「恋心を注いで」⑲ | My-Hero

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ヒーローに憧れた夢。

先生のことが大好きだった。肩幅が広くて見た目はちょっと恐そうだけど、笑ったときに見せる少年のような純真さに惹かれた。

先生ー、肩幅広いですね!

…。馬鹿にしてる?


先生の頭が大好きだった。トレードマークのツンツンヘアーは、冬のホッカイロよりもあったかくて。そこでいつも手を温めていたっけ。

先生ー、髪の毛芝生みたいですね!

馬鹿にしてるよな?


先生の声が大好きだった。こもったような低い声で、少し掠れてる。大人っぽくて、男前で、爽やかで、耳に心地好い。

先生ー、実は喉繊細ですよね!

馬鹿にしてんな。


先生のことが大好きだった。最後に、一緒に写真を撮りたい。色々なバスケの技を見せてもらった、この思い出の体育館で。先生にバスケットボールを持ってもらい。同じ一枚の写真に二人で写りたい。
大須先生、大好きです。



これ逃したら、次はないと思え!

う、うんっ。

いっけーーーーー!


お、大須先生ー!

!?何してんだよ?

あ、、はい。。

終業式とっくに終わったろ。今日は部活も休みだし。

あ、いやー。その、あのー

どうした?

あのー、先生今忙しいですよね??

まぁ、今日はな。

ですよね。

(って、それで終わり!?何よ「ですよね」って!?)

(だって先生忙しいって。。)

センセ。ヒロがね、センセーと一緒に写真撮りたいんだって。体育館で。

写真!?

ね?ほら、ヒーロっ!

あ、はいっ。一緒にぃ、でも忙しい…ですよね?

いや、いいけど…体育館?

ここでも大丈夫ですっ!時間かかっちゃうし。

いや、体育館でもいいけど

本当ですか!?ありがとうございますっ!


いざバスケットゴールの下に二人で並ぶと、あんなに望んでいたのが嘘かのように一気にプレッシャーが七江を襲う。絶対に目を瞑ってはならない。これからどんな場面で目を瞑ることになっても構わないから、この写真だけはどうか開いて写りますように。

選んでおいた比較的見映えの良いボールを先生に持ってもらい、これで準備は万端。大人っぽく写ればいいなーと思い、少しかしこまってみたものの。七江はもう、自分が今どんな表情をしているのか分からない。

先生は忙しいのに。ずっと見ていたから、きかなくても分かっていた。先生は本当に忙しいのに、一度も文句を言ってこない。

優しくて、嬉しくて、七江は泣きそうになっていた。この短時間で七江の感情は目まぐるしい変動を繰り返していた。

これが終わったら先生と本物のお別れをしなければならない。次学校に来るのは、高校三年生になった七江だ。その七江は、もう大須先生に会うことは出来ないのだ。




また つづく。