好きなことだけをしなさい。
嫁いだ先の義父が言った、たったひとつの家訓だった。
最初は仰天した。
義父は勤め先の顧問でもあり、会長だったから色々相談もした。
にこやかに『そ~だねぇ。なるほど、なるほど。もっともだねえ』と聞いてくれる。
義父のにこやかなリアクションに隠された本音にはすぐに気が付いた。
『聞いてないのだ』
つまり好きなことだけをすれば、
愚痴も相談も不安も期待も思惑も心配も、生まれない。
『君がしている事は本当に好きでやってるの?』と無言に問うている。
義父本人の人生が本当に好きな事を貫いたのか、どうか。
本当に人を育てる名人として、活躍した傑人だったとおもう。
この人の娘になりたくて、結婚したようなものだ。
義父の葬式の時、
『私こそ娘のように可愛がってもらたんですぅ』と名乗る美女が10人位いた。
いや~、あの歳で、やるじゃん!
私は美女たちと抱き合って泣いた。
まったくこの世に未練なく、あの世で好きなことしている義父がいる。