「恋心を注いで」⑦ | My-Hero

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ヒーローに憧れた夢。

クリスマスに彩られた街並みがお正月色に塗り替えられ、それも滲んで落ち着くと、いよいよやって来る。今度は男子と女子がそわそわし出し、受け継がれる落ち着かない。

バレンタイン。
甘いチョコレートに淡い恋心を注いで、烈々な想いも一緒に届ける。

そう、今日はバレンタインデー。もちろん七江も大須先生に渡すためのチョコレートを持参している。問題は、いつ渡すのかということ。プリンの件で学んだ、職員室等の他の先生がいる場所はNG。呼び出すのも難しいだろう。

七江に残された道は、体育の授業が終わった後、職員室に戻る前の先生を捕まえる。これだけである。そこを逃したら、今度こそ自分でチョコレートを食べなければならない。今日体育があったのは、神様の思し召しなんだと勝手に思い込む七江であった。

四時間目の体育はバドミントン。めっちゃ好きな競技なのに、全っ然集中できない七江。一緒にチームを組んでいる友だちに叱咤激励されながら、なんとか最低限のプレーだけこなす。

後片付けに入ると、七江のか弱い心臓は激しくその存在を主張してきた。静まれ、心よ。何度もイメージトレーニングしてきたではないか。

「先生、これ。」

「七江?」

「ふふ、バレンタインチョコですよ。」

「これって… 」

「ずっと前から好きでした。」

「七江…俺もだ。」

「先生…」

いやいやいやいやいや。


「七江ー!」

「先生?」

「チョコは?」

「え…」

「なんだよ、七江からバレンタインもらえると思ってたのに」

「あ、これ」

「あんじゃんか。俺も好きだよ、七江。」

ないないないないない。


あんさー、ヒロ。私先生役やってほしいってゆうから、わざわざバイト遅刻してまで付き合ってあげてんだけど?

あ、ごめんごめん。ついウッカリして。

ウッカリってなんだよ。

バイト遅れて怒られない?ごめんね。

先に言っといたから平気だよ。でも、アンタの妄想発表会を見る気はないから。帰るわ!

ちょっ、ちょっ、待ってよ~。ごめんなさい!ちゃんとやります‼





また つづく。