失った記憶を取り戻していっているのか、記憶を失った振りをしていたのか。
強烈な言葉や映像に頼らない静かな作品。
ネタバレしても楽しい作品はあるけど、『林檎とポラロイド』は、ネタバレしてからの方が楽しめる作品なのかも?と思い2回目を鑑賞。
細部への拘りが強いと思われるクリストス・ニク (Christos Nikou) 監督。細かい仕掛けは、何気ない映像に記されている。
記憶が感情にどのように機能するのか?そんなこと考えたことなかった。
【ネタバレだらけの気になるPOINT】
- 冒頭、何の音?と思ったら、頭を叩きつける音。それと一緒に、ポラロイドのシャッターが切られるように部屋のカットが映る。 Simon & Garfunkelの“Scarborough Fair”が印象的。
- 外出時、隣人とその愛犬マル―にご挨拶。
- 花を購入。その後、バスに乗る際には、その花を持ってはいない。
- 記憶を失い?病院へ。医者に、同部屋の患者さんから得た症状(頭の痛み)を自分の症状としてそのまま伝えてる?
- これまで記憶が戻った患者はゼロとの情報あり。
- 新居の家具の配置換え。
- 果物店で、住所を聞かれ、不意に出た135番地。 ☜ バスに乗る前の冒頭のシーンで135をしっかり表記
- ストリッパーとの絡みに嫌悪感を示す。
- 公園で、隣人の愛犬マル―を見かけ、思わず?名前を呼んでしまう。飼い主 (隣人) を意図的に避ける。
- ワンナイトを拒む?あるいは罪悪感??
- ラジオから流れる歌を完全に口づさめる。
- 記憶を失った女性が「154秒 = 4分」との理解で、思わず笑ってしまう。
- 果物店で「リンゴは記憶力低下を防げる」と言われ、買おうと思っていたリンゴをやめオレンジに。
- 葬儀を「退屈」と考えている記憶喪失の女。葬儀で涙する男。
- “新しい自分プログラム”を放棄し、妻の眠る墓地に。花を交換。
- 記憶を失う?前の家に帰宅。腐っていないリンゴが一つ。男はリンゴを食べる。
写真を撮ることを目的とし、新しいアカウントで自分を創り上げる“新しい自分プログラム”はSNS依存への警鐘。
ラストシーン、最愛の人を失った悲しみを忘れようとしたけど、もう二度と忘れないと決意したリンゴだったのかなと。
哀愁も再生も静寂に語ることのできる男、主演のアリス・セルヴェリス、ステキです!!
-あらすじ-
ポラロイドカメラやカセットテープが使われ、携帯電話、スマホも一切出てこない近過去?で、記憶喪失を引き起こす奇病が蔓延する世界――。それでも男は毎日リンゴを食べる。
バスの中で目覚めた男は、記憶を失っていた。 覚えているのはリンゴが好きなことだけ。
世界は、記憶喪失を引 き起こす奇病が蔓延し、 治療として「新しい自分」と呼ばれる回復プログラムが行われている。 毎日送られてくるカセットテープに吹き込まれた様々なミッションをこなしていく。 自転車に乗る、仮装パーティーで友達をつくる、ホラー映画を見る。 そして、その新たな経験をポラロイドに記録する。 様々なミッションをこなして行く中で、ある日、男は、同じくプログラムに参加する 女と出会い、仲良くなっていく。
口数の少ない主人公が治療を通して心に宿した本当の思いとはーー?
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