残された人が編む物語 | あだちたろうのパラノイアな本棚

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読書感想文、映画感想、日々のつぶやきなどなど。ジャンルにこだわりはありませんが、何故かスリルショックサスペンスが多め。

 

 

この本すごく良かったですーキラキラ

 

感動の一冊でした。胸がキュッとなって、ジワッと涙が滲むような。

 

失踪をテーマにした短編集でした。

 

失踪した人のドラマでもありますが、焦点をあてているのは失踪した人を探していた人。残念ながら、失踪者の行方を追っているともう亡くなっていることが判明します。が、お話はそこで終わらない。大切な人を失ってこの世に残された人が、これからどうやって生きていくかのお話です。

 

本に登場するのが、「行方不明者捜索協会」という民間団体です。顧客から依頼された行方不明者を、主にネットやSNSを使って探すのがお仕事です。

行方不明者の死亡が判明した場合に捜索はそこで終了しますが、オプションで「サポートお任せパック」というのがあり、サポート部のスタッフが残された人のアフターケアをしてくれます。

 

サポート部のスタッフ西山さん曰く、残された人には、亡くなった人の物語が必要なのだと。事実でなく物語というのは、どれだけ情報を集めても亡くなった人の気持ちを完全に理解することは無理なので、物語と表現した方が近いとのこと。

 

そして亡くなった人の物語を知ることによって、残された人の心の傷に早くかさぶたができるのだと。

 

かさぶたが取れた時、やっとその人は死を受け入れることができるそうです。

 

 

亡くなった人の物語というのが、一つ一つとても心に沁みます。

 

依頼主・亜矢子の弟は子供の頃からすぐ激昂する性情で、そのための事故で亜矢子は片耳の聴力を失ってしまいました。

成長した弟は家を出て行方不明に。

弟の捜索願いを行方不明者捜索協会に依頼した亜矢子は、弟がすでに亡くなっており、亡くなる前はホームレスの生活をしていたことを知ります。

 

サポート部・西山の協力を得て、弟をよく知る人々に話を聞くことが出来ました。弟が悩み、考え、ずっと胸に抱いてきたことは・・・

 

なんだか・・・人の気持ちって、周囲の人間が想像しているものとは全然違うんだなあ。

弟の気持ちがわかるようになったのが、弟が亡くなってからという現実に心が痛みます。

 

これは感動の一話。

 

 

少し雰囲気が変わり、第二話は、大学時代にヘヴィメタルバンドを組んでいた友達の一人が、失踪して亡くなっていたことが判明したお話。

 

これも切ない結末でした。

しかしヘヴィメタルのバンド名が「ブラックデビル」って、ちょっと笑った。ひょうきん族かい。

 

 

第三話は、愛する夫が失踪したのを受け入れられず、ずっと帰りを待つ妻が、夫は自殺していたことを知るお話。

 

妻の愛情はいじらしいのですが、サポート部のお仕事で徐々に判明する夫の真実が・・・驚愕。美しい思い出がガラガラと崩れていきます。知らない方が良かったのか?いや、知ったことで妻は新たな人生を歩んで行けるのだから、いいんだろう。

 

 

優しい気持ちになれるので、これはおすすめ本です〜

 

 

 

お散歩中にキジに遭遇すると、春だなと思います。

 

最近はネコちゃんもよく見ます。車に轢かれないようにね・・・