運命の剣 のきばしら | あだちたろうのパラノイアな本棚

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読書感想文、映画感想、日々のつぶやきなどなど。ジャンルにこだわりはありませんが、何故かスリルショックサスペンスが多め。

 

 

これ、リレー小説だそうです。

 

共通するテーマは、日本刀「軒柱(のきばしら)」。

鎌倉時代末期に、備前の刀匠・助平の手から生まれた名刀「のきばしら」が、その後室町時代、戦国時代、江戸時代、幕末、明治、昭和の各時代にどこからともなく現れ、それを手にする人物たちに災いをもたらしていくという。ある意味、ホラーな作品です。

 

名刀の霊力っていうんですかねえ。

忌まわしい過去をもつ刀ですが、いつの時代でも人々を魅了し、その人生を不幸にする・・・でも、この魅力に取り憑かれた人間は刀を手放せない、という物語になっていました。面白かった。

 

●『敢えて銘を刻まず』/中村隆資

 

のきばしらが生まれた最初のお話。

名刀を生み出す刀匠といえど、権力者の無茶な注文には逆らえません。助平はこの刀を敢えて無銘にし、自分の銘の代わりに「のきばしら」と命名し「軒」の文字を刻みます。

 

 

●『犬死将軍』/鳴海丈

 

刀の不吉な物語が始まるのはここから。

「万人恐怖」「くじ引き将軍」などと呼ばれた足利第6代将軍、足利義教が家臣の赤松氏に討たれた嘉吉の乱を描いています。

いやはや、これは忌まわしい事件ですねドクロこんな恐ろしい暗殺に使われたら、たちまち妖刀の出来上がりですね。

 

剣の達人である勝四郎がカッコイイ。その恋のお相手、弥生がチョイ役ヒロインかと思っていたら、未来の世に転生するとは。

読み応えがある作品です。

 

余談ですが、義教は女色にも男色にも励んでおり、男色のことはしっかり史料に残されているって、なんつう赤裸々な注意

 

 

●『利休燈籠斬り』/火坂雅志

 

火坂雅志さんの作品は読みやすい。

妖刀のきばしらは、いつの間にやら巡り巡って千利休の手に入ります。

スーパー美意識の持ち主である利休は、妖しく美しい刀に魅せられてしまうのですが、これが不幸を招くことに。なんか秀吉ともしっくりきてない時だったし、嫌ァな予感がしてましたが。

 

これはしかし、死に際すら「美」を求めたんではないかと。

なんなんだ、美って。生って。死って。

 

 

●『あかね転生』/宮部みゆき

 

宮部みゆきさんの江戸情緒たっぷりの妖怪話です。楽しかった。

のきばしらが生まれた第一話をめいっぱい生かして膨らませてありました。まるで伏線回収のようで、すごく巧いと思いました。

 

 

●『斬奸刀』/安倍龍太郎

 

こんな物騒な妖刀が、岡田以蔵の手に入ったらどうなっちゃうと思います??

そう、手に入っちゃうんです。幕末の人斬り以蔵のもとに。

 

岡田以蔵と武市半平太の関係性は想像膨らみますね。エリート武市が、自分を崇め奉る以蔵を飼い犬のように利用していました。(※いろんな解釈があると思いますが)

 

以蔵は剣術をおさめたものの、人を斬ることはどうしてもできない。だけど一緒に行動する薩摩藩士の田中新兵衛が躊躇いなく人斬りをするのを見て、田中に劣等感や嫉妬心を抱きます。

以蔵の暗い感情につけ込むように「のきばしら」が現れ、以蔵の人生はそこで一転。しかし同時に、呪われたんでしょうな。

 

以蔵と仲良くしてくれる坂本龍馬がイイ奴だった。

 

 

●『明治烈婦剣』/宮本昌孝

 

会津藩士の娘であるけいは、戊辰戦争で親を亡くし、没落して温泉宿で働いています。このけいが、親兄弟の仇討ちをするお話。

 

嘉納治五郎とか西郷四郎とかが出てきました。西郷四郎は、会津藩の西郷頼母の養子でしたね。

舞台が新潟県の津川だったので興味深く読みました。津川は昔は会津藩領だったので、会津のお話に繋がるんだね。

 

でも物語自体は、ぶっ飛びすぎていてあまり好みではなかったな・・・

 

 

●『残欠』/東郷隆

 

これが最終話です。時代は飛びまして、昭和20年1月という、終戦間際のお話です。

 

のきばしらは、陸軍軍人の手に入ります。この頃の戦争は刀で戦うものではなかったから、のきばしらが奪う命は、つまり。

 

東郷隆さんの作品はミリタリー風味が強くてマニアックだなあ。細部の描写が細かくて難しかったです。

のきばしらがどうなったかというと・・・ちゃんと後始末が付いてました。

けどもしかすると、現代でも刀は生きていてひょっこり現れるかもよ?(そんなホラーも面白い。)魂

 

 

〜おまけ〜

 

佐賀城でやっていた寸劇です。おもてなし隊「佐賀の八賢人」の皆さん。とても面白かったです。

 

 

佐野常民と島義勇のエピソードだったんですけど、

「えいじゅ〜〜ハート

「だんにょ〜〜んハート

って呼び合う仲良い二人が可愛かったです。

えいじゅとは佐野常民、だんにょんとは島義勇。

なんなんだ、だんにょんって。あいみょんか。

(佐賀ではそう呼ぶらしい)