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旅立ち 09

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「てめぇ!」

突然乱入してきた優男風な青年に、ピントのずれたセリフを言われ、大男6人は一瞬ポカンとした後で鼻白らむ。


その様子をどこか面白そうに目を輝かせて青年は見たが…すぐに口と腹を押さえて屈みこんだ。

「う…、急に動いたからまた吐き気が。」


(だ、だめかもしんない…)

一瞬希望を抱きかけたリリアナだったが、盛大にゲェゲェやりだした青年を見て再び絶望的な気持ちになった。彼に感じた殺気もクライズに似てると思った面影も…きっと、助かりたいと一心に願う自分の想いが見せた幻だったのだ。げんにこちらに背を向けて屈むその姿は無防備この上なかった。


「なぁ、水ねーか、水。」

ようやく少し持ち直した青年は、大男達に向かって何かよこせ的なジェスチャーをしてみせた。


大男達は、顔を見合わせ。互いにニタニタと笑い出す。こいつ、弱そうな上に今の状況も全くわかってない酔っ払いだぜ。互いにその目はそう言っていた。


「あー…水な。」

大男の一人が前に進み出ながら懐から何か取り出すしぐさをする。「これならくれてやるぜ!!」


今までの緩慢な動きから一転、腕を俊敏に掲げると…いっきに青年の頭めがけて振り下ろした!その手から刃物の先端が放ったらしい銀色の光が閃く。


「ひっ!」

リリアナは悲鳴をあげて思わず目をつぶった。あの人殺される!!


だが…いつまで待っても、予想してた肉を切り裂く音も血が吹き出す音もしない。

彼女は、おそるおそる目を開けた。


「気持ち悪りぃー…」

青年は相変わらず屈んで口元を押さえており、刃物を青年に目掛けて振り下ろした先ほどの大男は呆然とそこに佇んでるのみだ。


「……」

リリアナの頭の中が、はてなマークでいっぱいになる。何がなんだかわからない。唯一気になる点といえば、青年と大男の居る位置がさっきより少し横にズレてる気もするが、それもとっさのことで自分が見間違えてるだけかもしれない。


「おいおい、何やってんだよ!」「そんな奴にかわされてんなよ!」「偶然よけるなんて、その酔っ払い運がいいなぁ」なんて後方の仲間から野次を飛ばされ、剣を振りかざしたまま棒立ちしていた大男はようやく現実に戻った。


(ぐ、偶然だったか…?)

頭の中を、さっきの一瞬の出来事が走馬灯のように浮かぶ。懐に忍ばせた剣の鞘をコートに隠して抜きながら青年に近づき、その後頭部に思いきり振り下ろした。そこまではよく覚えている…。だが、その後がどうもはっきりとしない。頭をかち割る!そう思った次の瞬間、青年の姿が目の前からパッと消えた。ありえない状況に頭が混乱してるうちに…仲間の野次でようやく我に返ったのだ。


「お前ら水持ってねーのか。」

青年は屈んだまま、ジトーっとうらめしそうに大男達を睨めつけ。そしてそこではじめてリリアナに目を向けた。

「ねーちゃんのほうはどうだ、ん?水持ってるか?」


聞かれて、とっさにリリアナはコクコクとうなずいた。

「家の中に水がめが…」


それを聞いて、青年はパァーっと表情を明るくした。「やっぱりそうか!」なんて叫びながら。「んじゃまあ、水を早く分けて貰いてぇし」助けますかねぇ。なんて独り事のように呟くと、どっこらしょっと言いながら立ち上がり

肩と首をポキポキっと鳴らした。ただ、そのしぐさは本心からめんどくさそうだ。


そして腰に下げたサーベルをぎこちない手つきで抜くと、大男達に向かって本物の騎士(ナイト)がするようなフェンシングの構えをとった。「かかってきな!」


大男達は、酔っ払いの、見るからに年下の青年にコケにされて本気でぷっつん来たようだ。顔を怒りで真っ赤に染めるといっせいに剣を抜き襲いかかった。


「ちょ…!たんま、たんま。誰が全員で来いっつったよー!」

さすがにそれには青年も真っ青になり、サーベル状の細身の剣を持ったまま右往左往部屋中を逃げ回る。


「駄目だな、からっきし腕があがってねぇ。」「ありゃ船長との猛特訓も意味ねーなぁ。」

なんて頭の左右で声がして、はじめて他にも人が居たことに気づいてリリアナは飛び上がった。


青年の連れの二人であると見てとり、やがて彼女はホーッと胸を撫で下ろす。ドアの物陰から中の様子をうかがってた二人は乱闘が始まったとほぼ同時に、彼女を守るべくそっと抜き足で来たのだった。


「ったく、何やってんすかー!例のモンは何処やったんですー?」「まさか置き忘れてきたなんてオチじゃないでしょうねー!」二人が青年に向かって怒鳴ると、負けない大きさで向こうも怒鳴り返してきた。大男達の剣をよけながらなのだからある意味器用だ。


「バーロー!アレはレッドの野郎に禁止されてんだろーが!!」


リリアナの左右で連れの男達は顔を見合わせる。もしかして馬鹿じゃないかとは常日頃から思っていたが、やっぱりモノホンの馬鹿だったなぁ。互いの目がそう言っていた。


「人助けなんだから船長は許してくれますよ!!」「この状況なら大丈夫です!!」


二人に同時に大丈夫だと叫び返され、逃げ惑いながら青年はキョトンとする。「え?そぉなの?」(なぁんだ、そっかぁ。)青年はにんまりと笑った。だが!


「危ねぇ!副船長!!」

話しに気にとられてたその隙に大男の剣がその首をすでに捕らえていた。


横殴りに一閃、剣の刃が真横に閃く。青年の首が飛んだ!部屋にいる誰もがそう思った次の瞬間…


キィーン…


そう音を立てて宙に舞ったのは大男の剣のほうだった。部屋中にきな臭い、火薬のような匂いが立ちこめた。


「剣なんて古臭せぇよなー、やっぱり。」


そう言った青年は、大男達のほうに腕を伸ばしていた。その腕の先に握られている短銃(たんじゅう)から、白い硝煙(しょうえん)がゆらゆらと立ち昇る。いつの間にどこに隠し持ち、そしてどう取り出したのか。


誰もがその一連の動作を捕らえることができなかった。それほどにすばやく行われたのだ。そして…その手に握られた短銃の、見たことのない造形が気になった。火縄銃(ひなわじゅう)のようだが肝心の火縄がついていない。ようやく、自分達が相手にしてるのが只者じゃないと気づいて大男達全員がその場に硬直する。


「さあ、仕切り直しだ。」

青年に楽しそうに笑ってそう言われ…。大男達の背筋を冷たいものが流れていった。


>>10に続く




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