/2ポストしたこの内容が原因・・』EさんがT会長辞任の裏側を伝えている。その報から今回の辞任劇でわかること①日本は韓国の指示対象でしかないこと②SLAPP訴訟等で繰り返し主張する世界平和女性連合)が別組織との主張は欺瞞性がより顕著になったこと…とポストした。この根拠となっているのがE氏が12月2日にポストした内容。これは文章をそのまま読むと『統一教会が高額献金被害者の返金要求に対応するとして設置した補償委員会。解散命令逃れのためと指摘されているが、その補償委員会に対して分派の人たちが元信者として補償を申請、多額のお金が支払われていると韓国本部の幹部が激怒との情報。日本の人事にも影響か』とポストしている。いかにも韓国本部の幹部の激怒によって日本の会長が交代したような印象をあたえる文面となっている。さらに投稿した人物はハッキリしないが11月末、韓国教会の幹部が来日したのは『日本家庭連合の取り組みに激怒した内容を伝えるためだった』というポストが散見されるようになってきた。これに対して11月末に韓国本部の幹部は来日していないと説明している・・・・。

 ポストの文面を確認する時間もなく次々と新しい情報がもたらされ、拡散されてゆく。どれが真実でどれが予想う記事で、どれがデマ情報か判らない魑魅魍魎の世の中になってきたね」

 橘京助は眉の間に皺を寄せて言った。

 

 「ふん~ん。これだけ聞いただけでは全く理解できないね。名探偵コナンなみの推理の力量がいるね」

 松江がプレートの“広島風お好み焼き”をフゥフゥと息で冷やしながら口に運んだ。

「名探偵コナン・・か!?そういえばテレビアニメにもう一つ同じようなモノが有ったね。何だったけ」

「それって金田一少年の事件簿・・だったかな?」「そうそう、それそれ祖父に金田一耕助をもつ高校生金田一少年のアニメ作品だったね」「金田一耕助は横溝正史の推理小説にでてくる登場人物だったね」「そういえば江戸川乱歩という作家もいたね。確か明智小五郎という名探偵もいたね」「小学校の頃だったね、白黒映画を学校の講堂でみたね」

 

 三人は50年以上の信仰歴史を持つ古参の教会員だった。今の教会を取り巻く社会的環境の厳しさは三人とも三人なりに自覚していた。

 まず1つは韓国の世界平和統一家庭連合の韓鶴子総裁が拘置所で収監されたまま取り調べをうけているという事実、

  政治資金法違反、請託禁止法違反、政教一致の狙いだった。

 日本では高等裁判所で「家庭連合解散命令」に対する審議が終り判決を待つ状態にあること、そして安部元総理の暗殺に対する犯人山上被告にどのような判決が出るかということ・・・

 

 食事が終ってコーヒータイムになった。

「会長の1時間20分近くの記者会見のライブ映像が今でも見る事ができるんだね。知っていた?」

松江匡が言った。大山が「僕は仕事で見逃してしまったんだ。会長の答弁は根拠をしっかり示して答弁しているって家内も感心して益々尊敬していたね。せっかくの映像なので録画しておいてくれたらよかったにと後悔いたんだ」

「その映像は今でも見れるよ。googleで「旧統一教会田中富広会長が辞任」で検索すれば提供先のサイトが表示されるね。僕はそれを見たんだ」

 大山が「それって今でも見れる?」

 橘京助は先日行われた家庭連合の記者会見の映像を橘京助のスマホで日本家庭連合の辞任した前会長のライブ映像をみた。この記者会見は1時間20分にも及ぶものだった。

辞任の記者会見でNHKの記者が質問の冒頭「これまでで最も厳しい時に会長職を務められた・・」

 と言った質問と民放の記者の「献金被害を訴えておられる方々の補償・・・」の質問にたいする答弁はこれまでの教会員の返答にはない研ぎ澄まされた“切れ”が有った。

良質の鋼が名工の刀鍛冶の腕で鍛え上がられた邪気を祓う日本刀のように

 次回に続く