追悼 ジェイミー・オールデイカー(Jamie Oldaker) | Music and others

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エリック・クラプトンEric Clapton)らとの活動で知られる名ドラマー、ジェイミー・オールデイカーJamie Oldaker)が去る7月16日に闘病中であった肺癌のために旅立ちました。享年68歳。
 
エリック・クラプトンを長く聴いてきた人であれば、良くご存じのタルサ・サウンドのボトムを支えていたドラマーです。 ドミノス時代からの盟友であったカール・レドルCarl Radle)に声をかけて集められた、通称、タルサ・トップスTulsa Tops)の一員でした。 キーボード担当のディック・シムスDisck Sims)に、シンプルだがファットバックなドラマー、ジェイミー・オールデイカー(Jamie Oldaker)の3人が核となり、エリック・クラプトン復活作、『461 Ocean Boulevard』のエンジンとなったのです。 
 
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しかしながら、そのリーダー格であったカール・レドルは、79年に心機一転を図るエリックから突然バンド解雇を告げられました。。それから、僅か1年後にアルコールとドラッグの影響で37歳の若さで亡くなっています。 
 
私が最も敬愛し、何度となく聴いて耳コピーしたベーシストでした。
       『カール・レイドルと言うベーシスト』 (ブログはこちら↓↑)  
 
また、2011年12月には、エリックが日本公演中の際に、タルサ・トップスの2人目、ディック・シムスが僅か60歳で癌のために急逝しました。 スティーヴ・ウィンウッド(Steve Winwood)とのデュオでのライヴ・ツアーの当日、2011年12月8日、エリックがステージで彼の死去について触れて、当日のライヴを彼に捧げると言った時には目頭が熱くなりました。
 
そして、最後の一人であったジェイミー・オールデイカーも静かに旅立ちました。 ジェイミーは79年のバンド解体後は、ピーター・フランプトン(Peter Frampton)、キッスを脱退したエース・フレイリー(Ace Frehley)のバンドで活躍していました。 また、エリックにとっては融通の利くミュージシャンであったということもあり、80年代以降も何度なくライヴ、あの全世界的なイベントとなったライヴ・エイド(Live AID)や、スタジオ・レコーディング(J.J. ケールのトリビュート・アルバムである『 The Breeze: An Appreciation of J.J. Cale 』- ブログはこの辺りです↓↑)に請われて参加していました。
 
アメリカのオクラホマ州タルサ出身で、1951年生まれ。 仕事の傍ら、アマチュア・ミュージシャンとしてドラムスをプレイしていた父親の影響で、ジーン・クルーパ(Gene Crupa)、バディ・リッチ(Buddy Rich)などのジャズ・ドラマーに憧れ、10歳でスティックを手にしたと言われています。
 
その後、学生時代から地元タルサで演奏活動を始め、ボブ・シガー(Bob Seger)との共演をきっかけに、72年頃からプロ・ミュージシャンとしてのキャリアをスタートさせ、タルサ出身の有名なアーティストであるレオン・ラッセル(Leon Russell)やJ.J.ケイル(J.J. Cale)等とのレコーディングで活躍して知られる存在となりました。
 
タルサ・トップスにスポット・ライトを当てたのは、『461 Ocean Boulevard』のサウンドであり、彼ら自身はレイドバック(Laid Back)ではなく、タルサ・カントリー・ロック(Tulsa country rock)と呼んでいたようです。
 
エリックはドミノスでの盟友、カール・ラドル(Carl Radle)が送ってきていたデモ・テープの中にあった心地よいグルーヴと柔らかなサウンドに魅かれ、マイアミのクライテリア・スタジオ(Criteria, Miami, Florida)に呼び寄せたのです。
 
それから、数週間に亘るジャム・セッションを経て、楽曲としての形を成すものが次々と産まれて行ったのです。最初にレコーディングした曲がボブ・マーリーの”I Shot the Sheriff”だったとか。この曲を強力にプッシュしたのは、フロリダでセッション・ギタリストをしていて、後からイヴォンヌ・エリマン(Yvonne Elliman)と共にバンドの正式なメンバーとなったジョージ・テリー(George Terry)でした。
 
一説によれば、この曲はわずかに2テイクしか録音されておらず、その内のどちらかのテイクがアルバム用に採用されて、トラック・ダウンされたそうです。 それくらい、スタジオの中で自然発生的に沸き上がったバンド・メンバー間のケミストリーが素晴らしかったのだと思います。 アルバム自体も全米1位に昇りつめて、そのままワールド・ツアーに移り、74年に初来日を果たしています。
 
461 Ocean Boulevard』では、大胆にアレンジされた定番のブルーズにR&B、ゴスペル、そして、様々な音楽要素の入り混じったオリジナル曲とヴァリエーションに富んだ楽曲で構成されており、爆発的なヒットも頷ける内容でした。
 
当時は、レイドバック(Laid back)と云うワードで括られてしまい、”急がずくつろいで、リラックスして。”と言う辞書的な意味合いから、凄くダルでルーズなサウンドをイメージさせられました。 実際には、ドラムやベースなどのリズム楽器がきっちりタイトにリズムを刻み、その上で、リード・メロディ(ヴォーカルやリード楽器)が小節をいっぱいに使ってゆったりと大きくのるサウンドをイメージしています。
 
その『461 Ocean Boulevard』について書いたブログはこちらになります(↓↑)。
        
 
但し、ライヴ・ステージでは、ドラッグの代わりに大量に消費されるアルコールをエネルギーにしたかのような”ラフ”で”狂暴”なギター・ソロが延々と繰り拡げられる表と裏のような顔を見せていました。 だって、ギターの神様がいきなりアコギ抱えてステージに登場するわけですから、驚き以外の何ものでもありません。 忘れもしない、チャーリー・チャップリン( "Charlie" Chaplin )作の”Smile”で幕を開けるステージ、そりゃ初めて観ると驚愕と言うか落胆しますよね。
 
初めて、エリック・クラプトン&ヒズ・バンド(Eric Clapton & His Band )のライヴを観た時のブログはこちらです(↑↓)。 アルコール消費量は爆発的に増えていた時期でしたが、当時はそんなことすら感じませんでした(笑)!?
 
ところで、ジェイミー・オールデイカーのドラムスですが、柔らかさを感じさせるような技巧派ではなく、シンプルであまり装飾音(オカズ)を入れないベーシックなビートを刻むタイプです。
何回目かの来日公演のライヴの中で、”I Shot the Sheriff”の間奏部分のファイル・インで間違えてしまい、ドラミングが途切れた時のことを思い出します。 苦笑いしていましたね、プロのミュージシャンでも、何回も演奏している曲の中でこんなミスするんだと…。
 
 
個人的に印象的な曲は、リズムの部分で面白味のあるこの2曲でしょうか。学生時代にはバンドで取り上げました、勿論再現とまではいきませんでしたが!?
 
□ ”Motherless Children by Eric Clapton & His band

 

 

 
□ ”Steady Rollin’ Man by Eric Clapton & His band

 

 

 

 

 
 
2013年に久しぶりに来日した際のインタビューでは、自身のキャリアについて、「僕は自分のキャリアを振り返った時、楽しい人生だったと思うよ。 エリックもエースも愉快な男達だ。 僕はステージの後ろに座ってみんなを見ていた。 ステージで何が起きているのか見ながら楽しいと思っていたよ。」と語っていました。
 
 
オクラホマ人脈を駆使した最初のソロ・アルバム、『JAMIE OLDAKER'S MAD DOGS & OKIES』は2005年8月にリリースされました。 エリック・クラプトンを筆頭に、J.J.ケール(J.J.Cale)、ピーター・フランプトン(Peter Frampton)、タジ・マハール(Taj Mahal)、ヴィンス・ギル(Vince Gill)、ボニー・ブラムレット(Bonnie Bramlett)と多くのミュージシャンが客演しています。
 
 
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□ 『JAMIE OLDAKER'S MAD DOGS & OKIES』;
01. Wait Til Your Daddy Gets Home (Vince Gill)
02. Positively  (Eric Clapton)
03. Don't Let Your Feet Git Cold  (Taj Mahal)
04. Sympathy for A Train  (Willis Alan Ramsey)
05. Promises  (Zadig & Marcella)
06. Magnolia  (Tony Joe White)
07. Make Your Move  (Bonnie Bramlett)
08. Shotgun Shack  (Wiley Hunt)
09. Sending Me Angels  (Peter Frampton)
10. Time to Boogie  (Ray Benson)
11. Can't Find My Way Home  (Steve Pryor)
12. Stagger Lee  (Taj Mahal)
13. Daylight  (J.J.Cale)
14. Song for You  (Joe & Ellen)
15. Motormouth  (Willie Nelson & J.J.Cale)
16. Make Your Move revisited  (Bonnie Bramlett)

 

このアルバムは既に廃盤になっており、高額な値段が付いています(未入手です、残念ながら)。

 
とてもリラックスしたスワンピーな仕上がりで、ドブロが効いています。
□ Positively by Jamie Oldaker with Eric Clapton

 

 

 
 
 
オリジナルはボニー・タイラー(Bonnie Tyler)によって92年にリリースされています。 私はこのピーター・フランプトンのカヴァーの方が好きですけど・・・。
 
□ Sending Me Angels by Jamie Oldaker with Peter Frampton

 

 

 
 
 
 
 
 
 
J.J.ケールらしさ全開のダブル・トラックのヴォーカルが聴こえて来ると、もう独自の世界になってしまいます。
□ Daylight by Jamie Oldaker with J.J.Cale

 

 

 
ピーター・フランプトン、そして、晩年まで連絡を取り合っていたエリック・クラプトンからは弔辞が寄せられています。 特に、エリックがフォーマルな形でコメントを寄せることは珍しく、以下のサイトに掲載されています(ここです↓↑
 
 
特に、『461 Ocean Boulevard』のきっかけとなった、カール・レドル(Carl Radle) から送られt来たカセット・テープの話と、
 
Carl Radle, the wonderful man who played with me in the Dominos and knew about my predicament, sent me a message along with a cassette, saying “you have to hear these kids”, I listened and something woke up in me, I wanted to play again...
 
そして、 ジェイミー・オールデイカーのドラムスについて言及しているところです。 彼のスネアドラムのサウンドがベストであることと、抑制されたフィルが大好きだと・・・・。 でも、私が気になったのは、英語的な(英国的な??)表現である”he saved my bacon...”の下りですけど。
これは”窮地から救う”という意味になります。 そう、困った時にはいつも ジェイミーに連絡して参加してもらっていたということなんでしょうね。
 
Then another crisis, which separated us all for a while, and I was finding it hard to get back in the saddle, I called Jamie, and for the second time, he saved my bacon...
I have no trouble explaining or defining jamie’s music, it’s easy; to begin with it’s his sound, he has the best snare sound I’ve ever heard, he has the best restrained fills I’ve ever heard, and his bass drum is as solid as rock, he is unique, and the pocket is always perfect.
 
 
 
そうですね、1990年と91年に24回に亘り、聖地であるロイヤル・アルバート・ホール(The Royal Albert Hall)で行われた趣向を凝らしたライヴ公演の時にも、ブルーズ・バンドのバックでドラムを叩いています。
 
□ ”Worried Life Blues by Eric Clapton with the special blues band

 

 

 
 
 
 
ジョニ―・ジョンソン(Johnnie Johnson)のご機嫌なピアノ、そして、バディー・ガイ(Buddy Guy)にロバート・クレイ(Robert Cray)と豪華なゲスト陣の間でタイトな良いスネアの音がしています!
 
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いぶし銀とまではいかないまでも、エリック・クラプトンを長きに亘り支え続けてきたジェイミー・オールデイカーの冥福をあらためて祈りたいと思います。
 
         Much love and respect to ‘the man’ xxx