これはどうするー?
それはー、持ってく。
これは?
それはー、ごみ箱行きで。
じゃあ、こっちは?
あ、あんたそれ何処にあったの!?
え、ここだけど。。
そんなところにあったんだ。良かった、てっきり捨てちゃったのかと
なに?なに?思い出の品?
まーた那美の 何々攻撃 が始まった。
まーた晃姉の 秘密主義 が始まった。
ふふ、馬鹿なこと言ってないで。ほら、スパート、スパート。
はーい。
そんなんじゃ、何年経っても終わらないわ。
何年もするつもりは、ないんですけど。へへへっ。
……今日那美ランチ抜きね。
おっ、晃姉のおごり?
そのつもりだったけど、やる気の無い人にはおごりませーん。
なんだか、すっごくやる気出てきた!よーし、やるゾー‼
あんたって、昔っから食べ物には貪欲よね。
ちょっと、美食家って言ってよ。ってかランチの為に頑張るんじゃないしー。晃姉の為に頑張るんだよ。
はいはい、ありがとね。
あー、さては信じてないな。
んーん、本当に助かってる。一人じゃそれこそ何年かかるか。ありがとね。
…晃姉?ひょっとして、最近、なんか嫌なことでもあった?
私?別に何もないけど、何でよ?
いや、ならいいの。
何でよ?言いなさいよ。
…だって、晃姉から ありがとう なんて言われるの珍しいなと思って。
ハァ!?
だから、なんか嫌なことでもあって、落ち込んで、弱ってるのかなって。
失礼ね。私は ありがとう と ごめんね の言える人間で通ってます。
この子、昔っから勘いいのよね。
晃子は胸の中でそう呟くと、何だか悩んでいることが馬鹿らしくなり、一人で苦笑いした。
本当に、那美にはいつも驚かされる。晃子の、ほんの少しの変化も見逃さない。全てを理解してくれる。那美になら、本当のことを告白しても、しなくても、今と何も変わらない二人でいられるだろう。
このまま言わなくても、もし何らかの形でバレてしまったとしても、二人の関係は揺るがない。
晃子は、今、それがはっきりと分かった。悩んでる必要はない。今日のランチは久しぶりに楽しい食事になりそうだ。久しぶりに心から笑えそうだ。
那美、ありがとう。
今度は勝手に声に出ていた。しかし、幸いにも集中した那美には聞こえなかったみたいだ。急に恥ずかしくなり、晃子も慌てて仕事に取り掛かった。晃子の晴れやかな心は、表情までも明るくした。
那美の存在は、晃子には欠かせない大切な相棒なのであった。
晃姉大丈夫かな。
口では軽口をたたいてみたものの、那美の本心は心配で堪らなかった。
最近の晃子は、なんだか元気がない。何かを一人で抱えて、悩んでるみたいに思える。
それでも、力になってあげられない。那美は、そんな不甲斐ない自分に落胆していた。
でも今日は、久しぶりに晃子とランチを一緒にできる。今までは、助けてあげられなかったらどうしようとか。頼りにされなかったらどうしようとか。考えると怖くてきけなかったけど、ランチのときに思い切ってきいてみよう。
そんな風に頭に浮かんだとたん、那美は俄然やる気を出して仕事に取り組むのであった。
晃子の存在は、那美には欠かせない大切な相棒だから。
また つづく。