ヨウスが学舎に入ってからというもの、一番困ったのが顔だった。
 人と認識できる容姿をしている、としか本人は思っていない。
 鏡を見ても、「これが自分か」程度。

 しかし、他人はそれだけでは済まないらしい。
 小さいころは少女としか見てもらえず、青年となった今もよく間違われる。
 さすがに声を聞けばわかるようで、五人中二人は見ただけで男と認識してもらえるようになった。

 それは良い傾向だが、問題はその先にあった。

「おはようございます、クォーズ先輩!」
 在籍年数でいえば先輩なのは相手のほうだが、初等生から見れば中等生のヨウスは先輩で。
 いや、そんなことより……。

「今日はカルオネ国から取り寄せた干菓子です!」
 そう言ってきれいに包装された包みを差し出される。
「……ありがとう。
 気持ちだけもらっておく」
 そう言ってヨウスは受け取らない。
 隣りでは同室生のティセットが苦笑していた。

 これで何度目だろうか。
 贈り物を突き返されたというのに笑顔を崩さない初等生――確かポールという名前だ――は、わかっていてやっているのだ。
 それでも懲りずに「運命です」やら「愛に壁などありません」などと言っては、こうして贈り物を持って来る。

 しかも人目を気にせず堂々としているものだから、いつもこっそりとしか話しかけてこない男生徒らの目の敵になっていた。
 また後込みをする女生徒や、出鼻を挫かれた女生徒の射殺すような視線が怖い。

 そう、問題はこれだった。
 ヨウスが同性だとわかっても言い寄って来る男が絶えないのだ。

 とくにこのポールのような例は扱いが難しい。
 情に絆されれば勘違いされ、あまり吊れなくするとむきになる。
 微調整が大切だ。



 贈り物の中身は見たことがないのだが、西区でも有名な店や外国から取り寄せた物など、幅広い。
 もしかしたら裕福層の息子なのかもしれない。
 ポール、としか名乗らないため、西区に実家があるルフェランも、どこの誰なのかわからないというし。

 謎の青年ポール。
 早く諦めてくれないだろうかと、ヨウスは切に願った。
BlueLineBlue-DCF_0617禿げティス.JPG
 こんばんは、ひぃなです。

 随分と涼しくなりました。
 扇風機は直そうかな。
 相変わらず冷凍庫にアイスは欠かせませんが、かき氷はもういいかな。

 なんてことを考えていたら、ちょっとやられちゃいまして、気付いたら5時……



夕方の!\xAD\xF4(゜ω゜)

 なんだコリャです。
 寝過ぎです。
 目ん玉が腐るかと思いました。

 皆さん、季節の替わり目は要注意です!




 ちなみに、絵はヘンタイさんではありません。
 つんつるりんの素っ裸からでないと書けないもので……。

 ごめんよ、ティセット(´・ω・`)
 午後の授業を一緒に受けるために待ち合わせ場所としたのは、本館前の茂みの裏だった。
 茂みと葉を茂らせた木のおかげで、東側の渡り廊下からも見えない。
 ヨウスが先に来て一人で待っていると、一人二人は声をかけて来るので、そのための予防策だ。

 その日は、トルクが先に来ていた。
「……?」
 武科に行きたいとブツクサと文句を言うトルクの傍らに、不似合いな少女がいた。
 しかも泣いている。
「………………」
「お、オレじゃない!」
 ヨウスの不審な視線気付いて、慌てて潔白を訴えるトルク。

 一見荒っぽそうなトルクだが、実は子どもに弱い。
 そのことを知っているヨウスは、もちろん問い詰めはしなかった。

「そういえばおまえ、屋根とか登ってたよな?
 あれ取れるか?」
 そう言ってトルクが指差すのは遥か彼方、大きな木の枝の先のほう。
 ヒラヒラしたものが引っ掛かっている。

「……ハンカチ?」
 手拭い一枚ですべてが片付くトルクの物でないことは一目でわかった。
 泣きべそをかいている少女が持ち主だろう。

「さすがに高くて取れないんだ。
 あ、肩車がいいかな?」
 うーんと唸るトルクを押して木の幹に背中を付けさせると、両手を前で組ませる。
「え? な、なに?」
 肩を押さえて少し膝を落とさせると、ヨウスはトルクの足と組んだ腕を足台に、一番近い枝を掴んだ。
「おー!」

 ぷらぷらと体が揺れるのを利用して、片方の手で別の枝を掴む。
 体を引き上げて次の枝までよじ登り、ハンカチがぶら下がる枝に到達。
「気をつけろよー」
 トルクの声援には手を振って応えた。

 枝にゆっくりと寝そべって、腕を伸ばす。
「…………」
 枝が若干、しなった。

 揺れが治まるのを待ってさらに手を伸ばし、ハンカチを取る。
 小さく畳んで、下にいるトルクに向かって落とした。

 トルクが畳んだままのハンカチを少女に差し出す。
 少女は目を丸くして、大きな手に乗ったハンカチとトルクを交互に見る。
 恐る恐る手に取ると、それが大切なものだと思い出して破顔した。
「ありがとう!」

 小さな手が折り畳まれたままのハンカチを包む。
 木から降りて来たヨウスを見上げて、何度も礼を口にした。
 よほど大切なものなのだろう。
 本館に戻るまでに何度も振り返っては、笑顔で手を振っていった。



「あー、良かった。
 いきなり泣かれて、どうしようかと思ってた。
 兄貴にもらったのにぃとか言ってさー。
 あ、武科生の妹なんだよ、あの子」
 全然似てないけど、とトルクは笑う。

「それにしてもさー。
 おまえってホント、サルみたいだよな」
 ウキキッとわざとらしく泣き真似をするトルク。
 おそらく褒め言葉ではない。
 が、なんと言ってよいのかわからず、ヨウスはいつものように沈黙した。





【終】