とても不思議な存在感のある、ノラ・ジョーンズ(Norah Jones)、サーシャ・ドブソン(Sasha Dobson)、キャサリン・ポッパー(Catherine Popper)という3名の女性シンガー・ソングライターによる、ガールズ・バンド、プスンブーツ(Puss N Boots)の6年振りのフル・アルバム、『シスター』(Sister)です。 全員、アラフォーなんだけど、どこか素人っぽい仲の良い姉妹の様な存在感があるトリオです。 前作のデヴュー・アルバム、『No Fools, No Fun』のリリースが2014年でした。
昨年には5曲入りのクリスマス・EP、『Dear Santa』が突然リリースされました。
知名度で言えば、圧倒的にノラ・ジョーンズに注目が集まりますが、それぞれの役割や存在感は均等であり、「今までにない”新しい挑戦”と言う旗印の下で、バンドとして進化し続けている。」ことを全員が楽しんでいるところが良いですね・・・。
演奏はすべて3人で、ギター、ベース、ドラムスの担当をトレードし合いながら、アマチュアっぽい”手作り感”を残した内容になっています。 私もアマチュアバンド時代には、練習の合間にベース・ギターからドラムスか、オルガン(ギター)に持ち場を変わり、ヘタウマなバンド・アンサンブルを楽しんだ記憶があります。
本職と言えるのは、ベーシストとして多くのアーティストのアルバム、ツアーに参加している最年長のキャサリン・ポッパーだけですから・・・・。
今回は全14曲中、メンバーによるオリジナル曲が9曲、一筋縄ではいかないカヴァー曲が5曲の構成になっています。
□ Tracking List *****;
1 Jamola Puss N Boots 03:46
2 It's Not Easy Puss N Boots 04:18 Amazon
3 Nothing You Can Do Sasha Dobson 02:46
4 Lucky Catherine Popper 04:15
5 You And Me Sasha Dobson 03:48
6 You Don't Know Norah Jone 04:05
7 The Great Romancer Sasha Dobson&Don Was 04:26
8 It's A Wonderful Lie Paul Westerberg in '94 03:15
9 Sister Puss N Boots 02:38
10 The Razor Song Catherine Popper 04:10
11 Angel Dream Tom Petty in '96 03:22
12 Same Old Bullshit Helen Rogers 04:13
13 Joey Johnette Napolitano 04:01
14 The Grass Is Blue Dolly Parton 04:13
◇ Personnel;
Produced by: Puss N Boots
Puss N Boots;
Norah Jones – vocals, electric guitar, fiddle
Sasha Dobson – vocals, acoustic guitar, bass, drums
Catherine Popper – vocals, bass, acoustic guitar
2014年の『No Fools, No Fun』はフォーキー且つカントリーの味わいが強かったのですが、今回のアルバムはもっと幅広い音楽性になっています。そして、3人のヴォーカルのそれぞれの個性がより際立っており、虜になる事間違いありません!
意図的なのでしょうが、いきなりのアンビエントなインスト曲からスタートします。 ディレイを掛けたギター、ロールするスネア、どこかU2っぽい墨絵の様な“ Jamola”です。 前作の『No Fools, No Fun』でのニール・ヤング(Neil Young)先生のカヴァー曲、“Down by the River“での下手ウマなエレキギター(しかも、ライブ)に驚かされましたが、更に進化していますね!
□ ”Jamola” by Puss N Boots ;
最初の2曲とシングル・カットされた”Sister”が全員による共作曲です。 日本での記事を見れば、”ノラ・ジョーンズ率いるガールズ・ユニット、プスンブーツが・・・・”と、言う書き方が示すようにノラ・ジョーンズへの注目度が高くなってしまいがちですが、今回のアルバム・タイトル通りの”姉妹(sister)”のような関係性を意図しているんですね。 間違った道に進もうとしている友人に対して、
このアルバムは、何とほぼ5日間で録り終えています。
”It's Not Easy”は、ノラがいつもの少し暗い囁くような独特のヴォーカルで良いメロディーを辿ります。 ノラがギター、サーシャがベース、キャサリンがドラムスでジャムの様な流れから1時間で産まれたそうです。 やはり、歌メロがいいのか、ずっと後まで尾を引く曲だと思います。
□ ”It's Not Easy” by Puss N Boots ;
基本的には、楽曲の作者がリード・ヴォーカルを取り、ギターを弾くパート構成になっています。
“ Nothing You Can Do”は、サーシャのヴォーカルとギター・リフが全体をリードして行く、パンキッシュなロックっぽい曲になっています。
続く、“ Lucky”は、アコギを使った優しさあふれる曲ですが、ポイントは3つのパートに分かれたハーモニーヴォーカルです。 そして、”You And Me”はサーシャがリード・ヴォーカルを担当する、ファンキーな曲調に仕上がっています。
こうやって聴き進むにつれて、ある偉大な歌姫たちの組んだトリオを思い出さずにはいられません。 そう、かつてブログで何回かに分けて取り上げた、リンダ・ロンシュタット(Linda Ronstadt)、ドリー・パートン(Dolly Parton)、エミルー・ハリス(Emmylou Harris)による完璧なるトリオです。
完璧な3人組とは? 『Trio』 ブログはこちらになります(↑↓)
5年遅れのリリース 『Trio Ⅱ』 ブログはこちらになります(↑↓)
発想がパンキッシュなミレニアム版のTrio ですね!
”Sister“は、アルバム・タイトル・トラックでもある曲で、軽快なメロディに、誤った道に進もうとしている友人への憂いと温かい愛情を綴った歌詞が上手くフィットしています。メンバー3人による共同作業で生まれた楽曲で、ヴォーカルも3人で分け合っています。 メインのヴォーカルとドラムスはサーシャ・ダブソン、ギターはノラ・ジョーンズ、ベースはキャサリン・ポッパーが担当しています
□ ”Sister” by Puss N Boots ;
やはり、三者三様のヴォーカル、ノラのダスキー(dusky)な囁き、サーシャの軽快なさえずり、キャサリンの低いブルージーなトーン、歌心に溢れたミクスチャーが最大の魅力であり、抗し難い何とも言えない魅力があります・・・・。
後半部分には、これまた一筋縄では行かないようなカヴァー曲が並んでいます。
リプレイスメンツ(The Replacements)のフロントマンであったポール・ウェスターバーグ(Paul Westerberg)の99年のアルバム、『Suicaine Gratifaction』に収められていた”It's A Wonderful Lie”、これまたダークな感じです。 キャサリンが男目線の歌詞をそのまま歌っているところがミソです。
そして、亡きトム・ぺティ(Tom Petty)がハートブレイカーズ名義(Tom Petty and the Heartbreakers)で96年にリリースした『She's the One』に2ヴァージョン収録されていた”Angel Dream”、悲痛な心の叫びの様なノラのヴォーカル、このアルバムのハイライトではないでしょうか!
□ ”Angel Dream” by Puss N Boots ;
そして、90年にスマッシュ・ヒットとなったオルタナ・バンド、コンクリートブロンド(Concrete Blonde)の”Joey”が続き、最後がカントリー界のアイコンであるドリー・パートン(Dolly Parton)の99年リリースのグラミー賞に輝いた37枚目のアルバム『The Grass Is Blue 』のタイトル・トラックになります。
2019年にドリー・パートンが”MusiCares Person Of The Year”に選出された際のトリビュート・ライヴで、この曲を演奏しています。 3人のヴォーカルがとても自然に重なり合い、この歌の抒情的なニュアンスを巧く表現しています。 シンプルな歌詞、対比的なこのフレーズいいですね。
And the sky is green
And the grass is blue
And I don't love you
And the grass is blue
□ ”The Grass Is Blue” by Puss N Boots ;