「恋心を注いで」④ | My-Hero

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ヒーローに憧れた夢。

漫画が名案かー。高校生の私って、こんなに子供だったっけ?想像以上に幼いな。今思い出すと笑っちゃうようなことだけど、あの頃は一生懸命だったなぁ。ほんと懐かしい。大須先生、まだバスケやってんのかな。



日本人なら誰しも一度は読んだことがあるであろう、名作『スラムダンク』であるのだが。全巻持ってるという友だちを見つけることは、なかなか簡単に出来ることではなかった。

七江の友だちも大概読んだ経験はあるのだが、そんな友だちもまた他の友だちに借りていたり。持っていても何巻かだけだったりするのが実状であった。全巻というハードルが思いの外高かったのだ。

部活動に参加していた七江はバイトもしていなかったので、自分で全巻購入することは不可能だ。悪戦苦闘を繰り返す七江に朗報を齎してくれたのは、意外にも母からの情報提供であった。なんと、どうやらいとこのお兄ちゃんが持っているらしい。念願の、全巻揃っているとのことだった。

やっとのことで手に入れた『スラムダンク』だったこともあり、心して丹念に熟読していく。七江は感動を覚えた。映画や本で泣いたことはあった七江であったが、漫画で涙したことは初めての経験であった。バスケットボールのカッコ良さを痛切に学ばされた七江の感想は

大須先生、カッコイイ。

こんな素敵なスポーツに、長年に渡り精一杯汗を注いできた先生は、七江にはヒーローに思えた。大須先生を心より尊敬した。


先生ー!バスケってカッコイイですね!!

だな。

ということで、スリーポイントシュート見せてくれませんか??

ということってなんだよ。

お願いします!

次の授業始まるぞ。

生で見たことないんです!見てみたいんです!

一回だけだからな。

やったー!ありがとうございます!

ボール!

はいっ!


ダムダム、サッ━━━パシュッ


うぅわあーーーぁあうーわぁ~!!

ボール片付けとけよ。

は、はいっ!

次の授業遅れんなよー。

はいっ、ありがとうございました!


「一回だけだからな」で、本当に一回でスリーポイントシュートを決めてしまった大須先生。七江はまた一目惚れし直した気分だった。最高にカッコイイ。

満面の笑みを携えながらボールを用具室へと運び、急いで教室へと戻る。次の授業に遅刻したら大須先生に迷惑がかかるような気がして、最近稀に見る全力のダッシュで教室に駆け込んだ。





また つづく。