「恋心を注いで」⑧ | My-Hero

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ヒーローに憧れた夢。

ついに私は、本当に告白しちゃうんだ。友だちに先生役をしてもらい、入念なリハーサルも何度も繰り返した。

「先生、これ受け取ってください。」

「先生、私、先生のことが好きです。」

大丈夫、きっと上手くいく。バレンタインの神様、私に勇気を貸してください。

後片付けが終ると同時に、タイミング良くチャイムも鳴った。七江の心臓はというと、鳴り止むことを知らないようだ。その時、ついに大須先生が体育教官室に向かい始めた。今だ!今しかない!


先生ー!

ん?

ギャーーーーース

なにしてんだよ?

イタタタタ…

まったく七江は。

いや、すみません、体操服を踏んじゃって

気を付けろよ。

はい。すみません。

(ちょっと、ヒロー!!)

あ、いや、そういうことじゃなくて。あの、その、これ、

ん?

チョコです。

え?

あ、今日、そのー、バレンタインだし。。

あ、ありがとう。

はいっ!じゃあ。。


最悪だ、最悪のシチュエーションだ。告白の前にコケるなんて有り得ない。しかもあんなにズコーッて、漫画じゃないんだから。寡黙な先生があんなに笑ってたし。情けな過ぎて、顔から火が吹き出るわ。


ちょっとヒロ待ってよー。告白しなくていいのー?

だって、あんなにコケたのに、好きですなんて言えないよー

まあー、あれはナイか。

でしょ!?あんなにカッコ悪い姿晒した後で、好きですはナイよね??

んー、まあー。

どうしよ~。先生にバカだなって思われちゃったよぉ

それは前からだから、気にしなくて良いよ。

え?でもさ、変なやつだなって思われたよね?

それも今に始まった訳じゃないから大丈夫。

え?でもでも、好きって言えなかったよぉ

うん、せっかくあんなに練習したのにね。

グスン

まぁ、ドンマイドンマイ。告白するチャンスなら、またあるからっ!

グスン。ごめんね。せっかく色々付き合ってくれたのに。

んーん、私は全然っ。

あ、りが、とう。

あー、もう、泣くなヒロっ!


七江のバレンタインデーは、最悪の結末を迎えてしまった。好きな人の前で、あんなに激しく転んでしまうなんて。本来甘~い日の筈だったのに、七江にはただ苦々しいだけの辛い思い出になってしまった。先生に呆れられ、好きも言えず、七江は一人でフラれた気分だった。





また つづく。