Ian Hunter 『Defiance Part 1』 | Music and others

Music and others

偏愛する音楽、Fashion、Macintoshと日々の雑感

Defiance Part1 01 

 

 モット・ザ・フープル(Mott The Hoople)での活躍でも知られるイアン・ハンターIan Hunter)が、豪華なアーティストたちが多数参加したアルバム『Defiance Part 1』を2023年4月にリリースしています。 スタジオ・アルバムとしては2016年の『Fingers Crossed』以来7年振りになります。

 

ご存じのように、イアン・ハンターは決して有名なミュージシャンではなく、最大のヒット曲と言えば、デヴィッド・ボウイ(David Bowie)が楽曲を提供したモット・ザ・フープルによる”All the Young Dudes”になるのではないでしょうか?!

 

Mott-the-hoople 00

 

All the young dudes

 

このアルバムも、COVID-19によるパンデミックが発生したことによる”偶然の産物”であり、予め計画していた作品ではありません。 パンデミックが発生した2020年初頭に、このアルバムの制作を開始しました。 ロックダウンを創造的な機会と捉えて、コネチカット州の自宅の地下室で、長年のコラボレーターであるアンディ・ヨーク(Andy York)と共に新曲を書き、それをコンピューター、ギター、キーボードを使ってデモ音源を録音したそうです。

パンデミックの制約により、レコーディング・スタジオを使って通常のアルバム制作を行うことができなかったのです。

 

そこで、マネージャーのマイク・コバヤシ(Mike Kobayashi)とロックンロール・フォトグラファーのロス・ハルフィン(Ross Halfin)は、イアン・ハンターの友人であるミュージシャンに声をかけて、レコーディングに参加してもらうという提案をしたのです。

結果的には、このプロジェクトに参加したいという著名なミュージシャン達の賛同が得られたのです。 パンデミックの影響で暇を持て余していたミュージシャン達は、送られてきたデモ音源に思いもよらないパワーと創造性を加えてくれたのです。 その偶然の産物が『Defiance Part 1』として結実し、陽の目を見ることになったのです。

 

Ian Hunter 00

 

イアン・ハンターはプレス・リリースの中で、こう伝えています。

「みんな無駄に過ごしていた。新型コロナウイルスのせいだ。どこにも行けない。

俺たちはみんなに連絡し始めた。スラッシュがやり始め、メタリカのロバート・トゥルージロリンゴ・スターマイク・キャンベル、ジョー・エリオットも何曲か参加した。

ジョニー・デップジェフ・ベックが一緒にいるから、何曲かやりたい”と言っていた。

トッド・ラングレンのことは知っていて、昔トッドとツアーをしたことがある、彼は素晴らしい仕事をしてくれた。 ビリー・ギボンズも。終わりがない。

毎日電話がかかってきて、この人がやりたい、この人がやりたいと言ってくるんだ。

信じられない話しだよね。」

 

このプロジェクトにほぼ2年間の大半を費やしたことになります。 結果的には、多くの音楽関連のサイトや批評家から高い評価を得ることになりました。

 

イアン・ハンター曰く、

「このアルバムを『Defiance』(反抗)と名付けたのには、いろいろな理由があるんだ。

俺のような年齢の人間がアルバムを作るべきではないとか、くだらない、ばかばかしいこととかにね。まだ(俺の中に反抗心が)少し残っているんだよ」

と言う反骨心を表す意味だそうです。

 

□ Track listing;

  *) All tracks are written by Ian Hunter and Andy York, except where noted.

1.Defiance   (featuring Robert Trujillo and Slash)

2.Bed Of Roses   (featuring Ringo Starr and Mike Campbell)

3.No Hard Feelings   (featuring Johnny Depp and Jeff Beck)

4.Pavlov’s Dog   (featuring Stone Temple Pilots' Dean DeLeo, Robert DeLeo, Eric Kretz)

5.Don’t Tread On Me   (featuring Todd Rundgren)

6.Guernica   (featuring Mike Campbell and Joe Elliott)

7.I Hate Hate

8.Angel   (featuring Taylor Hawkins, Duff McKagan, Brad Whitford)

9.Kiss N’Make Up   (featuring Taylor Hawkins, Billy Bob Thornton, Billy F Gibbons)

10.This Is What I’m Here For   (featuring Taylor Hawkins and Joe Elliott)

11.I Hate Hate (Alternate Version)   (featuring Jeff Tweedy)

 

□ Personnel;

 Produced by Ian Hunter and Andy York

 

色々と批判はあるでしょうが、楽曲はスタイル上の統一性を維持しており、寄せ集め的な散漫な印象は受けません。ロッド・スチュワート(Rod Stewart)の様な少しハスキーなイアン固有のヴォーカルと、人間味あふれる歌詞が、いかにもザクザクとしたロックン・ロールのリフを通して展開されると言う点は首尾一貫していると思います。

 

今は亡き二人のミュージシャン達、2022年5月に旅立ったフーファイターズ( Foo Fighters)のドラマーであったテイラー・ホーキンス(Taylor Hawkins)と、2023年1月10日に突然逝去したジェフ・ベック(Jeff Beck)、の名前を連呼しているようには思いませんでした。

 

オープニングのタイトル・トラックの”Defiance”からして、イケてますね。 歌詞を見れば、もう83歳になるとは思えない”反骨精神”と言うかパンキッシュなスピリットが溢れています。 ”defiance”とは反抗的(挑戦的)な態度を表していますが、歌詞にはあちらこちらに”F”(例の4文字言葉の頭文字)が出てきます(笑) スラッシュ(Slash)の鋭いギターリフに導かれ、裏ではメタリカ(Metalica)のロバート・トルヒーロ(Robert Trujillo)のベースがくねくねとうごめいています。

 

□ “Defiance”   by Ian Hunter;

 

 

次の”Bed Of Roses”はかつて若かりし頃のパーティー・シーンが歌われています、「bed of roses」とは”とても楽しい事”を指す慣用句ですね。 イギリス人らしいダジャレ、アーサー王と円卓の騎士たちになぞらえて、キャメロット(Camelot;宮廷)とかランスロット(Lancelot;円卓の騎士の一人)、シャロットの貴婦人(the ladies of Shalott)と言った表現が出てきます(笑) 元ハートブレイカーズ( Tom Petty and the Heartbreakers)のマイク・キャンベル(Mike Campbell)のスライド・ギターとかマンドリンがいいアクセントになっています。 この曲大好きです!

 

□ “Bed Of Roses”   by Ian Hunter;

 

 

 

 

そして、今は亡きジェフ・ベック(Jeff Beck)による唯一無二のギターソロが飛び出す曲に続きます。 やはり存在感があります。 最後のアウトロでのギターソロ、やっぱり凄いです。

□ “No Hard Feelings”   by Ian Hunter;

 

 

次の”Pavlov’s Dog”では、再結成されたストーン・テンプル・パイロッツ (Stone Temple Pilots) のメンバー3人がサウンドを支えています。

□ “Pavlov’s Dog”   by Ian Hunter;

 

 

 

続く”Don’t Tread On Me”ではトッド・ラングレン(Todd Rundgren)が登場し、彼らしいトリッキーなギターワークを聴かせてくれます。

 

そして、”Guernica”は、もちろんあのパブロ・ピカソ(Pablo Picasso)の描いた絵(戦争の悲惨さと愚かさを訴えた白黒の絵画)を比喩的に使って現代の不確実さを訴えています。 ここでも、マイク・キャンベルのギターワークが冴えを見せていますね、本当に歌心のあるギタリストだと思います。 切々と訴えるようなバラードに仕上がっています。

□ “Guernica”   by Ian Hunter;

 

 

 

後半ですが、テイラー・ホーキンス(Taylor Hawkins)が3曲も参加しています。

”Angel”ではドラムス以外にピアノ、バック・ボーカルまで担当しており、ギターは二人、エアロスミス(Aerosmith)のブラッド・ウィットフォード(Brad Whitford)がスライド・ギターを加え、ワディ・ワクテル(Waddy Wachtel)がリードを豪快に弾きまくっています。 ヴォーカルにスティーヴン・タイラー(Steven Tyler)が加われば、まんまエアロスミス(Aerosmith)みたいな仕上がりの盛り上がるラヴ・ソングですね。 とても”ベタ”ですけどイイです。

□ “Angel”   by Ian Hunter;

 

 

 

続く”Kiss N’Make Up”は固有名詞が沢山出てくる語呂合わせの様な内容ですが、現代のアメリカ国内の分裂した状況を表現しています。 ZZトップ(ZZ Top)のビリー・ギボンズ(Billy Gibbons)がいつ通りの刺激的なギターリックを聴かせてくれます。

 

 

10曲目の”This Is What I’m Here For”では、自身のミュージシャン人生を振り返っているかのような内容の歌詞です。

□ “This Is What I’m Here For”   by Ian Hunter;

 

 

  All I wanted was a song I could sing

  A little music and a band that could swing

  These are a few of my favorite things

   <Chorus>

  'Cause this is what I'm here for

 

  私が欲しかったのは、歌える歌

  ちょっとした音楽とスウィングできるバンド

  これらは俺の好きなことのほんの一部だった

  だって、これが俺がここにいる目的だから

 

最後は、7曲目の”I Hate Hate”の別ヴァージョンになります。 予定になかったセッションだったのか、ウィルコ(Wilco)のリーダーであるジェフ・トゥイーディ(Jeff Tweedy)が参加しています。 オリジナルとさほど変わりはなく、2つのヴァージョンを収めた意図が不明です?!

 

さて、4月19日にリリースされる第2弾『Defiance Part 2: Fiction』も期待したいと思います。

 

 

□ Musicians;

1. Defiance

 Dane Clark: Drums

 Robert Trujillo: Bass 

 Slash: Electric, Rhythm and Lead Guitars 

 Dennis Dibrizzi: Background Vocal

 Andy York: Background Vocal

 Ian Hunter: Electric Guitar

2. Bed Of Roses

 Ringo Starr: Drums

 Tony Shanahan: Bass

 Mike Campbell: Acoustic and Electric Rhythm Guitars, Slide Guitar, Mandolin

 Andy Burton: Organ

 Rich Pagano: Tambourine

 Andy York: Background Vocals

 Ian Hunter: Piano

3. No Hard Feelings

 Dane Clark: Drums and Percussion

 Johnny Depp: Acoustic and Electric Rhythm Guitars, Slide Guitar, Background Vocals

 Jeff Beck: Lead Guitar

 Andy York: Electric Guitar, Bass

 Ian Hunter: Piano

4. Pavlov’s Dog

 Eric Kretz: Drums

 Dean DeLeo: Electric Rhythm and Lead Guitars, Acoustic Guitar, Slide Guitar

 Robert DeLeo: Bass

 Dennis Dibrizzi: Background Vocal

 Andy York: Background Vocal, Maracas

 Ian Hunter: Piano

5. Don’t Tread On Me

 Rich Pagano: Drums, Congas, Percussion

 Todd Rundgren: Rhythm and Lead Electric Guitars, Background Vocals

 Andy Burton: Organ

 Andy York: Bass

 Ian Hunter: Piano

6. Guernica

 Dane Clark: Drums and Percussion

 Mike Campbell: Electric Rhythm and Lead Guitars

 Joe Elliott: Background Vocals

 Andy Burton: Harmonium

 Andy York: Bass, Baritone Guitar, Background Vocal

 Ian Hunter: Piano

7. I Hate Hate

 Dane Clark: Drums

 Andy Burton: Keyboards

 Dennis Dibrizzi: Background Vocals

 Andy York: Baritone Guitar, Tambourine, Background Vocals

 Ian Hunter: Piano

8. Angel

 Taylor Hawkins: Drums, Electric Guitars, Electric Piano, Background Vocals

 Duff McKagan: Bass

 Brad Whitford: Slide Guitar

 Waddy Wachtel: 12-String Acoustic Guitar, Lead Electric Guitars

 Ian Hunter: Piano

9. Kiss N’Make Up

 Taylor Hawkins: Drums

 Billy Bob Thornton: Percussion, Lead and Backup Vocals

 Billy F Gibbons: Electric, Rhythm and Lead Guitars

 J.D. Andrew: Bass

 James Mastro: Electric Guitar

 Rich Pagano: Congas

 Andy Burton: Keyboards, Vibes

10. This Is What I’m Here For

 Taylor Hawkins: Drums

 Waddy Wachtel: Electric Rhythm and Lead Guitars

 Joe Elliott: Background Vocals

 Paul Page: Bass

 Andy Burton: Organ

 Andy York: Baritone Guitar

 Ian Hunter: Piano

11. I Hate Hate (Alternate Version)

 Dane Clark: Drums

 Jeff Tweedy: Electric Guitars and Bass

 Andy Burton: Keyboard

 Dennis Dibrizzi: Background Vocal

 Andy Burton: Organ

 Andy York: Tambourine and Background Vocal

 Ian Hunter: Piano