本当に警察に取り囲まれていた俺らの学校は、前代未聞の復讐殺人未遂事件の舞台として、その後も長い間世間を騒がすこととなった。運悪く巻き込まれてしまった俺に、警察も学校も家族でさえも、どう接して良いか分からない様子で。何より俺自身が、事件前の俺に戻ることはできなくなっていた。
事件の概要は、新聞にも雑誌にも挙って紙面に踊られた。以下はその中のいくつかをまとめたものだ。
自分の子どもを誘拐された教師が、犯人である生徒へ向けた復讐殺人未遂。誘拐の現場となった教師の自宅には、犯人の生徒に繋がる証拠が幾つも残されていたという。すぐに犯人を特定できた教師は、警察へ通報。子どもの行方を捜索するようにと依頼し、自身は報告も兼ねて職場へと赴く。
そこで彼は信じられない光景を目の当たりにする。なんと犯人が、何時もと何一つ変わらぬ様子で、平然とした顔付きで、他の生徒同様、通常通り登校してきたのだ。これには怒りを通り越し、唖然とした。同時に彼は悟った。信じたくはないが、子供はもう生きてはいないだろう。しれっと落ち着きの払った犯人の姿勢が、如実にそう物語っていた。
それまでは、例え自分の子どもを誘拐されようとも。その犯人が、自分の受け持つクラスの生徒であろうとも。幾つもの驚愕な事実が彼を襲おうとも、なんとか教師としての立場で有り続けようと踏ん張っていたが。そこで彼は完全に壊れた。教師としては勿論、人間として、人として脆くも破壊された。
自らの手で、犯人に復讐の鉄槌を下すことを決めたのだ。
一方その頃通報を受けた警察は、現場検証により容疑者を断定。即座に当該生徒(以下少年A)の自宅へと踏み込むものの、既に登校した後であった。自宅からキャンプ用のナイフが持ち出されたことを確認した警察は、少年Aが他の職員・生徒を巻き込む可能性も視野に入れ、慎重にならざるを得なかった。
学校ということもあり、余りにも多くの未成年者が事件に巻き込まれてしまった。事態が事態なだけに警察も直ぐには動けず、事件は難航を極める。動きがあったのは、少年Aが在席するクラスから他の生徒が外へ出てきてからであった。
全ての授業が終わっても、なかなか出てこなかった訳を、警察に事情聴取された生徒は、後に我々にもこう語ってくれた。
奇妙なアンケート…
また つづく。