この本は、高校時代に同級生だった女性二人が久しぶりに再会して、松尾芭蕉の「おくのほそ道」をなぞって週末に旅をするお話。
聞いただけでワクワクする〜
芭蕉の旅路は、江戸の深川をスタートして、
日光→白河→松島→平泉→出羽三山→出雲崎→金沢→終点、大垣。
二人とも社会人なので、週末に予定が空いている時に現地集合し、1泊2日のピンポイントな探訪をしています。
まあ、そりゃそうか。
これ、本当は大連休をとって芭蕉の行程通りにぐるりと回って来れたら楽しいのだろうな。そういうの大好き。
なぜ芭蕉かというと、二人は高校生の時に大垣の私立高校に通っていて、俳句の授業があったし、にわかにチームを結成して俳句甲子園に出た思い出があったから。
主人公は国語教師の松尾美穂、相棒となるのは仙台でバイト生活をおくる川谷空。(名前がいかにもである)
二人旅は深川からスタートです。各ポイントには芭蕉の句碑があり、それを見ながら、自分たちも一句詠んでみようか、と話す二人でした。
空は自由な行動をとる素直な性格で、上手い下手は関係なくスッと心のうちが句になるのですが、美穂はあれこれ考えるうちに何も出せなくなって、句が詠めない。
優等生タイプで教師としても真面目な美穂は、心の中にさまざまな悩み・葛藤を抱えており、旅の中で空と話しながら、自分の心と向き合うことになる。・・・
芭蕉の句を通じて、旅愁に浸る様子はしみじみ心に響きます。
でも、旅は楽しいばかりではない。
美穂は自分のわだかまり、空は人生に背負った悲しみがあり、お互いの心がすれ違う心配なシーンも。
美穂の事情が明らかになるのは興味深いけれど気の毒で、「もうそんな優等生ぶりはやめちまえよ・・・」とモヤッとしました。特に、同棲相手のことね。
空は深い事情がありそうだけどなかなか言わなくて、これももどかしい。けれどラストのあたりでは明らかになります。仙台に住んでるって、そうか、そういう風につながるのか。
生きていくということは、なんと辛く、しかし味わい深いことなんだろうか。
思わず一句詠みたくなっちゃいます。(詠めないが)
悲しい部分もあるお話ですが、旅先での二人の食事が美味しそうでグルメ的要素が楽しかったです。
特に、深川メシ!!アサリの炊き込みご飯、旨そう〜
白河ラーメン!!蕎麦打ち技法で作られた手打ちの麺と、透き通ったスープってめっちゃ食べてみたいんですけど!
牛タンのタントロ!!何それ?!食べたことないわ。松島で食べられるのね〜〜今度探してみる!
一つ残念だったのは、この旅、事情あって出雲崎をすっ飛ばしてるとこですな。ぜひ行って欲しかったのだが。
あとラストシーンが、妙に青春ドラマっぽかったな・・・