月曜日 放課後


キルシュ「カイザ!お前、今何歳なんだ!!
カイザ(ほう……性懲りもなく私にまた年齢を訊くか……病院送りにされたいようだな……)

キルシュ「いいから言ってくれ!!何歳なんだ!!」
カイザ(………どうやら…………神の寿命を知ったようだな……1歳……だが……季節が夏に変わるその日……要するに再来週の日曜日……私は2歳になり……天に帰るのだよ)


キルシュ「天に帰る……じゃあ、やっぱり……サイエンス・ラマは2年しか生きられないのか……」
カイザ(サイエンスではない!!ラマ・ザ・ゴッドと呼びたまえ!!)

シュバルツ(キルシュ!カイザ、ナツ ニ ナッタラ、シンジャウノ!?)
キルシュ「……そうらしい……」
カイザ(神を無視するな!!


キルシュ「な……なんとか出来ないのか?病院で治療してもらうとか、薬で治せるとか……」
カイザ(病院などではなんともならんのだよ。神とは強く、そして儚いもの……我々ラマ・ザ・ゴッドには この薄汚れた地上は合わないということだ……)

シュバルツ(ボク、カイザ ト、モット、ナカヨクナリタイ!シンジャヤダ!)
カイザ(これが神である私の運命なのだよ……)

クルーク(神様のくせに弱気ですね!!)
カイザ(神だからこそだ……己の運命を深く深く理解しているのだよ)

キルシュ「………………」


キルシュ「普通の病院が駄目なら……お前を作り出した研究所は?お前の体を一番理解しているのは そこにいた奴らだろ?そいつらなら治療法とか知ってるんじゃ……」
カイザ(ああ……確かに神をこの地に繋ぎ止める食物の開発をすると言っていたな……)

キルシュ「つまり寿命を伸ばす餌ってことか!?その餌は!?」
カイザ(私がその地にいる間には完成はしていなかったな……頓挫したか、あるいは知らぬ間に出回っているか……)

キルシュ「わからないってことか……じゃあお前がいた研究所の名前や場所はわかるか?」
カイザ(カカカッ!!知るわけなかろう!!私は地上に舞い降りてすぐに他の神殿に移されたのだからな!!)
キルシュ「あー、生まれてすぐに売られるなり何なりされたってことか……仕方ないな……自力で見つけるしかないか……」


カイザ(……見つけてどうするつもりかね)
キルシュ「決まってんだろ、お前の寿命を引き伸ばす方法を見つけるんだよ」

カイザ(無駄なことを……貴様のような無力な子供に何が出来るというのか)
キルシュ「やってみないとわからないだろ」

カイザ(結果は目に見えている……他の神々も命尽き果て、天に帰ったという話を聞く……つまりはそういうことだ。方法は何もない、無駄な足掻きになるだけだ。これが神の運命なのだよ!!)
キルシュ「無駄だろうがなんだろうが、こんな話を聞いてジッとしてられるかよ!!」
カイザ(運命に抗うとは……愚かなりシムの子よ……)


キルシュ「……お前自身はどうなんだよ。このまま死んでもいい、生きていたくないって思ってるのか?」
カイザ(これは運命なのだよ、私の意思は関係な)

キルシュ「運命云々関係なしに、お前自身は生きていたいのか生きていたくないのかって聞いてんだよ」
カイザ(……私は……)


カイザ(…………………もっと……生きていたい……この地上は、地上に住むシムは薄汚れている…………しかし私はこの世界の醜さしか知らぬ……だが醜さと美しさは表裏一体、美しい一面もある筈なのだ。私は長く地上に留まり、それを見たい……)
キルシュ「つまりもっと長く生きて世界を見たいってことだな、わかったよ」
カイザ(…………)





火曜日


シュバルツ(キルシュ、カイザ、ナツ ニ ナッタラ、シンジャウ……?)
キルシュ「……今のままだったらな……」

シュバルツ(タスケラレナイノ……?)
キルシュ「わからない……わからないけど、1%でも助けられる可能性があるならそれに賭けたいよな…………シュバルツ、またあちこちに行くから お前に乗せてもらうことになるけど……いいかな」


シュバルツ(モチロン!!
キルシュ「ありがとな」





カッパーデール高校 


先生「よし、今日は理科の授業だ!!カウプラントについて解説しようじゃないか!カウプラントとは科学の結晶!!牛であり植物でもある生き物だ!!カウプラントは狂暴でシムを食べることもあるが、奴らから搾れるエキスは凄まじい能力を秘めており……」





 昼休み


男子生徒「カウプラントだって!面白いから育ててみたいな!」
爽「うちにはカウプラントがいるよ。よくケーキを出してシムを釣ってるんだ」
男子生徒「こわっ!!

キルシュ(皆、カウプラントの話でもちきりだな……でも今はカウプラントよりカイザを助ける方法が知りてえよ……)


ディラン「キルシュ、なんだか元気ないな……なにか悩んでるのか?」
キルシュ「ああ……ちょっとな…………そういやディラン、サイエンス・ラマって知ってるか?」

ディラン「ウチにはいないけど話は知ってるよ。この間ロックの牧場で亡くなったのが、そのサイエンス・ラマだってな……ウール収穫の商売道具として作られた、2年しか生きられない短命なラマ……命をなんだと思ってるんだって感じだな……」
キルシュ「…………」


ディラン「そういや、サイエンス・ラマを作ったラボ……誰もいなくなったって話だぞ」
キルシュ「えっ」

ディラン「ある日を境に神隠しにあったように科学者達が一斉に消えたらしい。もぬけの殻になったラボには皆が不気味がって近寄らないんだってさ……まああくまでも噂だけど」
キルシュ「……ちなみにそのラボの名前や場所ってわかるか?」

ディラン「うーん、そこまではわからないな……」
キルシュ「そうか……」

キルシュ(科学者が誰もいなくなった……クソ、これじゃ寿命を引き伸ばす餌の情報も聞き出せねえ……その研究所に何か……情報や餌とか残ってねえかな……)





フィンチウィック 


キルシュ(この間の店員はサイエンス・ラマを飼ってるみたいだったし……何か知ってるかもしれねえ)


キルシュ「すみませ……あれ……」
クルーク(店員さんが違うシムになっています!!)

キルシュ「あの……一昨日の黒髪の店員さんは……」
店員「ああ、娘なら飼っていたラマが死んだらしくてね。購入したペットショップにクレーム入れに行ってるよ」
キルシュ「っ……」


キルシュ「ラマ……亡くなったんですか……」
店員「アタシは止めたんだけどねえ……サイエンス・ラマなんてよしなって。サイエンス・ラマを作ったパラレル研究所もシムが一斉にいなくなったし、きっとまともな研究所じゃないんだよ」

キルシュ「パラレル研究所……それがサイエンス・ラマを作った研究所の名前ですか?」
店員「そうだよ」


キルシュ「その研究所、何処にあるかわかりますか?」
店員「さあ、知らないね。でも有名なところだが検索でもすれば出てくるんじゃない?」
キルシュ「なるほど……どうも、ありがとうございます」


キルシュ「パラレル研究所、パラレル研究所…………おっ、ヒットした。ご丁寧に住所も書いてある……けど……マジで科学者達が一斉に消えてるんだな…………カウプラントやサイエンス・ラマといった遺伝子組み換え生物を数多く生み出してきたが、科学者達が失踪…………カウプラントもここが作ったのか……とりあえず行ってみるか、何かわかるかもしれないし」





パラレル研究所 


キルシュ「ふう、こんな遠いところまでお疲れさんシュバルツ。疲れてないか?」
シュバルツ(ダイジョウブ、ボク、ジキュウリョクスキル、タカクナッタ。ツカレテモ、スグ、カイフク!)
キルシュ「ははっ、凄いな!」


ゼーレ(ココニ神様助ケル方法アルカナ……変ナ気配ハ感ジルケド……)
キルシュ「変な感じ……まさか霊的な何かとか……?」

ゼーレ(ソンナンジャナイ……タダ、コウ……ココジャナイ何処カニ繋ガッテルヨウナ……)
キルシュ「ここじゃない何処か……?」
ゼーレ(ウーン……ヨクワカンナイ……)


キルシュ「とりあえず入ってみるか、何かあるかもだし」
クルーク(キル兄はボクがお守りしますとも!!)


キルシュ「うわ、デカい扉……平行世界へのゲートとか書いてあるな。何だこりゃ」
クルーク(平行世界?そんな事ばかり言ってる科学者ばかりだから、カイザもあんな厨二病になったのですね)


キルシュ「まあ扉は良いや……この辺に散らばってる書類にサイエンス・ラマや寿命を引き伸ばす餌とか書いてないかな……ええと、なになに……道は開かれた……我々は何処までも似ているが少しずつ何かが違うパラレルワールドへ向かう…………うん、よくわからないな。パス」


キルシュ「えーと、こっちは?あらゆる平行世界へのアクセスに成功……ある世界……これをA世界と称する、A世界ではシニアのシムがB世界ではティーンであったり、同じシムでもA世界とB世界では伴侶にしている相手が異なるなど、どのシムにも世界ごとに異なる運命……サイエンス・ラマの餌など最早どうでもいい……良くねえよ、クソが」


キルシュ「こっちはどうだ?……興味深いシムを発見した。このシムをKと呼ぶことにする。Kという少年はどの平行世界でもティーンで亡くなっている。餓死、絞殺、溺死……世界によって死因は異なるが、死ぬ要因が家族からの虐待であることに変わりはない。ある世界では食事を与えられずに死に、ある世界は就寝中に父親から首を絞められて死に、ある世界は姉が少年をプールに突き落とし……なんとも憐れな少年である……どの世界でもティーンで亡くなり、大人になれない……死の運命が決定づけられている……研究対象に………」


キルシュ「…………なんか気分悪くなってきた、パス。てか平行世界の話ばっかじゃねえか、サイエンス・ラマのことは何もないのかよ……」


シュバルツ(キルシュ、キルシュ!コッチ、ラマサン ノ、エ、カカレタ、カミ、アルヨ!!)
キルシュ「ホントか!!


キルシュ「よいしょ……サイエンス・ラマ、寿命問題……餌の開発……お、これだ!!サイエンス・ラマはあまりにも短命すぎる、これではクレームが……寿命を引き伸ばす餌の開発に成功……材料はカウプラント・エッセンス……特別なおやつ……カウプラント・エッセンスって……そんな、カウプラントなんてウチには……ん?」


キルシュ「なんか牛の形した変な種見つけた…………もしかしてこれが……カウプラントの種……?」





ブルーム牧場 


ドンッ


カイザ(奴隷のやつ……妙に上機嫌で帰ってきたと思ったら、妙な作物を植え始めた……何なのだアレは)

キルシュ(ウェブサイトで調べた結果、これは間違いなくカウプラントの種だとわかった。こいつを育ててエキスを搾れば……カイザを助けられるんだ……!)


キルシュ(これで良し……夏までには育ってくれよ!)


キルシュ(うわ……早速牛のツノみたいなのが生えてきたわ……)


シュバルツ(コレデ、アト ハ、カウプラント、ソダテバ、カイザ、タスケラレル?)
キルシュ「いや、特別なおやつってのが必要らしい。そのおやつのレシピはフィンチウィックの巨大作物フェアで優勝しないと貰えない……だからこのパンプキンをとにかくデカくして、優勝狙わないと……巨大作物フェアは今週の土曜日……ここで優勝出来なかったら次の開催は夏以降……そうなったら終わりだ……」

クルーク(そのパンプキン、何が何でも大きくしなくてはですね!!)
ゼーレ(沢山肥料アゲナイト!!)
キルシュ「ああ……」





水曜日


キルシュ「結構デカくなってきたかな……」
ゼーレ(ウーン……デモ、マダマダ大キクナル気ガスル!)
キルシュ「だよな……とにかく肥料を毎日あげ続けるしかないか」

他の作物は中サイズに留まり収穫可能になりましたが、毎日超バイタリティーの肥料を与えているパンプキンはまだ収穫可能になっていません。
もっともっとデカくなれ!!


あと学校を1日休みました。
何故かというとゴミの実が欲しいからです。
ゴミを放置していればゴミの木が生えますが、ゴミを置いていても別の区画に行ったせいか帰ってきたら消えてるんですよね……。

だから暫く自宅に留まればゴミが消えずにゴミの木になるかなと。


ゲルダ(ちょっと坊っちゃん!!牛の生首が生えてきてるワヨ!?)


キルシュ「うわ、マジだ。もう生えてきてる……すげえなカウプラント」


キルシュ「まだ意思はないみたいだけど、もっと大きくなったら動くようになるのかな……カイザを助ける為に植えたとはいえ、お前も生き物らしいしウチの家族ってことになるな。カウプラントって呼び続けるのもアレだし、名前今のうちにつけとくわ。お前はこれからレーベンだ、よろしくな」


カイザ(奴隷よ!面妖なものを植えているがアレは何かね!?)
キルシュ「おはようカイザ……あいつはカウプラントのレーベンだ。お前を作り出した研究所に行ってな……寿命を引き伸ばす餌の作り方を見つけたんだ」

カイザ(なんと!?
キルシュ「餌の材料はカウプラントのエキスと特別なおやつ……おやつは土曜日の巨大作物フェアで優勝してレシピを手に入れてみせる。レーベンもあの調子ならすぐに育ちそうだし……何とかなりそうだよ」

カイザ(……貴様に期待しても良いのかね)
キルシュ「ああ」


カイザ(ならば奴隷よ、貴様に天命を与えよう!神である私をこの地に留まらせるべく死力を尽くしたまえ!!神に尽くせるとは幸せなことだな!!カーッカッカッ!!
キルシュ「わかったよ、任せとけ」
クルーク(素直にお願いしますって言えないんですかねえ……)


カイザ(研究所の連中はカウプラントからエキスを搾るのは命懸けと言っていたが、奴隷と軽い口ぶりから察するにそういう訳ではなさそうだな。これならば私は長く生きられる……カカカッ、楽しみだ!!