小説 ♪絶唱♪ -3ページ目

小説 ♪絶唱♪

ドキメンタリ-風小説絶唱
epilogue《エピローグ》小説それから
第3部 こころ 75歳になった男が感じる天の役事
第2部 共鳴太鼓 未来を背負う若き世代の物語
第1部 やまぶきの花 戦後まもなく生まれた男が生きた昭和、平成、令和の物語。

  

 最近の習慣で夜半に目が覚めた。まだ暗黒の世界を漂っていた。天井のLEDランプの操作器を手探りで見つけ出すにも時間が必要だった。

置いたはずの枕の左端の30センチ範囲には無かった。耳元に有ったスマホを取り上げ画面の光を頼りに白い操作器を探し、天井に向けて点灯スイッチ押す。枕元に置いたデジタル時計は2:30 AMだった。

 部屋が一瞬にして光の中に浮かび上がった。

 始めてLEDランプ光線を身に浴びた時、感情が伝わらない空間に身を置いたような冷めた錯覚に陥った。

 事実、LED光線からは昔のランプのような赤外線は放出されないらしい。電気エネルギーが熱に変わる必要なく照明としての光だけに変換されると聞く。

 LED光が必要な時は暗闇の時間。暗闇と孤独は背中合わせ。

 

 パソコンのスイッチを入れ映象サイトを開く。

 白黒画面上にこんもりと茂った森に囲まれた西洋の城ような建築物が浮かぶ。

 スピーカーから電子音の音楽が流れ出てくる。

 暖房を入れ身体が温まるまでジッと待つ。書棚に並んだ本の背表紙の文字を読む。

 

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 人間は何人といえども、不幸を退けて幸福を追い求め、それを得ようともがいている。

個人のささいな出来事から、歴史を左右する重大な問題に至るまで、すべては結局のところ、等しく幸福になろうとする生の表現にほかならない(原理講論総序)

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はじめに神は天と地を創造された。地は形なく、むなしく、やみが淵の表にあり、神の霊が水の表をおおっていた。

(旧約聖書創世記)

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アブラハムの子であるダビテの子、イエス・キリストの系図。(新約聖書マタイによる福音書第1章)

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 橘京助が信仰の道に入る発端は上記の三つの文章からだった。

それ以前、モルモン教の伝道師から街頭で呼びかけられた事があった。その前は大学構内の食堂入り口のロビーの

 ソファの前のテーブルに誰が置いたか”生長の家”の雑誌「甘露の法雨?」が有った。京助は小冊子を取り上げ拾い読みした。

 

 高校生の頃だった。祖父が亡くなった。真っ白くなった遺骨を骨壺に納め仏前で家族揃って読経した。

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 それ、人間の浮生なる相をつらつら観ずるに、凡そはかなきものは、この世の始中終、幻の如くなる一期なり。
されば未だ万歳の人身を受けたりという事を聞かず。一生過ぎ易し。
今に至りて、誰か百年の形体を保つべきや。
我や先、人や先、今日とも知らず、明日とも知らず、おくれ先だつ人は、本の雫・末の露よりも繁しといえり。
されば、朝には紅顔ありて、夕には白骨となれる身なり。
既に無常の風来りぬれば、すなわち二の眼たちまちに閉じ、一の息ながく絶えぬれば、紅顔むなしく変じて桃李の装を失いぬるときは、六親・眷属集りて歎き悲しめども、更にその甲斐あるべからず。
さてしもあるべき事ならねばとて、野外に送りて夜半の煙と為し果てぬれば、ただ白骨のみぞ残れり。
あわれというも中々おろかなり。されば、人間のはかなき事は老少不定のさかいなれば、誰の人も、はやく後生の一大事を心にかけて、阿弥陀仏を深くたのみまいらせて、念仏申すべきものなり。
あなかしこ あなかしこ

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 生家は浄土真宗だった。後日この「白骨の章」は、開祖親鸞から200年後、親鸞聖人の教えを正確に、日本全国津々浦々に広められた蓮如が書いた手紙だと知った。

 

 京助は考える。

「もし生きて働く無形の‟神”が存在しているたなら‟生”を受けて母親の子宮から誕生して信仰の道に入らせるためにどうのような筋建をもって、時間経過を耐えて導いて信仰の道に誘導してきたかを推察してみることこそ残りの人生を歩む力になる事にあるのではないか・・」

 記憶を蘇らせ自己省察し、心の奥底にある”アルファでありオメガである”本体と会話する。

 そして一歩階段を進む。

 上に上がっているのか?下に降りているか?

 判然としない。

 ここは橘京助の自己省察の道場だった。

 そのための空間がこのアジトだった。

 

 居間にはこれまで読書してきた教会の発行書籍を年代順に書棚に入れ込んだ。

 その他の書店売りの雑誌、書籍は古本屋に持ち込み、売れ残ったモノは市の廃棄物センターに持ち込んだ。

 資料として必要ならネットで検索できる時代、さらに書籍を手に取ってみたければ各地にある古本屋から注文から2日間の時間でネット通販で取り寄せる事もできる時代だと知ったからだった。

今年の干支は『丙午』力強いエネルギーと飛躍、前進を象徴する年。元旦は朝日が昇り、二日は降雪だった。

 

次回に続く