”コロナワクチンがバセドウ病を誘発?” | blackk2022のブログ

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コロナワクチン接種後に強い疲労感や不安感を自覚した40歳代男性例

2025年1月21日 19:00

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンの接種後には、副反応として注射部位の痛み、発熱、疲労などが生じることが知られる。

他方、まれに他の疾患を誘引することが報告されており、適切な診断が必要である。福岡徳洲会病院(福岡県)心療内科・内分泌・糖尿病内科部長の山下真氏は、SARS-CoV-2 mRNA(mRNA)ワクチンの接種後に強い疲労感や不安感などを自覚し、バセドウ病を誘発したと考えられた40歳代男性の症例を第28回日本心療内科学会(2024年12月7~8日)で紹介した。

3回目の接種後にソワソワ感、不眠、体重減少

 症例は40歳代男性。特記すべき既往歴はなく、内分泌疾患や精神疾患の家族歴はなかった。
 病歴、現症、検査所見は以下の通り。
症例. コロナワクチン接種後、2つの疾患の併存を認めた40歳代男性の一例

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【病歴】
X-2年:SARS-CoV-2 mRNAワクチン1回目接種後の副反応は局所反応のみ
X-1年2月:同ワクチン2回目接種後、1カ月間微熱が持続。その後1年間は仕事が多忙だった
X年2月:同ワクチン3回目接種後に約1週間微熱が持続
同年4月:仕事中に強い疲労感を自覚。その後ソワソワ感と不眠が続き、翌月に福岡徳洲会病院心療内科・内分泌・糖尿病内科を受診した。体重減少、動悸、息苦しさ、強い不安を認めた。手指振戦、眼症状、発汗はなし

【現症】
身長170cm、体重60kg、意識清明、血圧161/75mmHg、脈拍84/分(整)、体温36.6℃、眼球突出なし。甲状腺は腫大なし、腫瘤触知なし、圧痛なし。胸腹部に異常なし、皮疹なし。神経学的異常所見なし

【検査所見】
血液検査では遊離トリヨードサイロニン(FT3)が5.77pg/mL、遊離サイロキシン(FT4)が2.57ng/dL、甲状腺刺激ホルモン(TSH)が0.01μIU/mL未満、抗TSH受容体抗体(TRAb)が6.71IU/L。頸部超音波では推定甲状腺重量19.9g、甲状腺実質内の血流増加

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バセドウ病と診断、甲状腺機能が正常化後も疲労感とソワソワ感が残存

 山下氏は、症状や検査所見を基にバセドウ病と診断。

ヨウ化カリウム(KI)丸50mg/日に加え、抗不安薬ロラゼパムの投与を開始した。

X年8月に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患(軽症)。同年9月に甲状腺機能が正常化したため、KIの投薬を中止したが、その後も疲労感とソワソワ感が残存した。

 コルチゾルおよび副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の基礎値がいずれも基準値下限だったため、ACTH放出ホルモン(CRH)負荷試験を行ったところ、負荷後60分でコルチゾル頂値は14.5μg/dLと遅延・低反応を認めた。

また、ACTHは基礎値9.9pg/mL、頂値/基礎値5.4だった。下垂体MRIに異常はなかった。

以上を踏まえ、同氏は同年12月に中枢性副腎皮質機能低下症と診断。


しかし、ヒドロコルチゾン5mg/日を投与しても疲労感は改善しなかった。

 X+1年6月に、仕事内容が事務職から身体を動かす作業に変わったことを機に、疲労感とソワソワ感の軽減を認めた。

また、抗不安薬も奏効した。

中枢性副腎皮質機能低下症が甲状腺機能亢進を遮蔽か

 これまでに、SARS-CoV-2 mRNAワクチン接種後の内分泌障害が知られており、甲状腺機能障害が最も多いと報告されている(Front Endocrinol 2022; 13: 1027047)

その機序として、

①SARS-CoV-2ワクチンの甲状腺濾胞細胞抗原への交叉反応、

②ワクチンアジュバントによる自己免疫の増強

―が指摘されている(Vaccines 2024; 12: 750)。

 また、SARS-CoV-2 mRNAワクチン接種後のバセドウ病発症の機序として、

①SARS-CoV-2 mRNAワクチンによりTh1細胞が産生される、

②バセドウ病はTSH受容体を刺激するIgGの産生による自己免疫疾患であり、TRAbはTh1免疫反応によって二次的に産生される

―ことが関連すると考えられるという(Ann Endocrinol 2022; 83: 262-264)。

 山下氏は「バセドウ病の診断よりSARS-CoV-2 mRNAワクチン接種が先行していることから、同ワクチンがバセドウ病発症の誘因になった可能性は否定できない」と説明した。

 また、甲状腺機能が正常化した後の疲労感には、中枢性副腎皮質機能低下症が関与した可能性が考えられ、初診時に甲状腺機能亢進症状が比較的軽症だったのは、既に同疾患を併存しており甲状腺機能亢進症状を遮蔽していた可能性もあるという。

 以上を踏まえ、同氏は「本病態はSARS-CoV-2 mRNAワクチン、バセドウ病、COVID-19、中枢性副腎皮質機能低下症、不安などを考慮する必要があり、心身医学的に興味深い一例と考えられる」と結んだ。