先生は私の顔を困ったように見ながら結果を伝えた。
マンモトーム検査の傷への配慮の言葉を勘違いし、
ぬか喜びする私に癌だと告知するのだからタイミングが悪すぎたと思う。
先生ごめんね(笑)
人の話は最後まで聞くようにします。
非浸潤性乳管がんは全摘してしまえばその後の治療は無し。
全部摘出し、病理検査の結果が乳管から癌が出ていなければOK。
リンパにはまず飛んでないと思うと先生は言う。
先生の経験の中で今までDCISの診断でリンパに飛んでた患者は1人だから、よっぽどないと思うとのこと。
マンモトームで結構多めの石灰化部分の細胞をとったけれど、その全てがまだ乳管内に留まっていたことから非浸潤のままでいてくれているの可能性が高いこと。
乳頭は残せますか?の私の問いに先生は表情をまた曇らせた。
“治療や手術の方針は他の先生方とも相談して決めるのだけれど、
私の癌は乳頭の近くまで来ている。
万が一にも乳頭に癌があったらと考えると、残すことは得策ではないという意見の先生方が多い。
年齢もまだ若いだけに整容性を考えたら残したいとは思うので、患者本人である私の意見も聞き対処しようとはおもうけど・・・”
先生の言葉はいつも分かりやすく、そして不安を聞く前に払拭してくれるので安心する。
まず他の先生の意見も交え私に伝えてくれること。
乳頭を残したいと願う人が多いのだなと推測できること。
リスクを教えてくれること。
落ち着いて考えるための助言をくれる。
頭のいい人っていうのは端的にマトを得た言葉をくれるのだと思う。
私の決断は一択だ。
乳頭も含め右胸は全摘で。
迷いなくそう言った。
先生は私の言葉を聞いて心なしか安心したような顔を見せたように感じた。
きっと乳頭を取ることも、はたまた全摘も拒否してきたら先生は説得する気だったのかもしれない。
初期で見つかったこと。
不幸中の幸いなのだ。
選択肢もなく辛い抗がん剤や放射線、ホルモン療法を行わなくてはいけない方々を思えば。
切って終わりなんてラッキーだ。
切るのは胸だけれど、無くなるのは癌なのだ。
まだ見ぬ未来に乳頭や乳房を残すことで、不安やリスクまでも残したくはなかった。
想像していた結果だったとはいえこの告知日の私の演算能力はかなりハイスペックだったと思う。
人はピンチが訪れると処理能力が上がるのかも。
やたら大切なものがクリアに見えて、不要なものがどうでもよくなっていくような感覚だった。
こうして私は病を得た。