The Smile『A Light For Attracting Attention』 | Music and others

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 Wall of Eyes 00

 

 先日、初めて紹介しました、ザ・スマイルThe Smile)のデビュー・アルバムである『A Light For Attracting Attention』をあらためて取り上げたいと思います。

 

現在、活動休止中のレディオヘッド(the Radiohead)のリーダーでもあるトム・ヨークThom Yorke)が主体となって結成されたサイド・プロジェクトです。 3人構成の変幻自在なユニットですが、他のメンバーは同じレディオヘッドのメンバーであるジョニー・グリーンウッド(Jonny Greenwood)とジャズよりの先鋭的なジャンルで活躍してきたドラマーであるトム・スキナー(Tom Skinner)になります。

 

彼らが正式に我々の目の前に登場したのは、イギリスの代表的な音楽フェスティヴァル、グラストンベリー(Glastonbury Festival)が2021年5月22日に開催した有料配信イヴェント〈Live At Worthy Farm〉の中でのことでした。 事前に一切告知はなく、文字通りのサプライズ・デビューとなりました。

 

The Smile 07

 

本アルバムはデビューから1年ほど経った、2022年10月にリリースされました。 一言で言うのは難しいサウンドですが、個人的にはレディオヘッドの『Kid A』の延長戦上、発展形、のように聴こえました。 レディオヘッドのサイド・プロジェクトと言った位置付けと言われていますが、トム・ヨークにすれば今はこれが彼の目指すサウンドなんだと思います。 『Kid A』との連作とも言える『Amnesiac』のリリース以降は、バンドによる作品なのか、ソロ・プロジェクトなのか、境目があってないような作品のリリースが続いています。

 

ロックスターとして世に出た筈のトム・ヨークにも関わらず、全否定しているかのような方向の楽曲を発表し続けている点が他のアーティストとは一線を画しているように感じました。

 

□ Track listing;

All tracks are written by Lennon-McCartney, except where noted.

 

1."The Same"     4:19

2."The Opposite"     3:06

3."You Will Never Work in Television Again"     2:48

4."Pana-vision"     4:08

5."The Smoke"     3:39

6."Speech Bubbles"     4:16

7."Thin Thing"     4:30

8."Open the Floodgates"     4:29

9."Free in the Knowledge"     4:12

10."A Hairdryer"     5:17

11."Waving a White Flag"     3:47

12."We Don't Know What Tomorrow Brings"     3:16

13."Skrting on the Surface"     5:31

 

The Smile 01

 

□ Personnel;

 Produced by Nigel Godrich

Musicians;

 Thom Yorke – vocals (all tracks); synthesiser, piano, guitar, bass, vocoder, sequence, acoustic guitar

 Jonny Greenwood – synthesiser, guitar, piano, bass, keyboards, acoustic guitar, harp

 Tom Skinner – drums, percussion

Additional musicians

 London Contemporary Orchestra

     Hugh Brunt – orchestration

 

 

一聴した時には、レディオヘッドの『Kid A』や『Amnesiac』の延長線上にあるエレクトロニック・ミュージックの要素が強いロックを別ユニットで演っているだけなのかと思いました・・・・。

 

冒頭の”The Same”を聴いて連想したのは、以前紹介したベーシストのピノ・パラディーノ(Pino Paradino)のソロ・プロジェクト、『Notes with Attachments』の楽曲です。 楽曲の根幹を成すのが、リズム、ベースとドラムスによるリズム・パターンに他ならないからです。

楽曲ごとにアレンジががらりと変化するように、精緻に考え抜かれた音創りがほどこされているように思います。 その創造性を触発しているのは、まちがいなくボトムの中心にあるドラマーのトム・スキナーだと言えます。

 

□ “The Same”   by the Smile;

 

 

シーケンサー(演奏しているのは、トム・スキナーのようです)に導かれてスタートする淡色の世界が拡がるような楽曲です。 でも、そこにファンク色が感じられるミニマルなサウンドは印象的ですね。

 

 

つぎの”The Opposite”はトム・スキナーの精緻なドラミングが光る楽曲で、濃密なファンク色が感じられます。

 

そして、“You Will Never Work In Television Again”では、ガレージロック的なサウンドで初期のレディオヘッドを想起させて思わず”ニヤリ”としてしまいます。 この曲がリード・シングルとして2022年1月にリリースされ、その後”The Smoke”が続き、合計で6曲がシングルとしてリリースされました。

□ “You Will Never Work In Television Again”   by the Smile;

 

 

 

そのサウンドから一転して、静寂感漂う"Pana-vision"が始まります。そして、マイ・ファイヴァリットと言える”The Smoke”に続きます。 アフロビートな楽曲で、印象的なベース・リフが繰り返されて行きます。

□ “The Smoke”   by the Smile;

 

 

そして、ポスト・パンク調の"Thin Thing"で繰り返されるポリリズムは興味深いですね。

 

8曲目の”Open the Floodgates”、続く"Free in the Knowledge"ではピアノを中心に据えた弾き語りのバラードで静寂さを強調しており、アンビエント・ミュージック然とした感覚を印象付けています。

□ “Free in the Knowledge”   by the Smile;

 

 

そして、非常にシュールな歌詞を持つ"A Hairdryer"が連なります。 楽曲のタイトルと歌詞との関連性が見つからないのが不思議な感じです。

 

"Waving a White Flag"では、シーケンサーに甘美なストリングスが加わるエレクトロ・ミュージックの様な印象を受けます。

 

最後の曲、"Skrting on the Surface"までの4曲は、前半とは打って変わったビートを抑えたUKジャズやエレクトロ・ミュージックの系譜に連なるような感じがする楽曲で占められています。

この曲では、背後でうねりを感じさせるトム・スキナーのドラミングが目立っているように思います。

□ “Skrting on the Surface”   by the Smile;

 

 

 

 

今まで、彼等について直接触れたブログはありませんでした。 レディオヘッド(Radiohead)を熱心に聴いていた世代ではないからかもしれませんね(笑)。 本音では、デビュー当時のギター・バンドだった頃のレディオヘッドが懐かしいのかもしれませんが・・・・。

 

最新アルバムについてのブログは先にアップしています。

   2024年2月 The Smile 『Wall of Eyes』  (こちらです↓↑