残業代請求(サービス残業)
第三 争点に対する当事者の主張
1 争点(1)について
(1)被告の主張
ア 被告及び関連会社には、被告代表者と非常勤取締役の役員がおり、関連各会社の経営する各店舗に被告の正社員を店長あるいはマネージャーとして派遣し、各店舗の経営に当たらせていた。
各店舗に派遣される店長、マネージャーは、被告の経営に携わる管理監督者であり(マネージャー等が管理監督者に当たらなければ、被告役員以外に管理監督者はおらず、各店舗の経営は不可能である)、マネージャーは、店長を補佐し、時には店長を代理して、店長とともに各店舗を運営し、その決定権限を有する立場にある。
イ 原告は、被告に幹部社員として採用され、本件店舗以外の店舗で店長を務めた経験がある。
ウ 原告は、本件店舗にはマネージャーとして派遣されており、本件店舗の店長とともに、〔1〕アルバイト従業員に対して指示を行い円滑な本件店舗運営を図る、〔2〕本件店舗の売り上げ状況、従業員の稼働時間等に関する日報の作成、〔3〕アルバイト従業員の特別手当の申請を行う、〔4〕本件店舗のドリンクメニューの決定・作成の全てを行う、〔5〕毎月実施される幹部ミーティング等に参加する、〔6〕本件店舗の売り上げにかかわるレジのメニュー変更及び設定を行う(幹部職員以外には関与させない)など、管理職としての業務に従事していた。
店長及びマネージャーは、各店舗の運営責任者として、被告の定めた範囲内で営業時間を設定し、営業時間中は、いずれかが在店することは当然であるが、その勤務シフト(営業日の勤務時間等)は、各店舗の実情に応じて、各店舗の幹部社員の協議で定めており、被告が指示し、決定していたものではない。
エ 被告は、店長及びマネージャーについてもタイムカードの打刻を行っていたが、これは、公休のほか有給休暇の調整を行うためのものであり、店長等の就労時間を管理する目的で行っていたものではない。
オ 原告は、管理職として役職手当の支給を受けていた。
カ 以上のとおり、原告は、管理監督者として被告の業務に従事していたものであるから、時間外割増賃金(残業代)等の支給を受けるものではない。
(2)原告の主張
ア 管理監督者とは、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的立場にある者であり、名称の如何にかかわらず、実態に即して管理監督者に当たるか否かが決定されるべきものである。
イ マネージャーは、その権限も限られており、原告は、ホールでの接客業務などをアルバイト従業員とともに担当していたのであって、店長の指示に従って業務を行っていた。
原告が本件店舗のアルバイト従業員に指示することは、正社員として当然であり((1)ウ(以下この項で同じ)〔1〕)、日報は主に店長が作成し(〔2〕)、ドリンクメニューの決定に際し、日本酒等に詳しい原告が客に勧める銘柄を決めることはあったが、その他のメニューの基本的な内容は事前の報告に基づいて被告代表者が決定し、店長が細かな変更をすることはあったが、被告代表者の指示に基づいていたにすぎない(〔4〕)。
また、幹部ミーティングの発言内容は事前に店長、チーフが協議して決め、発言するのは店長であり、その内容も店舗の状況等を報告するにとどまり、決定は被告代表者が行っていた(〔5〕)のであり、被告は実質的にも被告代表者がいわゆるワンマン経営を行い、原告らは、その指示に従って店舗の運営に当たっていたにすぎない。他の社員は、被告や関連会社の経営について決定する権限などなかった。
なお、原告は、本件店舗でアルバイト従業員の特別手当の申請をしたことはない(〔3〕)。また、レジのメニュー変更は、メニューの変更に連動して行われるもので本件店舗の売り上げなどに影響するものではなく、誰にでも操作はでき、入れ替わりの激しいアルバイト従業員が操作を覚えられないため、原告が行っていたにすぎない。
ウ 店長及びマネージャーも被告によって決められたシフト制で勤務時間が決められ、その指示に従って出勤、退社し、残業しており、全ての社員がタイムカードによって勤務時間を管理されていた。
エ 原告に支給されていた基本給は一六万五〇〇〇円ないし一七万円であり、役職手当もチーフ、サブチーフ及びサブマネージャーと比較しても高額ではなく、管理監督者に相応しい処遇を受けていたものではない。
オ 以上のとおり、マネージャーであった原告は、業務内容、処遇のいずれに照らしても、管理監督者には該当しない。