この前のブログで、ロビー・マッキントッシュ(Robbie McIntosh)の初ソロ・アルバム『Thanks Chet』を紹介したので(ブログはこちら↓↑)、チェット・アトキンス(Chet Atkins)関連で一押しのアルバムを取り上げて見ます。
まだチェット・アトキンスが存命中だった頃に、マーク・ノップラー(Mark Knopfler)が二人でのデュオ・ツアーでの共演を経てレコーディングされたコラボレーション作である、『Neck add Neck』です。
個人的にはとても意外な組み合せであり、過去にあったジェリー・リード(Jerry Reed)、レス・ポール(Les Paul)、マール・トラヴィス(Merle Travis)、ドク・ワトソン(Doc Watson)などとのコラボとは明らかに違う印象を受けました。
85年にリリースされた様々な名前のあるギタリストとの共演を収めたアルバム、『Stay Tuned』は今聴くと少々違和感を感じざるを得ません・・・・・。 クロスオーヴァー(または、フュージョン)の真っ只中にある薄っぺらな打ち込み主体のキラキラしたサウンドをバックに、名手との共演を果たしているのですが、印象に残る曲がないのです。
同行の諸氏はご存知でしょうが、人権擁護団体であるアムネスティー・インターナショナル(Amnesty International)が主催するベネフィット・コンサート、シークレット・ポリスマンズ・ボール(The Secret Policeman's Third Ball)の87年のステージにおいて、マーク・ノップラー(Mark Knopfler)とチェット・アトキンス(Chet Atkins)が共演を果たしたのです。 その曲が、本アルバムにも収録されている1924年発表の美しいスタンダード曲、”I’ll See You In My Dreams”(邦題;夢で逢いましょう)なのです。 当時、これを聴いて一発で痺れました(鳥肌モノでした!!)
□ ”I’ll See You In My Dreams ~ Imagine” by Chet Atkins with Mark Knopfler at The Secret Policeman's Third Ball;
□ Track-listing *****;
1."Poor Boy Blues" <Paul Kennerley> 4:01
2."Sweet Dreams" <Don Gibson> 3:24
3."There'll Be Some Changes Made" <William Blackstone, Benton Overstree> 6:28
4."Just One Time" <Don Gibson> 4:11
5."So Soft, Your Goodbye" <Randy Goodrum> 3:16
6."Yakety Axe" <Boots Randolph, James Rich, Merle Travis> 3:24
7."Tears" <Stéphane Grappelli, Django Reinhardt> 3:54
8."Tahitian Skies" <Ray Flacke> 3:18
9."I'll See You in My Dreams" <Isham Jones, Gus Kahn> 2:59
10."The Next Time I'm in Town" <Mark Knopfler> 3:21
□ Personnel;
Chet Atkins – guitar, vocals
Mark Knopfler – guitar, vocals
Larrie Londin – drums
Guy Fletcher – drums, bass, keyboards
Edgar Meyer – bass
Steve Wariner – bass
Mark O'Connor – fiddle, mandolin
Paul Franklin – steel guitar, pedabro, dobro
Floyd Cramer – piano (track 6)
Vince Gill – backing vocals
□ Production;
Mark Knopfler – producer
全10曲ですが、選曲の妙に、ナッシュビルの腕達者揃いのバックバンドの面々と聴かなくとも中味が分かってしまうくらいの陣容ですね。
まずは1曲目の”Poor Boy Blues”ですが、91年のグラミー賞において、見事に最優秀カントリー・コラボレーション賞ヴォーカル部門(Best Country Vocal Collaboration)で選出されました。 耳慣れない名前ですが、通常一緒に演奏しないアーティストによる質の高いカントリー・ミュージック・コラボレーションに与えられる賞として、1958年に設立され、当初はグラモフォン賞と呼ばれていたそうです。
□ ”Poor Boy Blues” by Chet Atkins with Mark Knopfler;
2曲目は1955年リリースのドン・ギブソン(Don Gibson)作によるカントリー・バラッドですが、正にスウィートで美しいインスト作品に仕上げています。 カントリー・ミュジックの殿堂(Country Music Hall of Fame)に女性として初めて選ばれたパッツィー・クライン(Patsy Cline)の最後のヒット曲であり、不慮の死を遂げた彼女の感情までも湧き出るような切ない演奏だと思います。
続く”There'll Be Some Changes Made”は私の一押しのベスト・トラックです。 1920年代に発表されたジャズのスタンダード曲で、あのビリー・ホリデイ(Billie Holiday)もレコーディンしています。 ウェスタン・スウィング風にアレンジしたものですが、二人のギタリストの間で滑らかなギターリックが交換される様は惚れ惚れしてしまいます。
特に終盤のフレーズとピッキングの素晴らしさには絶句してしまいます。 二人の間で交わされているであろう”軽口”みたいなものなんでしょうね・・・・・。
a parody version that references the Dire Straits song "Money for Nothing" ...
□ ”There'll Be Some Changes Made” by Chet Atkins with Mark Knopfler;
2曲目に続き、カントリー・クラシックとの呼べる1960年発表のドン・ギブソンの作品、”Just One Time”ですね。 この方、レイ・チャールズ(Ray Charles)のカヴァーにより大ヒットとなったを書いたりと、本当に偉大なコンポーザー兼シンガーと言えます! チェット本人はヴォーカルは本職ではありませんが、この味のある歌声も良いですねー。
折り返しのインスト曲、“So Soft, Your Goodbye”は91年のグラミー賞で Best Country Instrumental Performance を受賞した美しい曲です。 ナッシュビルでソングライターの殿堂入りを果たしたランディ・グッドラム(Randy Goodrum)による曲です。 フィンガー・ピッキングの正確さ、美しさが堪能できる曲ですね!、“So Soft, Your Goodbye”
□ ”So Soft, Your Goodbye” by Chet Atkins with Mark Knopfler;
続いて、”Yakety Axe” は1965年のアルバム、 『More of That Guitar Country』 で一度発表されていますが、今回はアレンジを変えて、且つ、歌詞を付け加えています。 エレクトリック・ギターによるカントリー・ピッキング、ミュートとピッキングの組み合わせの妙、しかも、マークとチェットのピッキングのコントラストが良く分かります。
□ ”Yakety Axe” by Chet Atkins with Mark Knopfler;
1937年にステファン・グラッペリ(Stéphane Grappelli)とジャンゴ・ラインハルト(Django Reinhardt)の二人のよって作られた古い曲、”Tears”を巧くアップデートしています。 オリジナルに忠実なアレンジになっていますが、端正な曲に仕上がっていると思います。
そして、1曲置いて、“I'll See You in My Dreams”(邦題;夢で逢いましょう)は1925年発表のスタンダード・ナンバーです。 数限りない秀逸なカヴァー曲が沢山リリースされています。
チェット自身は、マール・トラヴィス(Merle Travis)とコラボしたアルバム、『The Atkins – Travis Traveling Show』(1974年リリースで、the 1974 Grammy Award for Best Country Instrumental Performance に輝く良い演奏です!)で発表しています。
□ ”I'll See You in My Dreams” by Chet Atkins with Mark Knopfler;
この曲を聴くと即座に思い出すシーンがあります。2002年に執り行われたジョージ・ハリスン追悼コンサート(The Concert for George)のエンディングで、ジョー・ブラウン(Joe Brown)がウクレレを弾きながらこの曲を演奏しました。 ジョージ・ハリスンがこよなく愛したこの曲、シンプルな演奏で余韻を残すように演奏されていました。
□ ”I'll See You in My Dreams” by Joe Brown at The Concert for George;
そして、最後の曲””はマーク・ノップラーのオリジナル曲で幕を閉じます。 ゲストのヴィンスギル(Vince Gill')がテナー・ヴォイスでハーモニーを付け、ポール・フランリン(Paul Franklin)ノスティール・ギターの演奏が光る仕上がりになっています。
□ ”The Next Time I'm in Town” by Chet Atkins with Mark Knopfler;