サンタナ 『Africa Speaks』 | Music and others

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ついに梅雨が明け灼熱の夏がやって来ました、だからズバリこの音楽が似合うと思います! 
最強無敵のラテンロック・バンド、この形容詞が付けられるのは、やはりこの人、カルロス・サンタナCarlos Santana)しかいないでしょう!。
 
バンドとしての前作が2016年の『Santana IV』、アイズリー・ブラザーズ(The Isley Brothers)とのコラボレーション作、『Power Of Peace』が2017年と相変わらず精力的な活動を続けています。 今回の新作は、アルバム・タイトル通り、アフリカのリズム(グルーヴ)に対するアプローチです。 この”アフリカ”と言うキーワードがどのような経緯で俎上に上がり、この躍動感とエスニックなグルーヴに溢れたアルバムに結実したのか、ウェブ上にアップされたインターヴュー記事などから推測してみました。
 
カルロス・サンタナの今年の1月に受けたインターヴューでは、「不安、分離、不協和音が渦巻く現代社会では、アフリカの音楽(リズム)の持つ周波数は、人々に希望、勇気、喜びを与えると思う。」 そんな音楽を導き出す為に使ったのが、自身が1988年頃ツアー先のパリで大量に購入したアフリカ音楽のCD、およそ100枚からピックアップして作成したプレイリストだった。 カルロスはこれを”テンプレート”(Template)と呼んでいる。
念頭にあったのは、おそらくはリリース20周年となる、99年リリースの爆発的な大ヒット作となった『Supernatural』のアフリカ・ヴァージョンではないでしょうか?! 何と言っても、グラミー・アワード総なめで、アメリカ国内だけで1500万枚もの売上に達したモンスター・アルバムですから。
 
このテンプレートからピックアップした楽曲を、現在のバンドでレコーディングしたのだが、何か足らないと感じて一旦保留にした。  『Supernatural』の様にゲスト・ヴォーカリストを加えるのはどうかと考えて、ヴォーカリストをウェブサイト等でサーチしていた際に巡り合った一人がマヨルカ出身のスペイン人シンガー・ソングライター、ブイカConcha Buika )である。 あくまで、1、2曲のみの客演になるはずだったのだが、あれよあれよという間に大半の曲でリード・ヴォーカルや共作を行うようになって行った。
 
Santana_Buika_00.
 
カルロスが買い求めたCDからピックアップしたプレイリストにある200曲の中から、妻のシンディ・ブラックマンCindy Blackman Santana)、ブイカ、そして、リック・ルービンRick Rubin)と共に聴きながら50曲に絞り込んだそうである。 その後スタジオに入り、僅か10日間で49曲をレコーディングしたという密度の濃さである。 プロデュースをリック・ルービンに委ねて、その中から11曲がセレクトされて、『Africa Speaks』に結実したのである。
昨年には、アフロ・ビートの後継者と言われるフェラ・クティFela Anikulapo Kuti)の息子である、シェウン・クティ&エジプト80(Seun Kuti & Egypt 80)のアルバム、『Black Time』に客演しており、当然の流れではあったのだろうか?!
 
初期のサンタナの代名詞とも言える曲、”Jingo”もナイジェリア出身のパーカッショニスト、ババトゥンデ・オラトゥンジ(Babatunde Olatunji)のカヴァーだから何の違和感もない筈だろう。
 
Track listing
1."Africa Speaks"    (Carlos Santana, David Axelrod, Buika)4:47
2."Batonga"    (Carlos Santana & Buika)    5:43
3."Oye Este Mi Canto"    (Carlos Santana, Buika, John Ademola Haastrup)    5:58
4."Yo Me Lo Merezco"    (Carlos Santana, Buika, Jay U Xperience, Stoneface, Drago)    6:12
5."Blue Skies"    (Carlos Santana, Buika, Laura Mvula, Mike Odumosu)    9:08
6."Paraísos Quemados"    (Carlos Santana, Buika, Mohammed Jabry)    5:59
7."Breaking Down the Door"    (Carlos Santana, Manu Chao, Buika, Drew Gonsalves, Ivan Duran and Rafael de Leon)    4:30
8."Los Invisibles"    (Carlos Santana, Buika, Rachid Taha, Steve Hillage)    5:54
9."Luna Hechicera"    (Carlos Santana, Buika, Ismaël Lô)    4:47
10."Bambele"    (Carlos Santana, Buika, Philipp Kullmann, Bojan Vuletic, Michael Timo Ehnes)    5:51
11."Candombe Cumbele"    (Carlos Santana, Buika, Easy Kabaka Brown)    5:36
 
 
◇ Personnel;
Carlos Santana     Guitars, Vocals (Background)
Concha Buika     Vocals
Cindy Blackman Santana     Drums
Karl Perazzo     Congas, Percussion, Timbales
Tommy Anthony     Guitar (Rhythm)
Benny Rietveld     Bass
David K. Mathews     Hammond B3, Keyboards
Salvador Santana     Keyboards
Ray Greene     Trombone, Vocals (Background)
Andy Vargas     Vocals (Background)
Laura Mvula     Vocals
Rick Rubin     Producer
 
 
アルバムの先頭を飾るのが、タイトル・トラックの”Africa Speaks”です。 いきなり”Batuka”か”Jingo”の様なリフが飛びかい、一気に世界観が変わって行きます。 ブイカの圧倒的なヴォイスが色彩感を一変させて、地中海を越えて一気に北アフリカまで連れて行ってくれる。
 
この曲のベースは、キャノンボール・アダレイ(Cannonball Adderley)によるアフロ・ジャズ・アルバム、68年リリースの『Accent on Africa』がヒントになっているとのことである。
 
□ ”Africa Speaksby Santana

 

 

 
 
次の”Batonga”は、2拍3連のラテン・パーカッションが炸裂する、お家芸とも言えるラテン・ロックです。 とてもキャッチーな曲で、サンタナのギターが縦横無尽に駆け巡ります。 ブイカのヴォーカルとユニゾンで鳴り響くギターが圧倒して行きます。
 
□ ”Batonga by Santana

 

 

 
 
 
3、4曲目はパーカッションが主導する曲が続きます。 後半からワウワウを効かせたサンタナのギターがカットインして、一気に加速します。 殆ど暴走寸前に聴こえるのですが、これがサンタナの真骨頂でしょうね! 老いる事を知らないのか、正に不老不死のような存在に見えてしまいます。
 
 
5曲目、”Blue Skies”は、9分を超える最もサンタナらしい曲と言えます。 静と動とのコントラストが際立つ曲ですが、そこにブイカのヴォーカルが加わると全く別の世界が拡がり、一気にアフリカの大地が目に浮かびます。 
 
前半はリリカルでジャジーな雰囲気からスタートし、やがてギター2本がなだれ込んでくると、完全にスタジオ・ジャムの様なブルースロックに変わり、再度元の静の世界に戻ります。
 
□ ”Blue Skiesby Santana

 

 
続いての”Paraísos Quemados”は、終始右チャンネルで刻まれる16ビートのギター・カッティングとファンキーなベースのリフに導かれるいかにもらしい曲です。
 
Breaking Down the Doorはアコーディオンのイントロに導かれスタートします。 タンゴのようでもあり、途中でマリアッチやサルサの要素が入り組んできて多様性を秘めたスタイルで進みます。 このミックス感覚はサンタナの持ち味ですから、意図したものではなく自然と湧き出てくる”本能”でしょうね。 決して学究的にアフリカの音楽に向き合って出て来たものではないと思います。
□ ”Breaking Down the Door by Santana

 

 

 
Los Invisibles ”ですが、オリジナルは、アルジェリア出身のシンガーであるラシッド・タハ(Rachid Taha)がソロ・アーティストに転進し、元ゴングのスティーヴ・ヒレッジ(Steve Hillage)にプロデュースを任せていた頃の楽曲のようです。 北アフリカ伝統のライ・ミュージックにロック、パンクのテイストが組み合わされた匂いが残っています。 一応??、アラブ音楽の伝統が根付いた曲になっています。
□ ”Los Invisibles by Santana

 

 

 
続く”Luna Hechicera”は、セネガル出身のイスマエル・ロー(Ismaël Lô)の楽曲ですが、そのワールド・ミュージック的な香りはあまり残っていないように聴こえます。 オリジナルを知らないので・・・・、少しギターが出過ぎかもしれませんネ。
 
10曲目”Bambele ”ですが、クレジットを見る限りはセルビアやドイツ出身のアーティストの名前が記されていますが、全く情報がありません。 テンポを落としたバックでずっとパーカッションが鳴り響いています。 他の曲に比べると、少し特徴がないように感じました。
 
最後の曲”Candombe Cumbel ”ですが、イージー・カバカ・ブラウン(Easy Kabaka Brown)、この名前だけは記憶にありました。 昔、ニューミュージック・マガジンで鍛えられたお陰でしょうが(笑)、ナイジェリア・ハイライフやジュジュの最高峰のアーティストですね。 ですが、内容は??です。
□ ”Candombe Cumbel by Santana

 

 

 
終盤の3曲あたりは、さすがにネタ切れになったようで、どれも特徴があまり無く変わり映えしない展開になっています。 勢いに任せて、一気に50曲近くレコーディングすれば起こり得ることですよねー。
 
ワールド・ミュージックの上っ面だけ借りてきた(搾取だ!)と批判を受けたアルバムは過去にあります。 ポール・サイモン(Paul Simon)の『Graceland』は当初は批判の目に晒されました。 現在は再評価されていますが・・・・・。
 
カルロス・サンタナ自身には、「アイデアだけを借りて、巧く咀嚼して自分の血や肉にしてしまおう。」と、言った考えは多分なかったように思います。 確かに、今回のミュージック・ソースは、ツアー先のパリで大人買いした大量のワールド・ミュージックのCDですが、触発されただけでしょう!?
 
アウトプットされた結果は、サンタナのオリジナルにしか聴こえませんから、その出自が追記されなければ正に”サンタナ”ミュージックそのものでしょう。
 
 
先日、音楽雑誌を立ち読みした際に、サンタナのオリジナル・メンバーであり、リンゴ・スター・オールスター・バンド(Ringo Starr & His All-Starr Band)のメンバーとして来日中であったグレッグ・ローリー(Gregg Rolie)のインタヴューに興味深い下りがありました。 
 
音楽業界におけるカルロス・サンタナ(Carlos Santana)のポジションは強大なもので、レコード・セールスや観客動員において確固たる地位にあり、彼の同意なしには何も決められないのだと。 
オリジナル・サンタナの結成50周年記念のリユニオン・ツアーだったり、ウッドストック50周年記念ライヴへの出演など全てが、カルロスの返事(気分??)一つで決まるため、周囲の関連するメンバーやスタッフ達はひたすら息をこらして見守るしかないそうである。
 
かつて、あのジョン・マクラフリン(Mahavishnu John McLaughlin)ですら、アルバム『Love Devotion Surrender』(邦題;「魂の兄弟」)リリース当時、ワールド・ワイドなジョイント・ツアーを望んだがカルロスが首を立てに振らず、実現しなかったそうである。
 
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