The Raconteurs 『Help Us Stranger』 | Music and others

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 ジャック・ホワイト(Jack White)、ブレンダン・ベンソン(Brendan Benson)、ジャック・ローレンス(Jack Lawrence)、パトリック・キーラー(Patrick Keeler)の4人からなるラカンターズThe Raconteurs)のサード・アルバムが11年振りにリリースされました。前作の2ndアルバム『Consolers of the Lonely』が2008年なので、何でまた??が本音です。
 

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一筋縄ではいかないソロ活動に勤しんでいたジャック・ホワイトが、『Boarding House Reach』ツアーの中断期間である昨年7月に、いつもの4人でスタジオ入りしてこのレコーディングを決行しました。ブルージーなガレージロックは、シンプルですがよりヴァリエーションに富んだ内容になり、あっという間にチャート1位に駆け上がりました。
 
このグループでの活動は、ジャックにとっては必要不可欠なものだと思います。かつての The White StripesDead Weatherでは意識的に制約を課した活動を行って来たと言えます。近年のソロ活動でもそれは顕著だと言えます。 前作『 Boarding House Reach 』では曲作りに大きな制約を課す一方、スタジオではプロトゥールズを導入して、従来こだわって来たヴィンテージと言われるアナログ機器に距離を置きました。(ブログはこちらになります↑↓
 
昨年末に、Third Man Recordsより2ndアルバム『Consolers of the Lonely』の発売10周年記念のDelux Editionがリリースされました。 そのエディションに添えられた新録の2曲がアナログ・シングルとしてリリースされ、活動再開が公になり、その後、初の単独来日公演が実現しました。
 
 
そのきっかけは、『Boarding House Reach』レコーディング中に、今一つきちんとハマらない曲“Shine The Light On Me”を、ブレンダン・ベンソンに聴かせて感想を求めたことだったのです。
 
     ジャック・ホワイト     「むしろラカンターズ向きの曲だと思ったんだ。」
     ブレンダン・ベンソン    「〈ラカンターズの曲っぽくない?〉って訊かれたとき、自分のほうがうまくやれると思ったよ(笑)。」
     ジャック・ローレンス    「そしたら、みんなができるちょうどいいタイミングだったんだ!」。
 
 昨年の7月、ジャック・ホワイトがまだ『Boarding House Reach』のツアー中にもかかわらずスタートしたセッションからは、あっという間に30曲ものデモが産まれたという。 そこから、曲をブラッシュ・アップして、ナッシュヴィルのサード・マン・スタジオでレコーディングを行い、間髪入れずにワールド・ツアーを敢行したのだから、やはり彼らの持っているエナジーと瞬発力は並外れたものがあると言えますね。
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 □ Track listing;
  *) All songs written by Dan Auerbach and Patrick Carney
1. "Bored and Razed"     3:35
2. "Help Me Stranger"     3:36
3. "Only Child"     3:41
4. "Don't Bother Me"     2:53
5. "Shine the Light On Me"      3:28
6. "Somedays (I Don't Feel Like Trying)"      4:06
7. "Hey Gyp (Dig the Slowness)" (Donovan cover)     2:25
8. "Sunday Driver"3:38
9. "Now That You're Gone"4:01
10. "Live a Lie"2:20
11. "What's Yours Is Mine"2:49
12. "Thoughts and Prayers"4:42
 
Personnel;
 The Raconteurs
   Jack White – vocals, guitar, piano, synthesizer
   Brendan Benson – vocals, guitar, percussion, harmonica
   Jack Lawrence – bass guitar, guitar, synthesizer, backing vocals
   Patrick Keeler – drums, percussion, backing vocals
 Additional musicians
   Dean Fertita – piano, synthesizers, guitar, organ
   Lillie Mae Rische – violin
   Scarlett Rische – mandolin
   Joshua V. Smith – backing vocals, organ
 
 
 
とにかく”カッコいい”サウンド、レトロな感じはまるでしない! 70年代、80年代の様々なバンドの影響が伺えるが、多種多様な音楽性を内包し融合したサウンドは聴いていてもずっと心の奥に残ります。
 
バッド・フィンガー(Bad Finger)、チープ・トリック(Cheap Trick)、T.レックス(T. Rex)、ザ・フー(The Who)、もちろん、ゼップ(Led Zeppelin)辺りの影響は強く感じる部分はありますね。
 
過去のアルバム2枚に比べると、ジャック色が程よく薄れて、特にドラム辺りのグルーヴ感覚がよりナチュラルになり柔軟になった気がします。
 
 
耳に残った曲について触れておきましょうか・・・・。
 
冒頭1曲目、“Bored And Razed”は上に挙げたザ・フーを彷彿とさせる象徴的な曲です。 小気味よいリフが繰り返され、グルーヴが加速して行きます。
 
□ ”Bored RazeAndd” by The Raconteurs

 

 

 
次の曲はタイトル・トラック、”Help Me Stranger”です。 このヴィデオ・クリップは今年の来日公演の合間に千葉県君津市で撮影されました。 何とUNDERCOVERのデザイナー高橋盾が率いる「UNDERCOVER PRODUCTION」による制作だそうです。 ファンキーでラテン・フレイヴァ―が感じられる曲ですが、グルーヴは骨太な感じです。
 
□ Help Me Stranger” by The Raconteurs;

 

 

 
 
 
アコーステックなバラッドである”Only Child”では、二人のフロントマンによるツイン・ヴォーカルが活きています。 ただ少しキーボードが出過ぎている気がします。
 
突っ走るハードな”Don't Bother Me”は、ジャックの手癖でもあるパワー・コードで押し通しており、コーラスのリフレインがアクセントになっています。
□ Don't Bother Me” by The Raconteurs;

 

 

 

 

 
 
続く“Shine The Light On Me”は、ジャックのソロ・アルバム用に書き上げた曲だったようです。 ピアノか主導して行き、多重コーラスが出てくるところは、何かあのクィーン(Queen)を想い起こさせて、プログレっぽさがする曲です。
□ Shine The Light On Me” by The Raconteurs;

 

 

 
 
そして、正統派のブルーズ・ロック調バラッドの”Somedays (I Don't Feel Like Trying)”が続きます。
 
7曲目の”Hey Gyp (Dig the Slowness)”は唯一のカヴァー曲ですが、アシッド・フォーク?のドノヴァン(Donovan)のあまり知られてはいない曲だったので驚きました。1965年リリースの2ndアルバム収録の曲ですが、アレンジはオリジナルとあまり変わっていません。 アコギとハーモニカとで構成されたシンプルな曲だけに大きく変えようが無かったのかもしれませんね。ドラムスによる細かな譜割りのリズム・パターンが面白い効果を産み出しています。
 
8曲目の”Sunday Driver”がベスト・トラックではないでしょうか?? このバンドの持つ独特なケミストリーが良く表れていて、強烈なリフとメロディーとが交互に押し寄せるらしい曲です。
□ Sunday Driver by The Raconteurs;

 

 

 
 
 
9、10曲目はギターリフ全開の曲が立て続けに登場します。 特に、”Live a Lie”の疾走感はチープ・トリックあたりを想い出させてくれます。
 
What's Yours Is Mine”でのリフや音色は、『Led Zeppelin II』の頃のジミー・ページ(Jimmy Page)そのものではないでしょうか、ドラムスの重さは違いますけど・・・・。
 
 
最後の曲の”Thoughts and Prayers”は、『Led Zeppelin III』のフォーク・ロックへのアプローチを即座に連想させてくれます。 フィドルは、サードマン・レコーズよりジャックのプロデュースでデヴューしたシンガー・ソング・ライターのリリー・メイ・リシュ(Lillie Mae Rische)が担当しています。 彼女の妹のスカーレット・リシュ( Scarlett Rische)もマンドリンで参加しています。 この曲だけ、プログレッシヴ・フォークみたい聴こえる瞬間がありますけど(笑)。
□ Thoughts and Prayers” by The Raconteurs;

 

 

 
 
様々なアイデアやアプローチを試した前作『Consolers Of The Lonely』を踏まえたうえで、デヴューの頃の初々しい衝動(感性)を取り戻すために敢えてこのような短期間での制作にトライしたのではないでしょうか?? とにかく、分かりやすくてカッコいいサウンドは多くの人に指示されるでしょうね、同じ時期に聴いていたブラック・キーズ(The Black Keys)の『Let’s Rock』(ブログはこちらです↓↑)のような徹底したヴィンテージ・ロックの細部に亘る探求心とは違う世界です。
 
皆さんはどちらがお好みですか??
 
 
 
以前にジャックホワイトについて書いたブログはこんなものがありますので、のぞいてみて下さい。
 
     ジャック・ホワイト 不自由下の自由とは?(ブログはこちら↓↑
 
     ジャック・ホワイト 『Blunderbuss』(ブログはこちら↓↑