所謂パラレルワールドってやつです。
その子はどの世界でも必ず家族から虐待されていて、心も体も痛めつけられてシム以下の扱いをされて育って、それでも自由を求めて、ティーンになったら家を飛び出すんです。
死因は餓死だったり、絞殺だったり、世界によって違えど いずれも家族からの虐待によるもの。
その子は絶対ティーンで亡くなる運命なんです。
未来がないんです。
若者になれずに人生を終える。
月曜日
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【キルシュお兄さん、お久しぶりです。お兄さんもカイザもお元気ですか。実は最近 保護したお馬さんのことでキルシュお兄さんに相談があってメールしました。保護したお馬さん、なんだかすごくパニックになってて逃げ回ってて、どうすればいいのかわからなくて……キルシュお兄さんにお馬さんとお話してほしいんです。お時間ある時に、ブリンドルトン・ベイにある私達のお家に来てくださいませんか】
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カッパーデール高校
キルシュ「うっ…………おはようございます……」
キルシュ「えっと……すみません、急用が入って……連絡するのも忘れてしまって……」
校長「なんか嘘くさいね、信じられないね。ていうかさ、学校には来てたんじゃないの?カデックくんとフーくんから聞いたよ、木曜日の朝は校門前で君を見かけたって。おかしいよね?学校に来てから急用が出来たんなら、教師に一声かけるもんだよね?ホントは学校に隠れてて授業サボったんじゃないの?怒らないから、ホントのこと言ってみなよ」
キルシュ「………………」
校長「うわっ!君の両親から聞いたとおりだね……都合が悪くなると自分に非はありません、悪気はなかったんですって感じで良い子ぶって、自分可哀想アピールするって……そういうの良くないと思うね。そうやって周りを欺いてると、ろくな事ないね。素直に自分の非を認めて謝罪するということを君は覚えるべきだね」
キルシュ「……あ……」
キルシュ「親を……呼ぶ……」
校長「一人暮らしをしてると言えども、君はまだ子供だからね。子供が間違った道に進まないよう軌道修正するのは教師や親の役目だね」
キルシュ「…………………」
【必ず連れ戻す】
キルシュ「え……」
【お前が楽しく暮らしてるというだけで腹が立って仕方ない】
【お前は一生私達の奴隷】
【逃さない】
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ブリンドルトン・ベイ
キルシュ「ああ、久しぶりダイアナちゃん」
ダイアナ「お父さんとお母さんもキルシュお兄さんに会いたがってるの、お家に上がって上がって」
キルシュ「じゃあ、お邪魔します」
女性「……あら、貴方……」
キルシュ「え?」
女性「……何でもないわ。はじめまして、私はキャサリン・フェニー。カイザの件では娘がお世話になりました」
キルシュ「宜しくお願いします」
キャサリン「まあ……確かに動物が好きなシムは、動物と心を通わせることが出来るって聞いたことがあるわ」
キルシュ「あはは……あの、それで問題の馬というのは……」
アラン「ああ、案内しよう」
キルシュ「仔馬か……」
キャサリン「あっ……また逃げてしまったわ……」
アラン「見ての通り、物音や声がしただけで逃げてしまうんだ……何を恐れているのかわかれば対処が出来るし、君に話を聞いてもらいたくてね……」
キルシュ「なるほど……とりあえず話しかけてみます」
仔馬(ビクッ)
キルシュ「あ……大丈夫、脅かすつもりはないから……ただ、お前の話を聞きたいだけなんだ。俺はキルシュっていうんだ、宜しくな」
仔馬(……キルシュ……?)
キルシュ「そう、キルシュ。キルシュ・ブルーム」
キルシュ「ワイルドソニックっていうんだな、格好良い名前だ」
アラン「本当に動物と話せるのか」
ダイアナ「もう、だから言ったじゃない!本当に話せるって!」
クルーク(ふふん、キル兄が褒められてます!ボクも鼻が高いですよー!)
キルシュ「うん、なんだ?」
ワイルドソニック(あのね、わたくち……別の世界から、来たんでしゅ)
キルシュ「…………どういうこと?」
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ワイルドソニック(わたくち……ここじゃない世界の牧場で飼われてたんでしゅ。でも……飼い主しゃん達がお引越しして……新しいおウチに入った瞬間……目の前が真っ白になって……気づいたら仔馬の姿になって、この世界にいたんでしゅ)
ワイルドソニック(言葉にするのが難しいんでしゅけど……なんか、違うって……違和感があるんでしゅ。わたくちがここにいる違和感。それに、前に住んでたおウチに行っても全然違うシムが住んでましゅし……わたくちが知ってる世界と似てるのに違うんでしゅ。これが噂の平行世界ってやつなのかなと思いまちた)
キルシュ「なるほど……?」
ワイルドソニック(わたくち、どうすれば良いのかわからなくて困ってて……そうしたらここのシムさん達に保護されたんでしゅけど……なんでかわかんないでしゅけど、他のシムさん達に拒絶反応が出ちゃうんでしゅ。なんだか無性に怖くなって、つい逃げちゃうんでしゅ)
キルシュ「そっか……でも俺には大丈夫なのか?」
ワイルドソニック(あい!キルシュしゃんには、なぜか拒絶反応が起きましぇん!それに、わたくちの飼い主さんと同じニオイがして安心するんでしゅ!)
キルシュ「同じ匂い……」
キルシュ「えっと……あの子、ワイルドソニックという名前があるみたいだ」
ダイアナ「名前があったんだ!勝手にイデアって名前つけちゃってた」
キャサリン「名前があるということは飼い主がいるのかしら?」
キルシュ「飼い主はいたみたいなんですけど……この世界の何処にもいないって……」
キャサリン「亡くなってしまわれたってこと……?可哀想に……他には?」
キルシュ「今は、他のシムと触れ合うと拒絶反応が起きてしまうみたいなんです……俺は……なんか、前の飼い主と匂いが似てるみたいで平気みたいですが」
アラン「うーん、なるほど……拒絶反応か……何らかのトラウマだろうか……しかし参ったな……シムに慣れてもらわないと、里親が見つからないし……」
キルシュ「…………」
アラン「おお、ありがとう」
キルシュ「噂?」
キャサリン「お隣さん、牧場スタッフセンターで働いていて……よく貴方の話をしてるのよ。キルシュっていうスタッフの派遣を断られるほど悪名高い馬主がいるって」
キルシュ「え……」
キャサリン「アロガンというチェスナット・リッジ一の馬主さん?そのシムが牧場スタッフセンターに注意喚起して、派遣を止めさせたって。相当悪い子ってネットでも噂になってるけど……全然そんな素振りもないし、やっぱり噂は噂ね」
アラン「おいおいキャサリン、ネットの噂話なんて真に受けるもんじゃないぞ」
キャサリン「そうね」
キルシュ(…………牧場スタッフの派遣を断られたのは、アロガンの嫌がらせってことか……)
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240220/00/black-jack-1011/50/07/j/o1080060715403682046.jpg?caw=800)
アラン「アロガンというシムのことはあまりよく知らないが、きっと若い才能に嫉妬でもして嫌がらせでもしてるんだろう……しかし牧場スタッフが雇えないというのも大変じゃないか?私の知人にボランティアで牧場の手伝いをしているシムがいるんだ。もし良かったら、そのシムに頼んで君の牧場の手伝いに行ってもらおうか?」
キルシュ「え……いいんですか?」
アラン「ああ、カイザの件からお世話になっているからな」
キルシュ「ありがとうございます、助かります……!」
ブルーム牧場
ワイルドソニック(あい!)
シュバルツ(………………)
ワイルドソニック(どうなんでちょ……そもそも、どうちて別の世界に飛ばされちゃったのかもわかんないでしゅし……)
シュバルツ(…………………)
キルシュ「………………」
シュバルツ(……ボク イガイ ノ ウマ……)
キルシュ「ワイルドソニックにヤキモチ妬いてんの?仲良くしてやってくれよ、アイツも別の世界から飛ばされてきて不安がってるんだわ」
シュバルツ(………………ムゥ)
ゼーレ(シュバルツ、大人ゲナイゾ)
ワイルドソニック(子供扱いしないでくだちゃい!わたくち、仔馬の姿になってるけど、ホントは大人のレディーなんでしゅからね!)
クルーク(はわ……すみません……)
シュバルツ(……キルシュ ノ アイボウ……ボクダケ……)
キルシュ「うんうん、俺の相棒はお前だけだよ。ほら、あーん」
キルシュ「よし、良い子だ」
ワイルドソニック(……なーんか、ムカつきましゅね)
キルシュ「ああ、ご飯か。シュバルツはちょっと待っててな」
シュバルツ(エッ)
ワイルドソニック(あい!!)
ゼーレ(シュバルツ、完全ニ不貞腐レテルナ)
クルーク(同じ馬だから余計に妬いてるんでしょうねぇ……これは暫くは大変ですよ……)
ゼーレ(動物 ニ モテモテ ナノモ大変ダナ)
クルーク(妬いてますよ)
ゼーレ(妬イテルナ)
ナハト「めぇ……めめぇ」
ミルヒ「メッ!メェ」
シュバルツ(エッ、カンガエスギ……?ダイジョウブ ダカラ、アンシン シロ?ウン……)
キルシュ「別に厄介ではないけど……ただまあ、ワイルドソニックは何とか元の世界に帰してやれないかなとは思ってる」
キルシュ「ワイルドソニックな、変なあだ名つけるな」
カイザ(奴隷よ、私がラマ・ザ・ゴッドであることは覚えているか?)
キルシュ「毎日毎日 神だのゴッドだの聞かされてんだから忘れようがねえよ」
カイザ(いや、その……この場合のラマ・ザ・ゴッドとはサイエンス・ラマという意味だ)
キルシュ「サイエンス……勿論覚えてるさ」
キルシュ「平行世界の研究……あっ」
キルシュ「確かに……メモもまだ沢山あったし、何か情報があるかもな。ありがとよカイザ、明日早速あの研究所に行ってみるわ」
カイザ(カカカッ!神のお告げに深く感謝するが良いぞ、奴隷!)
※明日の更新はお休みします。