スティーヴ・クロッパー『Fire It Up』 | Music and others

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  スティーヴ・クロッパーSteve Cropper)、1941年生まれの79歳。通算で12枚目のソロ・アルバム『Fire It Up』がこの4月30日にリリースされました。
 
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1960年代よりスタックス・サウンドの立役者として、ギタリスト、ソング・ライター、プロデューサー、そして、アレンジャーとして数えきれないほどのアルバムにクレジットされて来ました。 また、ブッカーT.&ザ・MGs(Booker T & the MG's)の創設者としてライヴでも活躍し、また、素晴らしい楽曲、”In the Midnight Hour ”(Wilson Pickett)、”Knock on Wood(Eddie Floyd)、”(Sittin On) The Dock of the Bay”(Otis Redding)、などの有名なヒット曲を創り出してきました。
 
手垢のついたお馴染みのサウンドに、時代を超越したグルーヴを織り交ぜた、彼にしか出せないいぶし銀のR&Bファンク・サウンド。 このamebaブログでも、前作にあたる2011年8月リリースの『Dedicated : A Salute To The 5 Royales』を取り上げています。
 
 
     2013年5月 Steve Cropper  『Dedicated』(ブログはこちら↓↑
  
 
純粋なオリジナル・アルバムではなくて、タイトルにあるように、スティーヴ・クロッパー自身が最も影響を受けた50年代に活躍した黒人R&Bヴォーカル・グループグループである、The "5" Royalesの楽曲に焦点を当てたトリビュート・アルバムでした。 1曲ごとに素晴らしいゲスト・ヴォーカリスト、スティーヴィー・ウィンウッド、ダン・ペン、デルバート・マクリントン(Steve Winwood、 Dan Penn、Delbert McClinton)と最高の人選でしたね!
 
ですから、更に遡って2008年に制作された元ラスカルズ(The Rascals)のリーダーであったフェリックス・キャヴァリエ(Felix Cavaliere)との連名のアルバム、『Nudge It Up A Notch』と次作の『Midnight Flyer』の続編のような位置付けかもしれません。 プロデューサーがジョン・タイヴァン(Jon Tiven)と言う共通項もあり、その当時のアウトテイクが今回陽の目を見ている点も繋がりを感じます。
 
COVID-19のパンデミックの下で、ジョン・タイヴンが保管していたそのアウトテイクをあらためて聴き直して、再構築して命を吹き込んだところから、このアルバム制作に発展したようである。 スタジオに集まりレコーディングした訳ではなく、リモート環境でMIDIファイルのやり取りで行ったようである。 マルチ・ミュージシャンのジョン・タイヴンがベース、キーボード、サックスを担当し、ナッシュビル在住のセッション・ドラマーであるナイオシ・ジャクソン(Nioshi Jackson)がドラムスで、ロジャー・C・リアリ(Roger Reale)が作詞&ヴォーカルと言う布陣でレコーディングしている。
 
そして、お馴染みのグルーヴ・マスターである、チェスター・トンプソン、アントン・フィグにオマー・ハキム(Chester Thompson, Anton Fig, & Omar Hakim)が数曲に参加しているのですが、スネアのチューニングで分かると思います。
 
とにかく、全編何も目新しいところはなく、度肝を抜くようなギター・ソロがあるわけではないです。 でも、バッキング・ギタリストとしての美学のようなものが端々に満ち溢れています。 同じリフやカッティングを真似しても同じようなグルーヴを産み出すことは出来ません(当たり前ですけど・・・・!)。
 
cropper-in-studio-2021
 
 
スティーヴ本人のインタビュー記事によれば、
     「このアルバムは、これまで出ているどの作品とも異なっている。古いグルーヴが溢れているが、
      これはロックダウンの間、頭のなかに何年もあったものをいじっていたんだ。」
と言うことらしいですね。
 
□ Track-listing*****
 1. Bush Hog, Pt. 1     Steve Cropper / Jon Tiven     01:14
 2. Fire It Up     Steve Cropper / Roger Reale / Jon Tiven     03:04
 3. One Good Turn     Felix Cavaliere / Steve Cropper / Roger Reale / Jon Tiven     03:46
 4. I'm Not Havin' It     Steve Cropper / Roger Reale / Jon Tiven     03:15
 5. Out of Love     Felix Cavaliere / Steve Cropper / Roger Reale / Jon Tiven     03:44
 6. Far Away     Steve Cropper / Roger Reale / Jon Tiven     03:28
 7. Say You Don't Know Me     Steve Cropper / Roger Reale / Jon Tiven     03:19
 8. She's So Fine     Steve Cropper / Paul Rodgers / Jon Tiven     03:10
 9. Two Wrongs     Steve Cropper / Roger Reale / Jon Tiven     03:13
 10. Heartbreak Street     Steve Cropper / Roger Reale / Jon Tiven     03:32
 11. The Go-Getter Is Gone     Steve Cropper / Roger Reale / Jon Tiven     03:12
 12. Bush Hog, Pt. 2     Steve Cropper / Roger Reale / Jon Tiven     01:29
 13. Bush Hog     Steve Cropper / Roger Reale / Jon Tiven     02:26
 
Steve_Cropper_2008
 
 
 
□ Personnel
  Steve Cropper - Guitar
  Nioshi Jackson - Drums
  Roger Reale - Vocals
  Jon Tiven - Bass, Harmonica, Keyboards, Saxophone, Vocals (Background)
 
  Guest musicians
    Chester Thompson, Anton Fig, & Omar Hakim - Drums
  Felix Cavaliere - Keyboards
  Beth Hooker - Vocals (Background) on "Far Away"
 
 
頭と最後は、インスト曲である”Bush HogPart1 でスタートして、、”Bush HogPart2とリプライズ(reprise)と言うか完全版??で幕を閉じます。 
 
 
このスィングするシャッフル・ビートと渦巻くオルガンの上をスティーヴのリヴァーブの効いたバリトン・ギターが自由に駆け巡る、もう最高のスタックス・サウンドの幕開けです。
□ ”Bush Hog, Pt. 1” by Steve Cropper ;

 

 

 
そして、タイトル・トラックであり、ファースト・シングルでもある2曲目の”Fire It Up”では、ブルーズ・ベースのシャッフル・ビートが弾むボトムスの上を、スティーヴのテレキャスターのダブル・ストリングのリードが鳴り響きます。(正確には、フェンダーのテレキャスターではなく、アンプ・メーカーであるピーヴィー(Peavey)社が製作したプロトタイプの” Generation Series ”と”Cropper Classics”の2タイプ) そして、歯切れのよいホーンが終盤に被さって来ます。 この曲がベスト・トラックですネ、個人的には。
□ ”Fire It Up” by Steve Cropper ;

 

 

 
続く”One Good Turn”はミッドテンポのソウル・バラッドで、正にかつてのブッカーT.&ザ・MGs(Booker T & the MG's)を彷彿とさせるルーミーなオルガンがいい味を出しています。
□ ”One Good Turn” by Steve Cropper ;

 

 

 
 
 
 
どんどん熱くなって行き、続く”I'm Not Havin' It”では正に汗に光り輝く正統派ファンクの面持ちです。 ギターとホーンとのコール&レスポンスでどんどんホットな展開になりますね。
 
中盤の5,6曲目の”Out of Love”と”Far Away”とはセットになったような曲で、ダンスフロアに向けて作られたかのようなソウル&ファンクな曲ですね。
 
そして、”Say You Don't Know Me”は、チャック・ベリー(Chuck Berry)のお家芸のようなコード・プログレッション(code progression)が登場する正統派のロックン&ロールですね。 アップライト・ピアノの転がる音が否応にも気分を高揚させてくれます。
□ ”Say You Don't Know Me” by Steve Cropper ;

 

 

 
 
続く”Shes So Fine”では、もうスティーヴのお家芸である奏法、マルチ・ストリングを駆使したギターリフが自在に飛び回ります。
 
そして、サード・シングルとしてカットされた”The Go-Getter Is Gone”は、イントロでホーンによる印象深いリフからキックされて、ベースがそのリフを引継いでユニゾンでループしながら進行して行きます。 ジェームス・ブラウン&JB's(James Brown & The JB's)の代名詞のようなグルーヴがどんどん加速して行きます。 パターンは、次に紹介しているインスト・ナンバー、”Bush Hog”と同じですけどネ・・・・。
□ ”The Go-Getter Is Gone” by Steve Cropper ;

 

 

 
 
全般的には、ヴォーカルがあまりにもオン過ぎるようなミキシングで、少し疲れるサウンドになっているように感じました。 でも、このインストは何度聴いてもカッコ良すぎますネ!!
□ ”Bush Hog” by Steve Cropper ;

 

 

 
 
 
 
 
最後になりますが、2011年当時に見つけたスティーヴ・クロッパーのインタヴュー記事について、ブログにアップしておりますが、とても興味深い昔の話が出て来ます。 ジェフ・ベック・グループ(Jeff Beck Group)の話は面白いですよ!
  
     2013年5月 『Steve Cropper 番外編』    (ブログはこちら↓↑