懐かしい名前になりつつあるポール・ロジャース(Paul Rodgers)による最新アルバム、『Midnight Rose』が昨年の9月にあの伝説のレーベルである”サン・レコード”(Sun Records)よりリリースされていました。 気づかずにスルーしていたようです。
オリジナル・マテリアルとしては、1999年の『Electric』以来となります。 元フリー(Free)とか、バッド・カンパニー(Bad Company)とかの冠がどうしても付いて回るようになるのは少し寂しい気がします。 1949年12月生まれですから、まだ74歳です。
2000年代からはクィーン(Queen)のリユニオン・ツアーのリード・ヴォーカルとして大きく脚光を浴びていましたが、その後はあまり存在感のない活動になっていました。 正直言って、懐メロ・ツアーのようなライヴ・ツアーをイギリスを中心に行い、かつてのフリーやバッド・カンパニーの往年のヒットをステージで歌っていました。
その後、2016年に脳卒中に倒れ、治療に専念する生活を余儀なくされますが、幾度となく症状が再発し一時的にはミュージシャンとしての再起は難しいと言われてしまい、ほぼ3年間を闘病生活に費やしています。 結果的には奇跡的に回復し、ヴォーカリストとして復帰を果たすことが出来ました! この陰には、現在の伴侶であり、カナダに移住するきっかけとなった元ミス・カナダであった美しいシンシア・ロジャース(Cynthia Rodgers)の存在があることは間違い事実でしょうね!
今回はカナダのプロデューサーであるボブ・ロック(Bob Rock)を迎えての作品になります。 ご存じの通り、ボブ・ロックは、90年代以降にメタリカ(Metalica)の代表作である『Metallica』(The Black Album)から5枚のアルバムをプロデュースしており、また、ボンジョビ(Bon Jovi)が大躍進した後のアルバム、『Keep the Faith』などをプロデュースしているハードロック系を得意とするプロデューサー兼エンジニアです。 だからか、サウンドそのものが正に今の時代にフィットした新しいギター・サウンドに仕上がっています。
丁度、昨年の10月にリリースされたローリング・ストーンズ(the Rolling Stones)の『Hackney Diamonds』を思い起こさせるような仕上がりです。 前作に当たるセルフ・プロデュースの『Electric』と比べれば一目瞭然です。
□ Track listing;
*) All tracks are written by Paul Rodgers except where noted
1."Coming Home" 3:18
2."Photo Shooter" 3:42
3."Midnight Rose" < Cynthia Rodgers, Paul Rodgers > 4:00
4."Living it Up" < Paul Rodgers, Rick Fedyk, Todd Ronning > 3:06
5."Dance in the Sun" 3:49
6."Take Love" 4:20
7."Highway Robber" 5:05
8."Melting" 4:48
□ Personnel;
Produced by Bob Rock and Cynthia Rodgers
■ Musicians;
Paul Rodgers - vocals
Ray Roper - guitar
Keith Scott - guitar
Todd Ronning - bass guitar
Rick Fedyk - drums
Chuck Leavell - piano
Chris Gestrin - organ
Leslie Page - backing vocals
Jimmy Mattingly - mandolin
Johnny Ferreira - saxophone
今回はバックに凄腕のメンバー、ローリング・ストーンズ(the Rolling Stones)のサポートでお馴染みのチャック・リベール(Chuck Leavell)が2曲、そして、ブライアン・アダムス(Bryan Adams)のサポートでおなじみのギタリストであるキース・スコット(Keith Scott)が加わっています。 凡庸なブルーズ・ロックと言う厳しい意見もあるでしょうが、25年振りに新曲を収めたアルバムをレコーディング出来たことを歓迎したいと思います。 目新しいことは出来ないかもしれないですが、あのヴォーカルは彼にしか出せないですから・・・・・触発するような相棒が欲しい気はします・・・・。
全8曲と割と少なめの収録時間でEPのような感じなのが気にはなります・・・・。
冒頭の”Coming Home”からスタートしますが、感じはバッド・カンパニー(Bad Company)の1stアルバムみたいですね(笑)。 コード進行を見てもとてもシンプルなブルーズ・ロックで、 Am, C, G, D と捻りはないのが彼らしいと言えば言えます。
□ “Coming Home” by Paul Rodgers;
続く”Photo Shooter”では、スライド・ギターから導かれるドライヴ感のある楽曲に仕上がっています。
次”のMidnight Rose”はアルバム・タイトル曲で、マンドリンが隠し味になったアコースティック・ナンバーです。 歌詞に出てくる「a red rose」とは、文字通り現在の奥方であるシンシアさんのことでしょうね・・・。
□ “Midnight Rose” by Paul Rodgers;
自伝的な内容、現在ポールはU.K.からカナダに移住しており、そのことに言及している様な楽曲、”Living it Up”です。 この曲のデモを自身のバンドのベーシストであるトッド・ローニング(Todd Ronning)に聴かせたことが、このアルバム制作のきっかけになったそうです。
歌詞の中には、オーティス・レディング(Otis Redding)、アリサ・フランクリン(Aretha Franklin)、レイ・チャールズ(Ray Charles)と言ったポールの尊敬するアーティストの名前が織り込まれています。
□ “Living it Up” by Paul Rodgers;
折り返しの”Dance in the Sun”は、フラメンコ風のアコギからスタートするスワンピーなミッドテンポのアコギ・ナンバーです。 歌詞からは、おそらくは再起不能が頭をよぎったであろう3年間にも及ぶ闘病生活からの復帰した事に言及しているのは明らかです。
ヴォーカル自体が、全体的に以前の様に力んでシャウトするやり方ではなく、割と力を抜いたリラックスした歌い方に変わっているように感じました(もう、力感を出しては歌えないのかもしれませんが・・・??)。
6曲目の”Take Love”は随分以前に出来上がっていた楽曲で、クィーン(Queen)とのライヴ・ツアーでも取り上げていた曲です。 正にバドカン(Bad Company)を思い起こさせる曲で、コール&レスポンスのコーラスが最後まで盛り上げてくれます。
□ “Take Love” by Paul Rodgers;
続く”Highway Robber”とは文字通り高速道路で強盗する人々、多分ですが、元入植者(移民)から強盗にならざるを得なかった人たちのことを歌っているみたいですね。
最後の曲、”Melting”では、典型的なミシシッピ・ブルーズ風のイントロから展開するスルーなブルーズ・ロックです。
□ “Melting” by Paul Rodgers;
思い返せば、バッド・カンパニーの解散以降はこれといったオリジナル・アルバムが制作されていないように感じてしまい、少し残念ですね。 年を重ねると共にそれは簡単ではないこと、多くのアーティストが経験しています。
私にとっては、93年にリリースされたブルーズ・カヴァーのアルバム、『Muddy Water Blues: A Tribute to Muddy Waters』が最高傑作だったと思います。 ジェフ・ベック(Jeff Beck)、ゲイリー・ムーア( Gary Moore)にデヴィッド・ギルモア( David Gilmour)など多くのギタリストが客演していました。
□ “Rollin' Stone” by Paul Rodgers with Jeff Beck;
今まで、ポール・ロジャース(Paul Rodgers)について直接触れたブログはありませんでした。 懐かしいフリー(Free)についてのブログがありましたので、再掲したいと思います。
2017年7月 FREE ”Wishing Well ” (こちらです↓↑)