The Black Keys『Let’s Rock』 | Music and others

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 5年間の空白を経て、2014年リリースの『Turn Blue』以来のアルバムが発表されました。 ブラック・キーズThe Black Keys )は健在でした。 デンジャー・マウス(Danger Mouth)の元から離れたセルフ・プロデュースの作品となっています。 2006年リリースの4枚目、『Magic Potion』以来のことですが、サウンドの要ともいえるチャド・ブレイクTchad Blake)はきっちりとその冴えを見せています。
 
 
ここ5年間の間、完全に活動休止となり、個々のソロ・プロジェクトに注力しており、ほぼ解散したのかと思っていました。 もう一度カム・バックしてくれた事には感謝です!
 
“ヴィンテージ・ロック”と単純にカテゴライズ出来ない程に、”際(きわ)”っぽいポジョンを取っている彼ら、その感覚は健在でした。
 
いままでのアルバムとは違って、丹念なプロデュース・ワークは施されず、最低限のオーヴァーダブだけと言う、非常にローファイな音に徹しています。 
 
かつてのゼップ(レッド・ツェッペリン)の様なディストーション・ギターとか、60年代後期のガレージ・ロックのグルーヴとか、ロカビリー風味の2ビート、スワンピーなサザン・ロックのテースト、そして根幹にある根強いブルーズ・ロック感覚がアルバムの中に息づいています。
 
もう完全に袂を分かって別々の道を歩んで行くのではと思っていたけれど、二人で懐かしいスタジオ、ダン・オーバック所有の”Easy Eye Sound Studio”に入り、自然発生的に浮かんだ楽曲のアイデアを27曲ほどレコーディングしました。
 
この中から最終的に12曲に絞り込んで行ったわけですが、二人以外に参加したのはバッキング・コーラスを担当した2人だけであり、キーボードを基本的には使用していません。
 
タイトルが『Let’s Rock』と言った一見原点回帰を想起させるようなものになっているけれど、決して感傷的な気分になったり、ノスタルジーに浸っている訳ではなくて、20数年間やり続けてきた自分たちの音楽への信念を表しているんだと思います。
 
Let’s Rock』と言うタイトルはあるニュースから借用したもので、テキサス州の刑務所で死刑が執行された際に当の囚人が間際に叫んだ最後の言葉らしいです
 
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Track listing
  *) All songs written by Dan Auerbach and Patrick Carney
1. "Shine a Little Light"     3:16
2. "Eagle Birds"     2:40
3. "Lo/Hi"     2:57
4. "Walk Across the Water"     3:55
5. "Tell Me Lies"     3:40
6. "Every Little Thing"     3:20
7. "Get Yourself Together"     3:56
8. "Sit Around and Miss You"     2:40
9. "Go"     2:26
10. "Breaking Down"     3:25
11. "Under the Gun"     3:16
12. "Fire Walk with Me"     2:58
 
 
◇ Personnel;
 The Black Keys
   Dan Auerbach – lead vocals, guitars, bass, co-producer
   Patrick Carney – drums, percussion, co-producer
Additional performers
   Leisa Hans – backing vocals
   Ashley Wilcoxson – backing vocals
Production
   Tchad Blake – mixing engineer
   Richard Dodd – mastering engineer
   M. Allen Parker – engineer
   Marc Whitmore – engineer
 
ただ、彼等の持ち味はシンプルさの裏にある練りに練られた細やかな意匠にあったと思うので、それを潔く捨て去った本作が意味するのは、やり切った後に何を今後続けて行くのかという”難しさ”にぶつかった”苦しさ”の様に受け止めました。 
これからも試行錯誤は続くのか、それとも、更なる新しい試みにチャレンジし続けるのか、注目して行きたいと思います。
最も彼等らしいと思うのは、3曲目の”Lo/Hi”でしょうか?! ギターの音の重ね方、このディストーションのかかったギター・リフ、彼等のアイドルだったジェームス・ギャング(James Gang)を想い出します! 当時のサウンドはもっと平面的な音創りでしたけどね。 ギターの鳴りはこの頃を理想としているように思います。
□ Lo/Hi” by The Black Keys

 

 

 
 
 
 
そして続く”Walk Across the Water”は、70年代初頭のグラムロックの主役だったTレックス(T. Rex)の香りが漂うラヴ・ソングです。バックで鳴り響くストリング・アンサンブルの様な音は、シンセサイザーではなくヴィンテージのドラムマシーン(MTI Auto Orchestra drum machineーAnalog)のストリング・パッドを使っているそうです。 このこだわり感には恐れ入ります。 この曲が私にとってのベスト・トラックですね。
□ Walk Across the Water” by The Black Keys

 

 

 
 
さらに、”Tell Me Lies”ではR&Bマナーに則ったマイナー調のバラッドでソフトな世界に引きずり込まれます。
 
Every Little Thing”でのリード・ギターのディストーションの掛け方なんて、もう懐かしい『 Led Zeppelin II』の世界の再現フィルムのようですが、そんな単純な意匠ではないことが良く分かります。
□ Every Little Thing” by The Black Keys

 

 

 
 
 
Get Yourself Together”あたりでは、サウンド空間の処理の仕方に、職人、チャド・ブレイク(Tchad Blake)の冴えを魅せられてニヤリとするしかありません。 ヘッドフォンで聴くと細部の処理の仕方に思わず唸るしかありませんね。そして、フェイクではない本当のヴィンテージ感覚が素晴らしいですめ。
 
□ Get Yourself Together” by The Black Keys

 

 

 
8曲目の”Sit Around and Miss You”は2分40秒と短めの曲ですが、ダン・オーバック(Dan Auerbach)が昨年発表したソロ・アルバム『Waiting on a Song』の中のテイストに似ており、意外にもビートルズ(The Beatles)風のカントリー・ロックです。 メロディーラインが良くて癖になりそうです!
 
□ Sit Around and Miss You” by The Black Keys

 

 

 
 
 
 
最も演奏時間の短くシンプルなタイトルの”Go”、前々作の『El Camino』のイメージが強く残る楽曲で分かり易いキャッチ―な曲ですね。
□ Go” by The Black Keys;

 

 

 
 
 
 
 
そして、1曲置いた“Breaking Down”ではイントロで流れるエレクトリック・シタールの響きに一瞬虚を突かれますが、甘いハチロク調のバラッドとガレージロックとが繰り返されます。
□ Breaking Down” by The Black Keys;

 

 

 
ほぼ同時期に聴いていた、ジャック・ホワイトJack White)率いるラカンターズ(The Raconteurs)の『Help Us Stranger』の方が遥かに分かり易く、パワーコードで轟音がガツンと来るサウンドでした。 この2つのアルバムをプレイリストにして繋げて聴くと、とても対照的で面白かったですネ。 
 
同じようにアナログ、ヴィンテージにこだわりを持つアーティストですが、やはり好対象です。
 
ただ、全体的にドラムスの音が軽い仕上がりで、ドラム・マシーンとミックスされている曲が多くて、パトリック・カーニー(Patrick Carney)の存在感が薄いのが気になります。 リハーサルのサウンドを聴くとそんな心配は吹き飛ばされますが・・・・。
 
もう一度あの傑作アルバム、『Brothers』の様な猥雑でスケール感のあるアルバムを制作して欲しいと思います。
 
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