『What Now』Brittany Howard | Music and others

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What now 00

 

 ブリタニ-・ハワードBrittany Howard)が2019年の『Jaime』に続く2枚目のソロ・アルバム『What Now』をリリースしました。 非常に革新的であり唯一無二のサウンドを持っていたアラバマ・シェイクス(Alabama Shakes)が2018年に突如活動休止となり、その後はソロ・アーティストとして目覚ましい成長ぶりを見せつけています!

 

ネオソウルとかファンクとかの枠にとどまることなく、最先端のバロック・ポップ(Baroque pop)または、チェンバー・ポップ(Chamber pop)とか、アヴァン・ジャズ・ロック(Avant-garde jazz rock;民族音楽に実験的な音作りとテクニカルなアンサンブルが一体化したようなサウンド)なども取り入れており、その多彩さには驚かされます。

 

Brittany Howard 00

 

アラバマ・シェイクスが活動休止状態のままなのも判るような気がします。 あの当時、”マッスルショールズ・リヴァイヴァル”と呼ばれたサウンドに完全に区切りを付けたのです。

そして、難病で幼くして亡くなった妹の死、貧しい生い立ち、異人種間カップルとして両親が直面した偏見、そして、宗教的信仰との闘いなどに正面から向き合った内省的なアルバム、『Jaime』を制作しました。

第62回のグラミー賞(the 62nd Annual Grammy Awards)にもノミネートされて、音楽的に高い評価を受けました。

Alabama Shakes 00

 

そのトラウマと言えなくはないものから解放された、一種のカタルシスがなくなってしまった次に来るのは・・・・・と言う意味合いを込めたアルバム・タイトル、”What Now”が物語っていると思います。 前作からレーベルを移籍して、アイランド・レコーズ(Island Records)での第1作目になります。

 

□ Track listing;

  *) All tracks are written by Brittany Howard, except where noted.

1. "Earth Sign"     3:38

2. "I Don't"     3:22

3. "What Now"  (Howard, Taylor Ann Avis Bogner)     3:46

4. "Red Flags"     4:27

5. "To Be Still" (Howard, Brad Allen Williams)     2:27

6. "Interlude"     0:38

7. "Another Day"     2:14

8. "Prove It to You"     3:20

9. "Samson"      5:17

10. "Patience"     3:16

11. "Power to Undo"     2:50

12. "Every Color in Blue"      3:06

 

□ Personnel;

 Produced by Brittany Howard, Shawn Everett

Musicians;

 Brittany Howard – vocals (all tracks), piano (track 1), guitar (2, 3, 5, 11, 12), keyboards (4, 7, 8), bass (10)

 Nate Smith – drums (tracks 1–4, 7–12)

 Zac Cockrell – bass (tracks 2, 3, 5, 7–12)

 Lloyd Buchanan – keyboards (tracks 3, 8–11)

 Paul Horton – keyboards (tracks 3, 9, 10), piano (12)

 Brad Allen Williams – guitar (tracks 4, 5)

 Rod McGaha – trumpet (tracks 9, 12)

 

さて、本アルバムではアラバマ・シェイクス時代からのサウンド・エンジニアーであったショーン・エヴェレット(Shawn Everett)を共同プロデューサーに迎えています。 第一印象では、根底には尊敬して止まなかったプリンス殿下Prince)の影響が色濃く漂っているように感じました。

 

アルバムのオープナーである”Earth Sign”は、静かにスローに彼女の多重コーラスにより始まります。 そして、明らかに70年代のフィリー・ソウルを影響を受けたかのようなスロー・バラードの”I Don't”に続いて行きます。 どこか、チャイライツ(Chi-Lites)やデルフォニックス(the Delfonics)を思い起こさせます。

□ “I Don't”   by Brittany Howard;

 

 

 

そして、アルバムのタイトル・トラックである”What Now”ですが、そこにはやはりかつてのアラバマ・シェイクスのヒット曲、”Don’t Wanna Fight”の発展形のような感じで、ドライヴ感のあるファンキーな展開のいい楽曲です。

□ “What Now”   by Brittany Howard;

 

 


”Red Flags”では、誰かに一時的に夢中になることについての戒めみたいなことに言及しています。 続く短めの”To Be Still ”ではスィートなバラードですが、厄介な愛について歌われています。 サウンド自体はバロック・ポップ(Baroque pop)の担い手の一人であるジョサイア・ワイズ(Josiah Wise)の創り出す実験的なサウンドに聴こえます。

 

丁度折り返しになる真中に間奏曲(Interlude)を挟んで、ディアンジェロD'Angelo)の『Black Messiah』辺りを想起させるサイケデリック・ファンクな”Another Day”が続きます。

□ “Another Day”   by Brittany Howard;

 

 

 

さらにその次の”Prove It to You”では、四つ打ちビートが印象的などこかジョルジオ・モルダー(Giovanni Giorgio Moroder)のディスコ・サウンドへのオマージュのように聴こえます。 

□ “Prove It to You”   by Brittany Howard;

 

 

その後に続く”Samson”は沈み込むようなスローテンポの楽曲でサイケ・ジャズのようなサウンドに聴こえます。 ジャジーなエレクトリック・ピアノ主体のバラードですが、奇妙にうねうねとしたリズムが全体を支配し、終盤には美しいトランペット・ソロが中心に躍り出てきます。

 

 

終盤に入り、”Patience”から次の”Power to Undo”は正にプリンスへのオマージュであるかのようなサウンドでファルセット・ヴォイスとコーラスの使い方がそっくりに聴こえます。

□ “Power to Undo”   by Brittany Howard;

 

 

 

ラストは”Every Color in Blue”、キーワードは”it's all out of rainbow”と言う表現なんでしょうか、歌詞は複雑で比喩的な表現が多くて難解です。 おそらく、恐れず傷つくことなく、自分の心を開放することにより得られることへの賛歌を歌っているように思います。

実験的でほぼフリージャズの様なトラックで終わります。

 

 

今まで、ブリトニー・ハワードについて直接触れたブログはありませんでした。 活動休止中のアラバマ・シェイクス(Alabama Shakes)についてのブログはいくつかありましたので、再掲したいと思います。

 

2015年11月 マッスルショールズ・リヴァイヴァル ー Alabama Shakes  (こちらです↓↑) 

2015年11月 『Sound Color』の革新性-Alabama Shakes  (こちらです↓↑)    2015年9月  ブレイク・ミルズ(Blake Mills)の凄さとは?  (こちらです↓↑